海外情勢

米で狂乱物価の記憶再び 景気過熱懸念、1960年代トレンドと類似性

 1965年当時、米国では前年の選挙で勝利したジョンソン大統領が人種的不公平の是正と一段と公正でより良き経済・社会の実現を約束し、マーティン連邦準備制度理事会(FRB)議長は前年の金融政策運営に満足感を表明していた。

 インフレ率は過去何年にもわたり2%を下回ってきたが、景気拡大ペースは急加速し、同年はその後の狂乱物価の幕開けを告げる年となった。

 そして2021年、再び景気過熱をもたらすような多額の財政支出と超緩和的な金融政策運営の下で、56年前と同様の物価上昇トレンドが始まろうとしているのではないかと、専門家の一部は懸念している。

 ◆3%インフレ現実味

 物価見通しに「強い懸念」を表明するサマーズ元財務長官は「ディスインフレを引き起こすリセッション(景気後退)がなければ、インフレ率が向こう5年間に3%を上回る確率は50%超だ。少なくともそのうちの1年間が5%強のインフレを記録する確率は4分の1だ」と話す。

 米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は過去10年間、平均1.5%で推移してきたが、物価上昇ペースの顕著な加速があれば持続的景気拡大に必要な消費者の購買力が損なわれ、経済にダメージが生じかねない。金利上昇圧力によって金融市場の上昇傾向にも水を差すことになる。

 先週発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.8%の大幅上昇となり、投資家は今後起こるかもしれないシナリオを垣間見ることとなった。

 CPIの多少の上振れは予想されていたものの、上昇幅が大きかったことで米金融当局内外に驚きをもたらし、経済活動の再開に伴う一時的な物価上昇があっても、やがて落ち着くとするコンセンサス予想に新たな疑問が生じた。

 元FRB副議長で、現在はプリンストン大学教授のアラン・ブラインダー氏は物価動向に関し、「とてもリラックスはしているが、かつてほどではない。これまでよりもやや警戒方向にあるものの、サマーズ氏らと同程度までには至っていない」と語った。

 ◆制御不能リスク潜在

 1960年代の状況の再燃を懸念する人々がその根拠とするのはシンプルな需給関係の法則だ。当時のジョンソン大統領が「偉大な社会」政策で取り組んだように、バイデン大統領は連邦支出を通じて米国を作り直そうとしている。

 また金融政策をめぐっても、当時と現在との不穏な類似性を指摘するエコノミストもいる。インフレ加速を目指す新たな戦略的枠組みの下で、半世紀余り前と同じような制御不可能なインフレ高進を招きかねないという心配だ。

 パウエルFRB議長は、金融当局が過去の過ちを繰り返すのではないかとの懸念に反論している。ホワイトハウス当局者も、政権が推進するインフラ計画と社会保障拡充計画について、短期的な需要刺激策というよりも長期的な投資だとして、景気過熱の心配を打ち消そうとしている。

 だがドイツ銀行の経済調査グローバル責任者、ピーター・フーパー氏は「歴史は必ずしも繰り返すものではないが、過去に起こったことがあるという事実は、それが再び起こる可能性を意味している」とコメントした。(ブルームバーグ Rich Miller)

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