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【ニッポン経済図鑑】JR東海 山梨リニア実験線

2012.6.25 05:00更新

 ■時速500キロでトンネル疾走 本番に向け延伸工事着々

 総額約9兆円を投じてJR東海が整備する「リニア中央新幹線」の着工に先駆け、「山梨リニア実験線」の延伸工事が山梨県で着々と進んでいる。都留市のリニア実験センターを中心に東京側に7.8キロ、甲府側に16.6キロの計24.4キロを整備。完成後には先行区間(18.4キロ)と合わせ、実験線の全長は42.8キロへと延びる。

 リニアの営業線にはトンネルが多い。東京-大阪間の7割が地下で、都市部では地下40メートルを超える大深度地下を走行。南アルプスを貫通するトンネルの長さは約20キロに及び、地表からの垂直距離が最大1.4キロとなる地点も想定されている。

 長大なトンネルを走り抜けるテストは実際の運用に向け、技術的に重要な意味を持つ。実験線の延伸区間にはトンネルが10カ所設けられ、総延長は19.1キロと延伸部分の大半を占める。

 このうち、長さ約3.8キロの「秋山トンネル」(幅約13メートル)は緩やかなカーブを描く。営業線に転用された場合、計画されている相模原駅(神奈川県)と甲府駅(山梨県)の中間付近にあたり、車両はトンネル内を時速500キロの最高速度で駆け抜けることになるという。

 実験線工事事務所の古谷佳久所長は「これまでの土木工事は順調だが、今後設置する『ガイドウエー』は精度が要求される。慎重に工事を進め、工期内の完成を目指したい」と話す。

 ガイドウエーはリニアの車両が走る軌道のことで、断面が凹字状のレールの底部と両側面にコイルを取り付ける。この磁石の力で車両が浮き、そして前後に走行する仕組みだ。

 秋山トンネルの東側には長さ113メートルの「大ノ入川橋梁」が架かる。橋梁(きょうりょう)にかぶせられたコンクリート製で半円形の「明かりフード」は、走行時の騒音低減などの役目を担い、動物の侵入を防ぐ効果もあるという。

 実験線では2011年秋まで走行車両を見学できたが、現在は延伸工事のため中断。11年3月にオープンしたJR東海の「リニア・鉄道館」(名古屋市港区)では、実験走行で時速581キロを記録した超電導リニア車両「MLX01-1」を展示しており、車内に入ることもできる。

 館内の「超電導リニア展示室」では浮上の原理や開発の歴史を学べるほか、併設されたミニシアターで時速500キロの世界を体感できる。「未来を見て、理解してもらう」(金子利治館長)ことが狙いだ。入館料は大人1000円、小中高生500円など。

 リニア中央新幹線は14年度に着工、27年には東京-名古屋間が開通する計画で、この区間を40分で結ぶ。11年12月には環境影響評価(アセスメント)がスタートし、「進捗(しんちょく)状況は非常にいい」(JR東海の担当者)。1時間7分で結ぶ東京-大阪間の開通は、45年の予定だ。

 山梨の実験線では13年末までに走行試験を再開。開発中の最新車両「L0(エルゼロ)系」が最長12編成で本番さながらに駆け抜け、営業運転に向けた最終テストが繰り返される。(中村智隆)

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【用語解説】山梨リニア実験線

 山梨県都留市を基点にした18.4キロの先行区間が1997年に完成。2008年に24.4キロの延伸工事にJR東海や鉄道・運輸機構などが着手した。リニア構想が動き出したのは1962年で旧国鉄の鉄道技術研究所(現鉄道総合技術研究所)が72年に磁気浮上走行に初成功。2003年には鉄道で世界最速の時速581キロをマークした。東海道新幹線の経年劣化対策や災害時の代替路線としての重要性が認められ、11年5月に国土交通相がリニア中央新幹線の整備計画を決定。建設費はJR東海が全額を負担する。

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