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「和歌山ラーメンタクシー」は快走するか 先輩は香川「うどんタクシー」

2012.3.20 18:00更新

 和歌山では「中華そば」と呼ぶのが一般的だが、全国的には「和歌山ラーメン」という。その豊富な知識を持ったタクシードライバーがお客の希望に合ったラーメン店までご案内。名付けて「和歌山ラーメンタクシー」。観光客のおもてなし向上とリピーターなど誘客を狙った和歌山市の新年度の新規事業で、今秋からの走行を目指す。“先輩格”の「うどんタクシー」(香川県琴平町)並みに注目を浴びることはできるか-。(井上亨)

 和歌山ラーメンって…

 「和歌山ラーメンの源流」と題した論文を発表するなど、和歌山のラーメンについて詳しい和歌山市立博物館の寺西貞弘館長は仕事柄、和歌山県外の人との付き合いが多く、よく和歌山ラーメンについて聞かれる。が、「食べ歩きに関する資料はあっても、その歴史などに関する資料がなく、自分で調べようと思った」。

 寺西館長によると、醤油(しょうゆ)や鰹節(かつおぶし)の産地である、和歌山県湯浅町や紀南地方が近いということもあって、和歌山のラーメンのスープは戦前は醤油と鰹節からとったものが基本だった。戦後になって食糧事情がよくなり、豚骨が加味された「豚骨醤油系」が誕生。現在は大きく分けて「醤油ベースの豚骨醤油味」と「豚骨ベースの豚骨醤油味」に分類される。

 麺は細めのストレートで、ゆで方は関東に比べると軟らかく「博多や札幌の人からすると、伸びた麺と思うのでは」(寺西館長)。具材はチャーシュー、メンマ、青ネギ、かまぼこが定番。

 各店舗のテーブルには客の好みで追加注文するサイドメニューとして、早なれ寿司(鯖(さば)の押し寿司)、巻き寿司、ゆで卵などが置かれ、サイドメニューは支払いのときに自己申告する。

 全国区に“進化”

 地元で、「中華」ないし「中華そば」と呼ばれるラーメンが「和歌山ラーメン」と呼ばれるようになったきっかけは、平成10年の正月に放映されたテレビ東京の「ラーメン王選手権」だ。

 JR和歌山駅近くで昭和28年に開業した老舗「井出商店」が全国の有名店を押しのけて見事優勝。その後、和歌山の「中華そば」は「和歌山ラーメン」と呼ばれるようになった。

 それから十数年が経ち、和歌山市まちおこし部観光課誘客班の高岡秀人班長は「全国に知れ渡るラーメンでさらに街を盛り上げたい」と、新年度の新規事業に「うどんタクシー」をヒントに和歌山ラーメンタクシーを提案。寺西館長と同じく、高岡さんも県外の人と話す機会が多く、「和歌山市のイメージを聞くと、よく和歌山ラーメンと返ってくる。有名なのだからもっとPRしたらと言われるんです」。

 手本はうどんタクシー

 先輩格の「うどんタクシー」。香川県特産の「讃岐うどん」を食べに県外から訪れる観光客らに有名店、見つけにくい店、パンフレットやガイドブックに載っていない店を案内しようと、同県琴平町の琴平バス(コトバス)が平成15年8月にスタートさせた。

 タクシーの上部には、マグネット式のうどんの行灯(あんどん)が載り、タクシードライバーになるには筆記試験を受けなければならない。

 「○○店の注文の仕方は」「1玉の重さは何グラム」「うどんについて唐の都・長安と、香川県の共通点、類似点は」「映画UDONのタクシードライバーの名前は」といった難問をクリアすると、試験官が客として乗車する実地試験があり、「客に分かりやすく説明する能力があるか」などが試される。

 同社タクシー部の糸田川哲也運行課長は「当社の試験をクリアしていただければ、他社のドライバーもうどんタクシーを運転できます。今のところ、名乗りを上げる人はいませんが」。

 現在、うどんタクシーのドライバーは8人。うどんの場合、2軒以上回るときは「麺は1玉か2玉でトッピングやサイドメニューはできるだけ食べないように勧めている。ラーメンなら味が違っても2軒くらいでは」とみる。

 糸田川課長は「瀬戸大橋開通や高速道路の料金が千円になるなどして、多くの観光客が来てブームになったが、はやり廃りがある」と指摘。18年に公開された、香川県を舞台にしたユースケ・サンタマリア主演の映画「UDON」。撮影にも全面協力し、知名度はアップしたもののいつまでも人気を維持するのは難しいとも。

 今秋発車に向けて

 和歌山市の計画では、7~8月に2~3回に分けて研修、8月末から9月にかけてラーメンの基礎知識と専門知識に関する筆記試験を実施。合格者には認定証と、車のボディーや窓ガラスに貼るステッカーを交付し、10~11月の走行開始を見込んでいる。

 これに対し、琴平バス・タクシー部の糸田川課長は「ステッカーを付けて走るだけでは、うまくいかないのでは。映画の効果も大きかった。こっちは『うどん県』として売り込むなど県あげて力を入れている。和歌山もラーメンの映画ができるなどすれば効果は大きいでしょうが」とアドバイス。

 「和歌山ラーメン」を全国区に押し上げた井出商店の井出紀生社長は「県外の百貨店で実演販売などもしていますが、和歌山の認知度は低い。景気も悪く、どのラーメン店も客足は減ってきている。タクシーが走ってくれることはうれしい」と話す。その一方で、「ラーメンだけでなく、和歌山市の活性化になればいいし、運転手さんの売り上げにもつながればいい。ラーメンタクシーでお越しの客には50円引きとかゆで卵をサービスなども考えたい」という。

 広がる期待感

 和歌山県タクシー協会の西村芳通専務理事は「お客さんを呼んでいただけることはいいこと。具体的な話し合いはこれからだが、協力したい。今年は東京でタクシーの営業が始まって100年。和歌山でも100周年のイベントを8月5日に行うので、そのときに何らかの啓発イベントでもできれば」と歓迎する。

 寺西館長は「ドライバーが勉強して説明してくれるのはすばらしいこと。他府県に自慢できるラーメンをドライバーだけでなく市民も一緒になって説明できるようになれば、より一層よいのでは」と、期待を募らせる。

 一方で、“先輩格”の琴平バス・タクシー部の糸田川課長は「とにかく頑張ってくださいとしかいいようがないですね」。

 果たしてどれだけのドライバーが共鳴し、観光への波及効果はどうなるのか。うどんタクシーをお手本に試行錯誤が続く。

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