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アシックス予想外の逆風 五輪で日本勢低調、ナイキなど海外勢ばかり目立ち…
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ランニングシューズの国内出荷額 拡大するランニングシューズの国内需要をめぐり、国内外のスポーツ用品メーカーが争奪戦を繰り広げている。世界のトップ選手が集うロンドン五輪は自社ブランドをアピールする格好の場だったものの、投擲(とうてき)を除く陸上競技で日本勢は目立った成績は残せず、外国人選手が使った独アディダスや米ナイキなど海外メーカーの製品が脚光を浴びる形となった。日本でのシェアを伸ばす海外勢には追い風となるだけに、国内勢は防衛策を講じる必要に迫られそうだ。
「あわよくばメダルの獲得も期待したが、予想もしなかった低調ぶりで残念」。ロンドン五輪で注目された男女マラソンの結果に、アシックスの関係者は落胆を隠さない。
マラソンで同社のシューズを履いた日本人は重友梨佐、藤原新、中本健太郎の計3選手。男女とも8位以内の入賞以上を期待されていたが、重友選手は79位、藤原選手が45位と低迷。中本選手は6位入賞を果たしたが、メダルには届かなかった。
最近の五輪では2000年シドニーの高橋尚子、04年アテネの野口みずきの両選手に続き、08年の北京もルーマニアのトメスク選手がアシックスのシューズを履いて金メダルを獲得。だが、ロンドンでの4大会連続金メダルはならなかった。
一方、ナイキを使ったマラソン選手は大活躍。女子は金メダルをとったエチオピアのゲラナはじめ、表彰台を独占。男子も金、銀はナイキのシューズを履いた選手だった。アシックスの調べでは、女子マラソンの上位20人のうちナイキの使用者は約7割を占め、次いでアディダスが約2割。残り約1割を他メーカーが分け合い、アシックスの存在感は薄かった。
少子高齢化でスポーツ用品の需要が伸び悩む中、手軽に始められるランニングは数少ない成長市場の一つ。健康志向の高まりを背景に、市民マラソン大会の参加ランナーも増えている。矢野経済研究所によると、ランニングシューズの国内出荷額は08年以降、毎年15%前後の伸びが続いており、11年も前年比約17%増の490億円程度に拡大したとみられる。
アシックスは戦後、「オニツカ」ブランドのシューズの開発を手がけ、品質の良さから売り上げを伸ばした。1990年代に入ってスキー用品の不振などから業績は低迷したが、再びシューズ関連に経営資源を集中させることで黒字転換に成功。12年3月期の連結売上高は2477億円と国内トップで、2位で1549億円のミズノを大きく引き離す。
欧州ではゴルフ用品メーカーのイメージが強いミズノも、ランニングシューズの拡販に力を入れ、「欧州で開かれる16のマラソン大会で約3年前からスポンサーを務めている」(上治丈太郎副社長)という。その効果もあり、ミズノは12年3月期にランニングシューズの世界販売数が前期比12%増の840万足にのぼり、業績を下支えした。
国内のランニングシューズ市場のシェア(業界推定)は、アシックスが約50%でトップを走り、ミズノが約15%。ただ、海外勢も高いファッション性と斬新さを特徴にシェアを伸ばし、アディダスが20%、ナイキが15%と日本勢を脅かす。
底の部分に空気が入った「エアマックス」シリーズで急成長したナイキは数年前から、「箱根駅伝」のサポートを本格的に開始。今年1月の大会で優勝した東洋大や駒沢大、早大など5大学にランニングシューズやユニホームを無償で提供し、ブランドの浸透に務める。
一方、アディダスの日本法人は元アシックスの技術者、三村仁司氏とアドバイザー契約を10年1月に結び、日本人向けシューズの開発に力を入れている。
対するアシックスの幹部は「いかに現在のシェアを守るかが課題」と話す。直営店の拡大のほか、マラソン大会への協賛などで「競技人口が最も多い初中級者層を確実に取り込む」と“草の根戦略”を重視するが、プロモーション力で勝る海外勢に見劣りするのは否めない。
アシックスが「次の一手」と位置づけるのは新興国を中心とした海外展開で、11年秋には直営店をブラジルに開いた。野村証券の池内一アナリストは「新興国で経済成長が進めば肥満が社会問題化する可能性が高く、ランニング関連の需要が高まるだろう」と指摘する。
アシックスは16年のリオデジャネイロ五輪までにブランドの浸透を図る。ただ海外勢も同様の戦略を取るとみられ、今後、国内はもとより世界レベルでの競争が激しくなりそうだ。(西村利也)