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【底流】ソフトバンク“プラチナバンド” 孫社長「つながりにくいとは言わせない」
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つながりやすい特性から“プラチナバンド”と呼ばれる900メガヘルツ帯の周波数を利用したソフトバンクの携帯電話サービスが25日に始まった。「つながりにくい」との評判が定着したソフトバンクは、汚名をそそぐ強力な武器を手に入れた。だが、通信品質を短期間で向上するのは難しく、大口顧客による解約の動きも顕在化した。「将来はNTTドコモに並ぶ」と孫正義社長の鼻息は荒いが、さらなるシェア拡大にはこれからが正念場だ。
「よろしくお願いしま~す」。今月25日、東京・六本木の交差点。うだるような暑さの中、行き交う通行人にチラシを配布するソフトバンクのスタッフの姿があった。
「号外!」と書かれたチラシを開くと、「つながらない→→つながる」との大きな文字。プラチナバンドでのサービス開始で通信品質が大きく改善するとのアピールだった。
900メガヘルツ帯は、これまでの2・1ギガヘルツ帯に比べて室内にも電波が入りやすく、障害物などを回り込んで伝わる特性がある。このため、ビルの中や繁華街などでも通話やデータ通信がしやすくなる。
同じ特性を持つ800メガヘルツ帯でサービスを展開するドコモ、KDDI(au)に比べ、ソフトバンクは「不利な戦い」を強いられてきた。利用者に不満が募っていたが、悲願だったプラチナバンド獲得によって、孫社長は「もうつながりにくいとは言わせない」と自信満々だ。
ただ、900メガヘルツ対応の基地局はサービス開始当初で同社全体(約18万局)のわずか数%。平成23~25年度の3年間で1兆5500億円を投じ、「垂直立ち上げで一気に改善していく」(孫社長)計画だが、人口カバー率90%超を達成できるのは2年後だ。すでに800メガヘルツ帯で人口カバー率99%超を実現しているライバルに対し、なおしばらく通信品質で苦しい戦いが続く。
「つながりにくい」との評判に対し、ソフトバンクは利用する電波特性の違いを理由にしてきた。だが、業界には“自業自得”との見方もある。先行するドコモやKDDIに比べて設備投資を怠っていた時期があるからだ。
売上高に対する設備投資額の比率をみると、それがうかがえる。携帯電話事業に参入した18年度は15・3%とKDDIよりも高いレベルにあったが、20年度には9・6%、21年度は8・0%と減少した。NTTドコモ、KDDIは15%以上を維持しており、ただでさえライバルより劣っていた通信品質の差は、さらに開くことになった。
しかも、ソフトバンクは20年7月に米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」を発売し、急速に加入者を増やしていた。22年度からは再びKDDIを上回るようになったが、過去の設備投資の減額が通信環境の悪化を助長させたことは否定できない。
加入者が急増するなかで設備投資を減らしたのは、18年に英ボーダフォンから携帯電話事業を買収したことで膨らんだ有利子負債の返済を優先させたからにほかならない。18年度末に2兆1581億円だった有利子負債は21年度末には1兆5010億円に急減。さらに23年度末には5472億円まで圧縮した。
そのツケは企業顧客の“離脱”となって表れ始めた。昨年10月からアイフォーンを発売したKDDIの営業攻勢で、製薬業界最大手の武田薬品工業をはじめとする大口需要家がKDDIに乗り換える動きが出ている。今後のスマホユーザーとして期待できる企業顧客の離脱は大きな痛手で、成長シナリオの修正を迫られる可能性もある。
携帯電話事業に参入して以来、ソフトバンクは加入者同士の通話を無料にした「ホワイトプラン」などの割安な料金制度や、アイフォーン独占販売など独自サービスで利用者の心をつかんでいった。若者を中心に人気は依然高く、新規契約から解約を差し引いた純増数は首位を独走する。
一方で、通信会社を変更しても同じ電話番号を使える番号持ち運び制度(MNP)では、アイフォーン独占が崩れて以降、6月まで9カ月連続でKDDIの後塵(こうじん)を拝している。陰りが見えたブランドに再び輝きを与えるには、「つながりにくい」との汚名を返上するほかない。
ただ、通信品質を向上するにはプラチナバンドだけでは難しい。基地局の設置方法や干渉調整など長年にわたって蓄積されたノウハウが不可欠だ。
「一朝一夕に構築できるものではないですよ」。KDDIの田中孝司社長はソフトバンクのプラチナバンドの効果を冷ややかに見ている。ソフトバンクは、こうした見方をはね返せるのか。通信会社として真の実力が問われている。(松元洋平)