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“脱テレビ依存” ソニー・パナソニック「歴史的提携」の舞台裏

2012.8.31 05:00更新

液晶テレビと有機ELテレビの出荷台数

 長年ライバル関係にあったソニーとパナソニックが、次世代のテレビ技術とされる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルの共同開発に乗り出した。テレビ事業の不振にあえぐ両社が、先行する韓国勢に対抗するため手を組んだ「歴史的提携」。激烈な競争を繰り返してきた両社が過去の因縁を断ち切り、提携に踏み切った舞台裏に何があったのか。

 量産技術の確立へ

 「次世代有機ELパネルを共同で開発する契約を締結しました」

 6月25日。ソニーとパナソニックの提携という歴史的な瞬間にもかかわらず、発表は記者会見ではなく、1枚のプレスリリースが配られただけ。両社の広報担当者も「会見の予定はなかった」と口をそろえる。

 長年対立してきた両社による「平成の薩長連合」(電機関係者)は、意外なほど静かにスタートした。

 共同開発では現在、両社の技術開発陣がそれぞれの技術情報を持ち寄り、内容を検討している段階。2013年までに量産技術の確立を目指している。

 有機ELテレビの開発で先行するのは韓国勢。サムスン電子は、年内に55型のテレビを発売する計画だ。LG電子も55型テレビの年内発売を視野に入れる。商品化で韓国勢に後れを取ったことが、両社の危機感を強めた。

 平面ブラウン管テレビ「ベガ」などで大成功をおさめたソニーは、その分、薄型テレビへの移行で他社に出遅れた。一方、パナソニックはテレビ向けパネル工場の巨額投資が大きな重荷となる。12年3月期までソニーは8年連続、パナソニックも4年連続でテレビ事業の営業損益が赤字だ。

 テレビの不振が響き、両社は12年3月期の連結決算で巨額の最終赤字を計上。有機ELでは投資負担を減らすため、他社との協業が不可避だった。

 年明け以降交渉進展

 ソニーは4月に平井一夫社長が、パナソニックも6月末に津賀一宏社長が就任した。就任前に、それぞれ副社長と専務の立場でテレビ事業を担当。両氏は、有機ELに関し異口同音に「他社との協業も視野に入れている」と説明していた。

 面識もあった両氏は、当時から提携先として互いの存在を意識。過去のしがらみがない両氏のトップ就任が固まった年明け以降、提携交渉は一気に進展した。

 共同開発自体は電機業界でさほど珍しいことではない。ただ、提携内容には「量産段階での協業の可能性も検討」という表現が盛り込まれた。

 両社は生産を外部委託することも検討しているが、量産や商品化の段階で、どこまで提携を深化できるかが課題となる。

 一方、有機ELに対する業界の期待は大きいものの、「テレビが白黒からカラー、ブラウン管から液晶に移行したようなインパクトはない」(証券アナリスト)として、“ポスト液晶”としての存在を疑問視する声が多いのも事実だ。

 有機ELは液晶に比べ、色鮮やかで動画性能にも優れているが、現状では圧倒的に液晶に比べて価格が高い。

 ソニーは07年に世界で初めて11型の有機ELテレビを約20万円で発売。しかし、液晶に価格面で対抗できず、10年に国内販売を中止した。サムスンが年内に発売する55型の有機ELテレビの価格も75万円程度とみられ、液晶の3倍以上だ。

 米調査会社のディスプレイサーチによると15年の有機ELテレビの世界出荷予測は500万台で、液晶の2%弱にすぎない。

 「有機EL主戦場」に不透明感

 ディスプレイサーチの鳥居寿一アナリストは「画質と価格面で成熟している液晶テレビと差別化するのは難しい」と分析しており、有機ELがテレビの主戦場になるかは不透明だ。

 かつて両社が激しく規格争いを繰り広げたビデオレコーダーの「VHS」と「ベータ」方式。爆発的な普及が見込めるビデオだったからこそ両社とも引けない勝負だった。ましてや手を組むなど想像もできなかった。

 だが、現状のテレビは違う。パナソニックの13年3月期のテレビ販売計画は前期比12%減の1550万台、ソニーも21%減の1550万台と減る。6月末の就任会見でパナソニックの津賀社長は「テレビはもはや中核事業ではない」と言い切った。

 SMBC日興証券の三浦和晴シニアアナリストは「有機ELテレビが将来的に中核事業であるならば、両社は自社で開発するはずだ」と指摘する。

 “脱テレビ依存”に経営のかじを切ったことが、皮肉にも同分野での歴史的な提携につながった。(大柳聡庸)

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