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“小用”遊べて伝わる「トイレッツ」 電子看板の役割も

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“小用”遊べて伝わる「トイレッツ」 電子看板の役割も

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【ビジネスのツボ】

 セガサミーホールディングス傘下で大手ゲームメーカーのセガ(東京都大田区)が男子トイレ向けに開発したゲーム機「トイレッツ」。日本の強みでもある「ゲーム」を家庭やゲームセンターだけでなく、「トイレ」でも楽しめるように開発した意欲的な製品だ。

 また、顧客の商品やサービスの販売促進のための電子看板としての役目も果たしている。2011年11月の発売以降、国内の居酒屋やパチンコ店、ショッピングセンターなどを中心に190店、300台以上設置されており、問い合わせも増えているという。

 「バカバカしいけど」

 トイレッツは男性用小便器に取り付けたセンサーを使い、用を足したときの水分の量や勢いを計測する機能を搭載している。水分量や勢いの変化がゲームの内容に反映され、目線の高さに取り付けられた液晶モニターでゲーム展開を楽しむ。ゲームは5種類。

 「トイレッツ」の開発をリードした町田裕孝・第一研究開発本部RED WORKSチームプロデューサーによると、開発のきっかけは社員の発した何気ないひと言だった。

 「トイレで用を足している時間は、何も考えていない。この空白の時間を楽しい時間に変えることはできないだろうか」

 「ゲーム市場が成長している時代だったら耳を貸す社員はいなかったかもしれない」と町田さんは振り返る。しかし、国内ゲーム市場は、少子化の影響などで、年々縮小する傾向にある。こうした事態に直面し、ゲーム業界は、これまでゲームを楽しむ場であった家庭やゲームセンター以外への新しい市場開拓を競っている。もちろん、セガにとっても、新市場の開拓につながるアイデアは何よりも貴重で、無駄にはしたくなかった。

 上層部の目の色も違っていた。「バカバカしいけどやってみろ」。ゴーサインを受けた町田氏らは、計画の具体化に乗り出した。

 販促ツールに期待

 しかし、構想や計画の段階と違い、実際の開発作業は困難の連続だったという。今回のプロジェクトは、あくまでも新しい市場の開拓が命題であり、これまでのゲーム開発の発想では対応できないことは分かっていた。ゲームづくりのプロたちも「どうすれば、トイレにゲームを設置してくれるだろうか」と思案にくれる日が続いた。

 そこで、製品を設置してもらう「ターゲット」として、セガが目を付けたのは、居酒屋やパチンコ店など飲食・サービス業だった。単なるゲーム機ではなく、利用者がゲームで使う液晶モニターにPOP広告を表示する機能を付ければ、「店の売り上げアップにつながる販促ツールとしての役割も担える」という発想からだった。

 ゲームと広告を連動させるビジネスを展開するため、トイレッツのコンセプトは「遊べて、伝わる」に決まった。ただ、飲食・サービス業の経営にとっても「かけたお金に対してどれだけの効果があるか」という費用対効果の考え方は最も重要。町田氏は「投資に見合ったリターンがどれだけあるのかを証明できなければ買ってもらえない」と判断。実際に、居酒屋やパチンコ店の店舗にトイレッツを設置させてもらい、その効果を調査することを決めた。

 都内のパチンコ店で行った調査では、4種類の味の食品をトイレッツの電子広告と紙の広告で表示した。その結果、4種類の味を全て記憶していた人が紙の広告が15%だったのに対し、トイレッツでは51%と記憶度が高いことがわかった。

 さらに、10年冬には居酒屋チェーン「養老乃瀧」で、トイレッツの画面に「酎ハイ」の広告を2週間表示したところ、その期間の「酎ハイ」の注文件数が2.2倍に増加したことがわかるなど、トイレッツの広告媒体としての力が裏付けられた。

 3000台需要…海外も

 実用化に向けた課題はマーケティング活動だけではなかった。生産コストの問題も立ちはだかった。試作機は1台30万円以上にもなったため、「販促ツールとして導入するには高く、新市場を創造するにはコストダウンが欠かせない」。液晶モニターの調達方法などを見直すことで、1台当たり約15万円と大幅にコストを抑えることに成功し、実用化への道は開けた。

 思わぬ副産物もあった。小便器には的になるシールを貼ってある。この的の位置は、用を足したとき、最も飛散しづらい高さに設計されている。このため、利用者がゲームに熱中し、真剣に的を狙うため、「導入店舗からはトイレがきれいになり、掃除が楽になった」と取引先から声をかけられることも少なくないという。

 セガのトイレッツが切り開いた「トイレでのゲームの楽しみ方」は、今後も広がりを見せそうだ。居酒屋やパチンコ店、ショッピングセンター以外にも道の駅や高速道路、カラオケ店などからの引き合いも強い。最近ではオフィスで社員向けの情報を告知するため導入する企業もあり、町田氏は「最低でも3000台の市場はある」と見込む。

 インターネットの動画サイトなどにアップされたトイレッツの映像を見て関心を寄せる企業は国内にとどまらず、欧米や南米、アフリカと全世界から問い合わせが寄せられているという。残念ながら、海外向けのトイレッツを展開するには、言語をその国に合わせるなどソフトウエアの改良が必要なため、海外販売は今のところ予定はない。しかし、町田氏は「ニーズが高まるようなら、ぜひチャレンジしてみたい」と海外進出に向け意欲を燃やしている。

 家庭用、ゲームセンター用のゲームを牽引(けんいん)してきたセガは、トイレ向けゲームのパイオニアとしても、新しいサービスを展開していく考えだ。

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