SankeiBiz ニュース詳細(ライト版)

PC版

東芝“試練”の時 どうなる原発、半導体事業

2012.6.25 05:00更新

就任4年目を迎え、手腕を問われる東芝の佐々木則夫社長=5月17日の経営方針説明会

 東芝が成長の岐路に立っている。主力の原子力発電事業は福島第1原発事故の影響で遅れが避けられず、市況変動の大きい半導体事業もリスクとの見合いで規模拡大に向けた新規投資に踏み切れずにいる。新事業創出を目指して取り組むM&A(企業の合併・買収)や今後の事業の柱と期待する環境配慮型都市スマートシティーも収益貢献にはまだまだ時間が必要だ。選択と集中で総合電機メーカーからの脱却を目指す東芝が、転換点で“試練”の時を迎えている。

 1兆円達成先延ばし

 「原発事業は計画を2年先延ばしした」。東芝の佐々木則夫社長は、5月17日に開いた経営方針説明会で原発の受注が遅れる見通しを公式の場で認めた。これまでは「数年遅れる可能性がある」としていたが、今回の計画では原発の売上高1兆円の達成時期について、従来の2015年度から17年度と明確な時期を示し、計画を大きく延期した。

 これを受け、東芝は14年度を最終年度とする3年間の中期経営計画についても従来計画を下方修正。昨年5月の公表時点では、13年度に連結売上高8兆5000億円と計画していたが、今回の修正計画では14年度に7兆8000億円と、7000億円も減額した。中小型液晶事業の売却に加え、為替の前提を変更したのも影響するが、最大の要因は原発事故で国内の原発受注が厳しくなると見込んだためだ。

 一方、原発の海外受注については、新興国を中心に引き続き需要が見込めるとしているが、原発事故後、ドイツやイタリアが“脱原発”を宣言するなど、環境が目まぐるしく変化。こうした動きの中で東芝の海外事業をめぐるトーンに少しずつ変化が出始めている。

 出資比率引き下げも

 東芝の海外原発受注を手がけるのは06年に約6500億円を投じて買収した米原発子会社、ウェスチングハウス(WH)。

 東芝が67%を出資するWHは足元、米国で6基を新規に受注するなど好調で、東芝は昨年9月、米ショー・グループが保有するWH株20%分を追加取得することを決めていた。しかし、今月1日、訪米した佐々木社長はWHに対する追加出資を見送る方針を示唆。さらに複数の企業から株式買い取りを打診されたとし「東芝としては出資比率51%以上でメジャーを取れればいい」とし、出資比率の引き下げさえにおわせた。

 というのも、来年1月に予定されるショーからの株式買い取り額は1250億円に及び、これを買い取れば現状約1兆2000億円規模の有利子負債が膨らみ「財務への影響は必至」(アナリスト)とみられているからだ。 東芝のスタンスとしては、中長期的に原発需要は回復するとみているが、足元の財務状況も考えて、戦略を組み立て直さなければならないとの判断が働いた。

 一方、原発事業の停滞をカバーするために東芝が戦略的に強化しているのが、世界2位のシェアを持つ記憶用半導体のNAND型フラッシュメモリーと、スマートシティーなどの新規事業だ。NANDは、スマートフォン(高機能携帯電話)向け需要の急増で、足元の営業利益率が20%を上回るうえ、コスト競争力の源泉となる微細化技術についても、首位の韓国サムスン電子に先駆け、線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)台のNAND量産に成功、技術的な優位性もある。

 NAND大規模投資には慎重

 一方、省エネ対応に必要な街づくりに必要な情報通信や関連機器の提供を一括で手がけるスマートシティー事業では、16年3月期に売上高で9000億円の事業に育成する考え。

 その実現に向け「必要なアライアンス(戦略的提携)を進める」(佐々木社長)方針で、実際、昨年7月に電力メーターを手がけるスイスのランディス・ギアを1700億円で買収したのに続き、米ヒューレット・パッカード(HP)や米IBM、中国現地企業などとの連携も協議。事業拡大に向けた布石を着々と打っている。

 ただ、頼みのNAND事業は、業績拡大に向け大規模な増産投資が不可欠だが、かつて世界トップを競った半導体メモリー、DRAMが投資競争に敗れ撤退を余儀なくされた経緯もあり、大規模な設備投資に対して、慎重な姿勢を崩さない。スマートシティーなど新規事業も、どう収益につなげるかの青写真を描き切れていない。

 東芝は、09年3月期に3435億円の最終赤字に転落。その後、収益変動の大きい携帯電話や中小型液晶から撤退する一方、発電など社会インフラとNANDに経営資源を集中する構造改革を進めてきた。しかし、経営資源を集中する事業で次々と買収を進めたことで自己資本比率は12年3月期で15.1%と、健全性を示す30%を大きく下回る。

 欧州債務危機で世界経済の先行きが不透明な中で、原発の遅れをNANDや新規事業で補い、財務基盤も立て直せるか。就任4年目の佐々木社長の手腕が改めて問われている。(今井裕治)

  • シェア
  • ページの先頭へ戻る

    表示:スマートフォン PC版に切替

    • イザ!
    • MSN産経ニュース
    • SANSPO.COM
    • zakzak
    • SankeiBiz
    SANKEI DIGITAL INC.