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アップル、快進撃に変調の兆し 慣れぬ防戦に戸惑い
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【ワシントン=柿内公輔】快進撃を続けてきた米アップルに変調の兆しが見える。25日に発表した決算は市場の期待を超えられず、競合他社の追撃が激しくなる中、慣れぬ「防戦」に戸惑いも見受けられる。時価総額世界一のIT企業の底力が試されている。
ほぼ出そろった米IT大手の7~9月期決算で増収増益だったのはアップルだけ。独り勝ちにも映るが、売上高こそほぼ市場予想通りだったものの、1株利益は予測を下回った。10~12月期の業績見通しも控えめで、業界関係者らが指摘するのが、競合他社に対抗するための新製品の投入ラッシュと、それに伴う開発・販売コストの増大だ。
アップルはスマートフォンの新製品「アイフォーン5」を9月に発売したのに続き、タブレット端末「アイパッド」の小型版とパソコン「マック」の新モデルも先日発表した。しかし、アップルのオッペンハイマー最高財務責任者(CFO)も電話会見で、「劇的な変化にコストは伴う。なにせ当社は一度にこれほど多くの製品を刷新したことはない」と述べ、リスクの存在をうかがわせた。
収益力も頑強とはいえない。ライバルの米グーグルや米アマゾン・コムが相次いで低価格の端末を導入。追随したアップルの「アイパッド・ミニ」は競合製品より高めだが、「いずれ価格競争と消耗戦に引きずり込まれる」(ITアナリスト)との懸念はぬぐえない。
利益の3分の2を稼ぎ出すアイフォーンは堅調だが、米市場は飽和状態で、「性能の伸びしろはもう少ない」との指摘も聞かれる。
地域別売上高では、欧州やアジア太平洋(日本を除く)で伸び悩む。欧州の債務危機や新興国の景気減速が逆風で、とくに中国市場の販売鈍化が気がかりだ。韓国サムスン電子との特許紛争も泥沼化している。
かき入れ時の年末商戦に向けて、「自信はある」と商品力に強気を崩さぬクック最高経営責任者(CEO)だが、今後もアップルが常勝であり続けられる保証はない。