国内

「残業代102億、タクシー代22億」 国民にテレワーク求めながら自らはやらぬ官僚のナゾ (1/3ページ)

 霞が関で、超長時間労働に加え、残業代の不払いが横行していることがわかった。働き方改革や残業代適正化を推し進めるべき中央省庁で、こうしたブラックな状況が続くのはなぜなのか。そしてこれは、私たちにどう影響しているのか。ジャーナリストの大門小百合さんがリポートする--。

 ■短納期、ハンコと書類だらけの業務の“震源地”

 「過去1000社の企業コンサルティングを行ってわかったのですが、長時間労働の問題を抱える企業の共通点は、『行政と直接やりとりがある』ことだったんです。発注元である行政の仕事、やり方が、多くの企業の残業の震源地になっている。ここを変えないと根本的な解決はできないと気づいた」。企業や自治体に対し、働き方や女性活用のコンサルティングを行うワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さんは調査の理由を語る。

 小室さんは、中央省庁との仕事では、「民間では当たり前になっている電子的な発注ではなく、難解な日本語の発注書に短期の納期を指定され、膨大なハンコと書類だらけの業務を強いられる。そして、短い納期を示された企業が、更なる短納期を下請けに要求するといった構図がまかり通っている」と話す。

 ■過酷なサービス残業、進む若手の官僚離れ

 2021年3月から4月にかけて実施されたアンケート「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」には20代から50代の現役国家公務員316人が回答した。

 河野太郎国家公務員制度担当大臣が2021年1月に行った会見で、「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部つけ、残業手当を全額支払う」と表明しているにも関わらず、この調査の回答者の3割にあたる89人が、「残業代が全て正しく支払われたか」との問いに「支払われていない」と答えている。

 フリーコメントでは、「超過勤務した分を申し出たが支払うことはできないと言われた。(農林水産省 40代)」「テレワーク(在宅勤務)では残業として認められないという空気がある。(農林水産省 20代)」「3割支給されている程度で前と全く変わっていません。噂では、予算がないからとのことですが、予算がないなら残業させないでほしい。(厚生労働省 40代)」などの声が寄せられた。

 人事院が4月に発表した2021年度の国家公務員採用試験の申込状況では、省庁の幹部候補となる総合職の申込者数は、前年度比14.5%減の1万4310万人。これは、現在の総合職試験が導入された2012年度以降最大の減り幅で、また5年連続の減少となり、官僚離れが進む状況を露呈しているといえる。

 ■少子化が解決できない理由、霞が関にも

 ワーク・ライフバランス社は2020年8月に、「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」も行っており、回答者の約4割が「単月100時間」を超える残業をしていたことが判明した。メンタル疾患の罹患率は民間企業の3倍、若手の離職率は6年前の4倍となっているという。ちなみに内閣人事局が2020年10月から11月に行った、中央省庁勤務の国家公務員の残業時間の調査でも、20代の総合職の3割以上が過労死ラインと呼ばれる月80時間を超えていたことが明らかになった。

 小室さんは、こうした過酷な労働環境に限界を感じ、優秀な人材が集まらなくなれば、政策の質が低下し、国益が大きく損なわれると警笛をならす。

 さらに、官僚の作る政策と、実社会の現場の感覚との間に、ずれが生じてきていると指摘する。

 「私は今まで、多くの政府の委員会の委員をやってきました。そこで『少子化の要因は長時間労働にある』という、働く女性であれば、子育てとの両立を難しくする要因として当たり前に感じていることを政府の委員会で話すと、官僚の人たちからは、『それエビデンス(証拠)あるんですか』と言われるんです。彼らには、生活の実感がない。霞が関では、育児との両立に苦労したことのない人だけが真ん中を歩いて、子育てなどで時間的制約がある人は、暇な部署に異動させられるのが現実だからです」という。

 「この国がずっと少子化を解決できずにいる大きな理由は、霞が関サイドに、子育てとの両立に苦労を抱えながら仕事をしている人がいないから。実社会の現場の課題が、政策としっかりつながっていないからだと思います」

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus