【ニッポン経済図鑑】ヤマハ発動機 磐田本社工場
2012.5.5 05:00更新
■ライン統合で効率化実現 改善続く世界のマザー工場
若い女性の従業員が2人1組で小型の電動二輪車「EC-03」を手慣れた手つきで組み上げていく。1台当たりにかかる時間は22分。ドライバーなどの工具は電動式で、女性が組み立てやすいように配慮されている。頃合いを見計らうかのように「ピンポン」という音が鳴り、締め付けなど工程の順序がモニター画面に表示される。
ヤマハ発動機は2011年8月までに、磐田市の磐田南工場で手がけていた二輪車のエンジン生産を磐田本社工場に移し、両工場で計21ラインあった製造ラインを6ラインに統合。生産方式も各モデルの生産規模や組み立ての工数に応じて3種類に再編し、一気に効率化を図った。
180種類にのぼるパーツを2人1組で組み立て、1台を作り上げる「セル生産」方式もその一つ。月産400台以下で工程数が少ない小型のモデルで採用した。難しさもあるが、達成感はひと味もふた味も違う。一方、400台を超える新興国向けの車種は従来型の「分業流れライン」で生産している。
月産400台に満たない旗艦車種「VMAX」などの大型モデルは、従来のラインよりも95メートル短い45メートルの「大型少量ショートライン」で、5組のペアが計10人で組み立てている。
ラインが短い分だけスペースが抑えられ、工場が受け持つ全二輪車の生産に対応できる余裕ができた。もっとも、ラインが短いと配置できる従業員も少なくなり、車種によっては1台の組み立てに約2時間かかる。
BD(ボディー)製造統括部の原田浩之課長によると「1人の作業が300項目以上にのぼるモデルもあり、集中力が欠かせないため、普段から二輪車に乗っているバイク好きの従業員を選んだ」という。
ラインから離れた一角に、出入り口が閉め切られたエンジン製作室がある。帽子をかぶり、靴にカバーをし、静電気が起きにくい服を着用した上で、ほこりを空気で吹き飛ばしてからでないと、室内には入れない。
ここで造られているのは、資本提携関係にあるトヨタ自動車のレクサスブランドのスポーツカー「LFA」に搭載するエンジンだ。車両価格が3750万円もする超高級車向けとあって「部品の保管から製作工程まで空調を管理し、さびやほこりに厳重な注意を払っている」(木村隆昭専務執行役員)。
特別の訓練を3年以上にわたって受けたベテラン従業員4人が、3日かけて1台しか造れない。「作品」には1台ずつ、従業員の名前が製作者として刻まれる。
風通しが良く静かな工場全体は、油などの機械臭や金属音とは無縁の環境が印象的だった。統合の成果だけでなく、世界展開のモデルとなるマザー工場としての役割も求められるだけに、現場が一丸となって改善に取り組む日々が続く。(大坪玲央)
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【用語解説】ヤマハ発動機磐田本社工場
静岡県磐田市新貝2500。1966年に操業を開始。敷地面積は47万8031平方メートル、工場の建物面積は15万4416平方メートル。集約・統合に伴い、同社では国内唯一の二輪車工場となった。排気量50~1900ccのモデルを年間20万台生産している。工場内は非公開。