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EV充電規格で日米欧が火花 最悪のシナリオ警戒、中国参戦で乱立の恐れも

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EV充電規格で日米欧が火花 最悪のシナリオ警戒、中国参戦で乱立の恐れも

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チャデモ方式を採用ている日産「リーフ」  電気自動車(EV)の急速充電方式をめぐり、日本と欧米の自動車メーカーが対立する構図が一段と鮮明となってきた。

 国際標準化への影響力が強い米自動車技術者協会(SAEインターナショナル)が15日、欧米メーカーが開発中の「コンボ方式」の採用を決定。世界に先駆けて約3年前に実用化に成功し、設置実績を重ねてきた日本勢の「チャデモ方式」は不利な形勢に追い込まれた。

 ただ日本勢は国際標準化を働きかけながら、設置数を増やしてデファクトスタンダード(事実上の業界標準)化を目指す両面作戦をとり、一歩も引かない構えだ。

 世界で1600基強設置

 「コンボには実績がなく、危機感はない。チャデモは世界各国に設置している実績がある」

 EVの「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を展開する三菱自動車の益子修社長は25日、新車発表会の会見後にこう述べ、SAEの決定で日本勢が打撃を受けるとの見方を否定した。

 強気の姿勢を貫くのは、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲンなどが推進するコンボ方式が開発段階なのに対し、チャデモ方式の充電器は世界各地で1600基強が設置され、目に見える形で先行していることが背景にある。

 米国でもオレゴン、ワシントン、カリフォルニアの各州がチャデモ方式の早期採用に前向きとされ、2013年も700~800基の設置が米国で見込まれている。さらに欧州でも200~300基程度が上積みされる見通しだ。日本の自動車メーカーや部品メーカーなど430社・団体で構成するチャデモ協議会は「SAEの決定に踊らされることなく、実績を地道に積み上げ、デファクトスタンダードを目指す」(担当者)と、普及拡大への自信は揺るがない。

 発言力強い欧米勢

 もっとも欧米勢の発言力の強さは日本勢と比べものにならない。電気技術関係の国際標準を決める国際電気標準会議(IEC)や、下部組織の担当技術委員会は欧米勢が牛耳り、日本の影響力は小さい。SAEは関係機関を通じ、IECと協力関係にあるのも強みとしている。

 規格統一などの重要なテーマについて、SAEではこれまで参加企業の全会一致を条件にしてきた。しかし、今回は「日産自動車や三菱自動車の反対を米国勢が中心になって押し切り、多数決でごり押しした」(日産幹部)。

 SAEは民間団体のため「法的な拘束力はない」(チャデモ協議会関係者)というものの、発言力の大きさを生かしてチャデモを排除する動きを今後強める可能性は高い。

 SAEの採用決定で「日本勢のEVに販売面でも打撃を与えられる」と米国勢がもくろんだとの指摘もある。米国では日産が「リーフ」を約1万5000台、三菱が「アイ・ミーブ」など約1700台のEVをそれぞれ販売済みで、米大手自動車メーカーは現状を黙視するわけにはいかない。

 両社の勢いをそぐには、SAEの決定をごり押しすることで「チャデモは充電方式が違うので、コンボの実用化までEV購入を待つべきだ」というネガティブキャンペーンを張れると踏んだという見方だ。

 日本勢もIECなどへの働きかけを怠ってはいない。9月下旬にはチャデモ協議会の関係者らがノルウェーとオランダ、ベルギー、フランスの4カ国を訪問。政府筋や電力会社、自動車メーカーなどにチャデモ方式の採用を呼びかけた。担当者によると、各国の反応は上々で「EVの導入が急速に進んでいるので、実績もあるチャデモ方式でインフラを早く整備したいという要望が相次いだ」という。

 中国も独自開発 規格乱立に懸念

 日本勢にとって最悪のシナリオは、米エネルギー省が今後進める設置事業の基準に「EV充電器はコンボ方式に準拠する必要がある」といった方針を掲げる事態になることだ。そうなると「チャデモは米国でコンボに太刀打ちできなくなる」(日本政府関係者)と警戒する。

 EVの販売台数が伸び悩んでいるのも頭が痛い。日産のリーフは2010年末の発売から現在までの累計台数が4万台で、グループの仏ルノーと合わせて16年度までに150万台とする目標の実現が遠のきつつある。

 日本勢はチャデモ方式で競争を勝ち抜き、コンボ方式を劣勢に追いやる可能性を手にしているとはいえ、中国もチャデモ方式に似た別の独自規格を開発しているとされ、3つの規格が世界で乱立する恐れも否定できない。

 日本勢にとって重要なのは技術で先行するEVの普及を急ぎ、早期の収益化を図ることだけに、欧米や中国との協調を視野に入れるなど柔軟な選択を迫られる局面も今後ありそうだ。(飯田耕司)

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