海外情勢

特定技能試験、ベトナム初実施も「お試し」 ハードル高く希望者拡大は不透明

 日本が外国人労働者受け入れ拡大を目指し創設した在留資格「特定技能」の試験がベトナムでようやく始まった。創設から2年。最大の人材送り出し国として期待されたベトナムでようやく運用が緒に就いたが、軌道に乗るには至っていないのが実情で、裾野の拡大にも限界が見える。

 ヘルメットにマスク、手袋を着けた受験者が、工具を片手に黙々と鉄筋を組んでいた。3月23日午前、首都ハノイの第1建設短期大学。ベトナムでの初試験は建設分野の「鉄筋施工」職種に関し実施された。

 受験者の一人、キエムさんは、日本で技能実習生として3年間働いた経験があり「また日本に行きたい」と特定技能での再訪を目指し、見事合格した。

 日本を再び選んだのは「収入や就労環境が良く、人々と波長が合う」から。妻と子供がおり、就労先が決まれば日本には1人で行くことになる。「新型コロナウイルス禍は心配だが、実際に住んでいた経験もある。きっとうまくいくだろう」と早期の訪日を望んでいる。

 ベトナムは近年、多くの技能実習生を送り出し、人手不足の日本で存在感が際立っている。昨年末現在で約20万9000人に上り、実習生全体の半数を超す。実習生以外を含めた在留者総数でも、ベトナムは昨年末の統計で韓国を抜き、中国に次ぐ2位になった。

 ただ、特定技能の運用をめぐる日本との調整は遅れた。技能実習生で「送り出し機関」と呼ばれるベトナムの人材派遣会社が法外な仲介手数料を実習生から徴収する事例が頻発したことを背景に、手数料のルール作りに手間取った。ベトナム政府も関与する形で送り出し手続きが固まったのは今年に入ってからだ。

 そうした中で迎えた初試験は、人数を絞った「お試し」的な色彩が濃かった。受験者は24人で、うち20人はキエムさんのように一定の日本語能力が既にあり、試験の実施機関が事前に現地で開講した教育訓練に参加。一般公募で受験したのはわずかに4人で、合格者19人に公募の受験者はいなかった。

 日本政府関係者は「今回を呼び水に試験を軌道に乗せたい」と期待を込めるが、日本のコロナ禍収束が見通せない中で、次の試験の具体的な見通しはまだ立っていない。

 一方で、ベトナム側が認可した特定技能の送り出し機関は既に200以上。派遣業界の期待は過熱気味だが、ある関係者は「職業技能プラス日本語能力が必要で、特定技能のハードルは高すぎる」と指摘。現状のままでは元技能実習生ら訪日経験者の受け皿にとどまり、希望者の大幅な拡大は望めないとみる。(ハノイ 共同)

【用語解説】特定技能

 少子高齢化や人口減少に伴う人手不足に対処するため、日本政府が2019年4月に創設した外国人の新たな在留資格。建設や介護、農業など14分野が対象。政府は導入から5年で最大約34万5000人の受け入れを見込んだが、昨年末現在での在留者は約1万6000人。生活に支障がない程度の日本語能力が必要で、各分野を所管する省庁が指定する試験を経て取得するほか、技能実習生から移行するルートもある。現状では移行ルートが大半。(ハノイ 共同)

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