海外情勢

「ついにサムスンもストライキ」大企業に見限られた韓国・文政権の崖っぷち (1/2ページ)

 ■韓国経済の“エンジン”がストを決行

 6月21日、韓国最大の財閥であるサムスングループの主業企業であるサムスン・ディスプレイにてストライキが発生したと報じられた。これまで、サムスングループはストライキと無縁といわれてきた。サムスングループは大きな曲がり角を迎えつつあるようだ。

 朝鮮動乱の後、韓国政府は基本的にはサムスン電子や現代自動車など財閥系大手企業の輸出競争力を高め、発揮することによって成長を遂げてきた。特に、サムスン電子は韓国経済の成長の牽引役やエンジンと評されるほどの重要企業だ。サムスングループだけでなく、韓国経済にとっても、今回のストライキ発生の意味は重いだろう。

 それに加えて、米国への上場を果たした通販大手のクーパンでは、創業者が海外事業への注力を重視し始めたようだ。韓国では、企業家が自由な発想を膨らませ、新しいモノ、サービスの創出やプロセスの改善などのイノベーションを目指すことが難しくなっているとの印象を持つ。その一因として、労働組合を主な支持基盤の一つとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策の影響は軽視できない。

 ■創業から“無労組経営”で成長してきた

 創業以来、サムスングループは“無労組経営の原則”を続けてきた。それは、サムスン電子をはじめとする傘下企業の成長に無視できない影響を与えた要因の一つと考えられる。

 サムスングループの成長に大きな足跡を残したのが、李健煕(イ・ゴンヒ、故人)前サムスン電子会長の経営理念だった。1993年に同氏は、“妻と子供以外すべて変えよう”、のスローガンを打ちだした。その意味は、個々人が常に新しいことに取り組み成長を目指す、というものだ。

 その理念のもと、サムスン電子は家電、ディスプレイ、スマートフォン、ファウンドリー(半導体の受託製造事業)など成長期待の高い先端分野に経営資源を迅速に再配分する事業戦略を実行し、組織全体の新陳代謝を高めた。その結果、財閥全体で業績が拡大し、従業員は相対的に高い給料を手に入れた。

 ■創業家の求心力が危うくなっている

 別の見方から考えると、常に成長が目指される経営風土の中で、各従業員は自らの本業に集中しなければならず、組合活動に時間を割くゆとりはなくなる。また、労働組合活動を行うよりも、創業家出身トップの指示に従って着実に業務をこなしたほうが、より良い給料を手に入れられるという見方もあっただろう。

 いずれにせよ重要なことは、サムスン電子などが従業員の不満を抑えつつ、組織を一つに強固にまとめて個々人の集中力を引き出す事業体制を確立し、強化したことだ。それによってサムスングループはグループ全体として本格的な労使の対立や労働争議を回避してきたと考えられる。

 しかし、2019年にはサムスン電子で韓国労働組合総連盟(韓国における労組のナショナルセンターの一つ)に加盟する労働組合が発足した。2020年5月に李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が世襲経営に加え無労組経営に終止符を打つと表明した背景には、労使の対立を避けて協調を目指す意図があっただろう。

 そうした経緯を踏まえると、一つの見方としてサムスン・ディスプレイでのストライキ発生は、創業者出身トップの求心力の綻びの兆候と解釈できる。

 ■なぜ組合はストライキに踏み切ったのか

 現在、ジェヨン副会長は収監されており、財閥全体の利害調整は容易ではない。収監によって財閥の統率および指揮は停滞し、サムスン電子がファウンドリー事業を強化するなどして成長を目指すことができるか否かも見通しづらい。その状況下、一部の組合員が先行きを不安視し、ストライキが起きた可能性がある。創業家の求心力、統率力を軸に成長してきたサムスングループは大きな曲がり角を迎えつつあるといえる。

 それに加えて、外的な影響もあるだろう。その一つが文大統領の経済政策だ。文氏は最低賃金の大幅な引き上げや時短労働の導入など、労働組合を重視した政策を進めた。その結果、労働争議は激化した。その状況を行動経済学の理論にある“バンドワゴン効果”で考えてみよう。バンドワゴン効果とは、街をパレードするバンドワゴン(楽隊車)のにぎやかな雰囲気につられて多くの人がワゴンについていく心の働きを言う。

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