海外情勢

「文大統領の経済政策は間違っていた」ついに財閥系企業の“韓国脱出”が始まった (1/2ページ)

 ■「期待以上」成果強調の裏で…

 5月に行われた米韓の首脳会談にて、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、サムスン電子をはじめとする財閥系の大手企業が、総額4兆円規模の対米直接投資を行うと表明した。韓国に対して米国のバイデン政権は、北朝鮮と外交を通して関与していく考えなどを示した。文氏は今回の米韓首脳会談を「期待以上の成果をあげた」と評している。

 経済の側面から考えた場合、韓国の財閥系大手企業が大規模な対米直接投資を表明した要因は冷静に考えたほうが良い。一つの見方として、韓国大手企業による対米直接投資の表明は、韓国国内での事業継続の難しさが増していることの裏返しに映る部分がある。

 足許の韓国では、労働組合(労組)と経営陣の対立が深刻化しているようだ。労使対立は企業の事業運営の効率性を低下させる。その状況が続けば、企業は事業運営に協力してくれる素直な労働者などを求めて海外に生産拠点などを移さざるを得なくなり、韓国の産業空洞化懸念は高まる可能性がある。

 ■1兆8500億円を投資するサムスンの狙い

 米韓首脳会談で韓国側が発表した対米直接投資の内容を見ると、サムスン電子の投資計画が最大だ。同社は米国に170億ドル(約1兆8500億円)を投資し、半導体の新工場を建設するとみられる。その狙いの一つは、最先端の半導体生産能力の向上に取り組む台湾積体電路製造(TSMC)を追いかけることだろう。

 世界最大のファウンドリーであるTSMCは、最先端の回路線幅5ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体生産をいち早く確立した。TSMCは次世代の回路線幅2ナノメートルの半導体生産ラインの確立に向けた取り組みも加速させているようだ。それに加えて、TSMCはわが国の企業との協力によって半導体生産技術の向上を目指している。世界の半導体産業の盟主の座は米インテルからTSMCにシフトし、世界経済への半導体供給者としてのTSMCの存在感は増しているといえる。

 サムスン電子はTSMCとの競争力格差の拡大を食い止めるために、米国に工場を建設し、より多くの生産需要を取り込もうと考えているのだろう。また、スマートフォンなどに用いられるICチップの設計、開発、生産の力を高めるためにもサムスン電子は米国事業の強化を重視しているとみられる。

 ■バイデン政権の経済政策はチャンス

 半導体に加えて、自動車関連の分野でも韓国企業は対米直接投資を発表した。今後5年間で、現代自動車は74億ドルを投じEV生産能力の増強などに取り組む方針だ。車載バッテリー分野ではLGグループがGMと、SKグループがフォードと合弁会社を設立してバッテリー生産を行う予定だ。

 以上は、半導体、EV、車載バッテリーという世界経済にとって重要性が高まる先端分野で、韓国の財閥系大手企業が事業体制の強化を目指していることを示唆する。

 他方で、政権が発足して以来、米国のバイデン大統領は、半導体や高容量バッテリー、医療資材、鉱山資源などに関して自国を中心とした供給網の整備を重視しているようだ。そのために、バイデン政権が米国に直接投資を行う海外の企業に補助金を出す可能性もある。それは、韓国財閥系大手企業が対米直接投資を表明した要因の一つだろう。

 ■「経済政策は間違っていた」与党からも批判

 そのほかにも、韓国の財閥系大手企業が対米直接投資を表明した要因は考えられる。その一つとして、韓国国内の事業環境がより厳しくなっていることは軽視できない。

 左派の政治家として市民団体や労働組合などから支持されてきた文大統領は、過去の政権下で蓄積された経済的な格差などの解消(積弊清算)を重視した。その具体的な取り組みに、最低賃金の引き上げや労働関連の法律改正などがある。2018年に韓国では最低賃金が前年から16.4%引き上げられ、2019年も最低賃金は同10.9%上昇した。また、法律の改正によって、解雇された人や失業者の労組加入も認められる。

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