海外情勢

香港で未使用ワクチン堆積、政治不信浸透 市民多数が接種忌避

 新型コロナウイルスワクチンが香港よりも入手しやすい場所は世界にほとんどないだろう。

 香港では16歳以上の全ての人が無料で接種を受けられる。使いやすい政府のウェブサイトで予約ができ、29カ所ある予防接種センターには20分でアクセスできる。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したワクチンか、米ファイザー・独ビオンテックのワクチンにするのか、選ぶこともできる。にもかかわらず、多くの市民が接種を避けている。

 抗議活動後に断絶

 ブルームバーグのまとめによると、2月後半以降に接種されたワクチンの量は香港の人口750万人の11.6%分に相当。英国の39.7%やシンガポールの19.4%を下回っている。両国ではワクチン需要が高く、アクセスしたくてもできない成人も多いが、香港では一部ワクチンが9月に期限切れになると政府が警告するほど接種が進まない。9日の予約はシノバックが2100回分、ファイザーが6800回分と1カ月ぶり低水準だった。

 ドイツや英国、米国など他のワクチン供給が潤沢な国では接種に後ろ向きな人々は全国民に行き渡らせるプロセスの比較的後半の段階で対応すべき課題だが、香港市民は最初から懐疑的だ。普通選挙が実現しない同地での政府と住民の間の断絶が背景にある。

 2019年にかつてない規模で起きた市民の抗議活動とその後の中国および香港当局による取り締まり強化を受け、政治不信は香港の市民生活のあらゆる領域に浸透。16歳の学生はフルネームを明らかにせず、「私はワクチン接種は受けない。友人と私は政府のいかなる指示や勧めにも従いたくない。当局を一切、信頼しない。われわれにまだ残されている方法で、政府に対抗し闘うため最善を尽くす」と話した。

 ビジネスに悪影響

 ワクチン普及の遅さは正常な状態への復帰を遅らせ、ビジネスの中心としての香港の魅力を後退させる。香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)の余偉文総裁はワクチン接種率の低さのためにグローバル企業が香港への拠点設置をためらう可能性を指摘した。

 ワクチンに対する抵抗感は、早めの封じ込めに成功し新型コロナへの恐怖感が比較的少ないアジア太平洋地域で、より高い傾向がある。香港では累計の感染者数が1万2000人未満、死者は約210人にとどまっている。

 政府はワクチン接種の意欲を高めようと、接種済みの人を対象に社会的距離のルールを緩和し、バーの訪問を認めたりレストランで会食できる人数を増やしたりした。今月下旬に開始予定のシンガポールとの「トラベルバブル」もワクチン接種者を対象とするなどの奨励策を実施しているが、あまり効果はない。(ブルームバーグ Iain Marlow、Felix Tam)

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