海外情勢

“ぼったくり男爵”が気にするのは米テレビ局だけ IOCが絶対に五輪開催をあきらめないワケ (1/4ページ)

 東京五輪の開幕まであと1カ月余りとなった。いまだ「中止」を訴える声はやまないが、21日には観客数上限を定員の50%以内で最大1万人とする方針が正式に決まった。すでに多くの選手や関係者が日本に上陸しており、このまま開催が強行されそうだ。

 開催国である日本はまだ感染が収まっていないのに、ぼったくり男爵ことバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長はそんな状況を歯牙にもかけない様子だ。中止できない大きな理由として、「IOCにとって最大のスポンサーである米テレビ局NBCの意向を無視できない」という話がかねてより語られている。

 実際に、今回の東京大会でNBCは、全米向けの放送時間を過去最長の7000時間とすると発表。これを受け、広告収入は12億5000万ドル(約1375億円)と同社にとって史上最高額になる見込みだという。

 米国での放映権を独占するNBCとそれに逆らえないIOC。両者には、いったいどんな関係性があるのだろうか。

 ■IOCとNBCの「切っても切れない関係」

 五輪中止をめぐる報道から、日本でもNBCの名がすっかり浸透したようだ。そもそもNBC(現社名は、NBCユニバーサル)とはどんな会社か。

 米国には歴史的に「3大ネットワーク」と呼ばれるメジャーテレビ局が存在する。その3社とは、NBCのほか、CBS、ABCを指す。日本のキー局を頂点とするネットワークとは体制が異なり、3社は主に番組編成に注力。そこへ流すコンテンツは番組制作会社が作るが、こうした会社は局が傘下に持っていたり、映画会社の一部門だったりすることが多い。

 NBCは「3大ネットワーク」の他の2社を出し抜くためのキラーコンテンツとして、五輪中継の放送権を巨額の費用を投じてIOCから入手しているというわけだ。IOCは、NBCからの放送権料を当てにして財源確保を狙っているため、両社は切っても切れない関係にある、といっても過言ではない。ただ、テレビ中継が始まって以降、すべての五輪中継がNBC独占だったわけでもなく、一時は他社が放送権を得たこともある。

 ■6大会分を7800億円相当で一括契約

 NBCが米国に向けて五輪中継を始めたのは、くしくも1964年東京大会が最初だ。当時、五輪の開会式として、米国向け初のカラー衛星中継が実現したという歴史が残っている。その後、1980年モスクワ大会で初めて「米国向け放送権」を得たが、米国代表チームそのものがボイコットして、放送自体が立ち消えとなった。

 こうした歴史を経て、NBCによる五輪のテレビ中継は、夏季は1988年ソウル大会から、冬季は2002年ソルトレークシティー大会から現在まで途切れることなく続いている。

 今年に延期された東京大会の中継は、2011年にIOCと締結した「2020年夏季大会までの独占放送権」を基に行われることとなる。NBCが当時支払った放送権料は43億8000万ドルで、2012年ロンドン大会から夏冬合わせて5大会分を含んだものだ。

 そのわずか3年後、両者は「2022年開催の冬季大会から2032年夏季大会までの独占放送権(6大会分)」を、今度は過去最高額の76億5000万ドル(約7800億円、当時の為替相場)で契約した。2011年契約と比べ、冬季大会が1回分多いだけにもかかわらず1.7倍の増額で決定したことは、NBCがそれだけの投資をしても五輪番組は売れると見込んだものにほかならない。

 視聴率が最も期待できる競技のひとつに陸上がある。「米国代表チームが千葉県での事前合宿を辞退」というニュースが瞬く間に全世界に広まったのは、陸上は高視聴率が期待できる代表的な種目だからだろう。

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