メンツ激突…アップル・サムスン特許紛争長期化 日本勢「漁夫の利」狙う
2012.6.12 05:00更新
スマートフォン(高機能携帯電話)関連の特許をめぐる米アップルと韓国サムスン電子の法廷闘争が、長期化の様相を見せている。両社の対立を背景に「漁夫の利」を狙うのが、業績不振にあえぐ日本の電機メーカーだ。最終製品で競いながら部品の有力供給メーカーでもあるサムスンから、アップルが液晶パネルや半導体の調達を減らす方向に動けば、絶好のビジネスチャンスが生まれる。アップルへの依存度が高まるほど経営の自由度を失うリスクはあるものの、瀬戸際の日本メーカーに選択の余地は少ない。
「私は訴訟が嫌いだ。争いよりも和解を望んでいる」。アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は4月24日、決算説明会で穏やかに語った。昨年来、日本を含む10カ国で訴訟合戦を展開するサムスンとの「雪解け」を予想させる発言だった。
しかし、カリフォルニア州北部連邦地裁で5月24日に行われた和解交渉で、両社のトップは全く歩み寄らなかった。「もはやメンツのぶつかり合い。サムスンがスマホのシェアでアップルから世界一を奪ったこともあり、争いは長引くだろう」(業界関係者)との見方が強い。
米調査会社IDCによると、2012年第1四半期(1~3月)のサムスンのスマホ世界出荷台数は4220万台、シェアは首位の29.1%にのぼり、前年同期(11.3%、1150万台)と比べて大きく躍進。アップルは3510万台、24.2%(前年同期は1860万台、18.3%)にとどまっている。
事の発端は11年4月。サムスン製のスマホやタブレット端末のデザインは「iPhone(アイフォーン)」などの模倣だとし、アップルが販売停止を求め米国で提訴した。サムスン側はアップルによる通信技術の特許侵害などを訴え応酬。互いの訴訟は約40件に上っている。
背景には、サムスン製のスマホにも搭載されている米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を「アップルのアイデアを盗んだ」と罵(ののし)ったアップル前CEO、スティーブ・ジョブズ氏の怒りがあったと伝えられる。
だが、11年10月のジョブズ氏死去を機に両社の対立は険しさが緩む。4月の交渉は物別れに終わったものの、収束を急ぎたいのがサムスン側の本音だ。
5月中旬、アップルが半導体メモリーのDRAMを日本のエルピーダメモリに大量発注したことが明らかになると、サムスンの株価は6%余り下落し、時価総額は100億ドル(約7970億円)以上も減少。さらに、アップルが新型アイフォーン向け液晶パネルの調達先をシャープなど日韓3社に決めたとの情報も流れた。残る2社はソニー、東芝、日立の中小型液晶事業を統合して4月に発足したジャパンディスプレイと、韓国LG電子。サムスンは外された形となり、アップルとの係争が得策でないことが浮き彫りになった。
一方、テレビの不振などで苦境に陥った日本メーカーはこの機を逃すまいと必死だ。シャープは4月、電子機器受託製造で世界トップの台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との資本業務提携に合意した。視線の先にはアップルがある。シャープの技術力と鴻海の低コストでの生産力を組み合わせ、高品質の液晶パネルを低価格で用意し、アップルへの供給量引き上げを狙う。
サムスンも関係改善の糸口を探る。今月7日には、完成品部門を統括してきた崔志成副会長がCEOを退き、液晶パネルなどの部品部門を統括する権五鉉副会長と交代する人事を公表。「アップルとの和解を探る李健煕会長のシグナル」(アナリスト)との見方も広がっている。
世界経済の先行きが不透明な中、アップルへの部品供給が持つ重要度は一層高まっている。同社を納入先とする日本の電子部品メーカーは数多い。法廷闘争の行方は日本企業の業績も左右しそうだ。(山沢義徳)