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日本のものづくり大丈夫か 工作機械、内需縮小で海外生産シフト加速

2012.12.1 08:00更新

工作機械の受注額

 工作機械メーカーが海外進出を加速させている。自動車や電機、機械など国内メーカーが生産拠点の海外シフトを強めたことに伴い、国内の受注額がピーク時の半分程度に落ち込み、海外に活路を見いだすしかないと判断したからだ。精度や性能の高さで世界から信頼されている「メード・イン・ジャパン」の工作機械を納入先に近い拠点で生産・供給し、新たな成長軌道をつかもうと模索している。

 為替リスク不可避

 「日本のものづくりは大丈夫なのか。このままでは製造現場は駄目になる」。日本工作機械工業会の横山元彦会長(ジェイテクト会長)をはじめ業界各社の幹部は、国内製造業の将来を憂うるとともに、日本の技術力を支えてきた工作機械業界の先行きに危機感を強めている。

 というのも工作機械の内需が急速に減り、歯止めがかからないからだ。国内の1カ月当たりの平均受注額は2005年が622億円だったのに対し、12年は10月までの平均で320億円と半減。歴史的な円高水準に対応するため、主要製造業が海外生産を拡大した影響が大きい。

 その一方で、海外のウエートは07年に内需を上回って以降、高まるばかり。12年には全体受注額の7割を占め、内需との差は2倍以上となった。

 もっとも、円高は工作機械業界自体も直撃している。オークマやツガミなどの大手は国内の主力工場を建て替え、ラインの見直しや最新設備の導入などで効率化を急いでいるが、外需が増えるにつれて為替リスクが高まるのは避けられない。このため各社は軍事転用関連の規制に該当しない汎用(はんよう)品などに絞りながらも、海外シフトを急いでいる。

 森精機製作所の森雅彦社長は「企業として先々も成長するため、海外へ打って出る」と言い切る。同社は06年にスイスのディキシー・マシーンズを買収し、09年には欧州最大手の独ギルデマイスターと資本・業務提携。今年7月に米カリフォルニア州で同社単独では初となる海外工場を稼働させ、13年9月には中国・天津工場が動き出す。今後10年以内に、インドやブラジルにも工場を整備する方向だ。

 ヤマザキマザックも海外での生産力拡充を急ぐ。13年3月までに中国・大連で新工場を立ち上げるほか、航空向けの需要が旺盛な米国では、ケンタッキー州の工場の生産能力を13年秋をめどに約1.5倍の月産200台に引き上げる。富士機械製造も13年から、中国の江蘇省で数値制御旋盤の生産を始める。

 拭えぬ「内憂外患」

 海外生産シフトは中堅メーカーにも及んでいる。日本工作機械工業会が3月に行ったアンケートで、54社から得た有効回答のうち「海外で生産している」は18社(32.1%)、「検討中」が8社(14.3%)と合計で全体の半数近くを占めた。工業会では、国内各社の海外生産比率が直近の12%弱から20年には20%超に高まると予測する。

 現地企業の需要を取り込むため、販売網の拡充も急ピッチだ。ツガミは8月にアジア事業の販売統括拠点をシンガポールに設け、9月にはインドの拠点も稼働させた。ベトナムに現地法人を設立する牧野フライス製作所の牧野二郎社長は「海外でスマートフォン(高機能携帯電話)生産などの受注を獲得したい」と意気込む。東芝機械も13年初めをめどにインドネシアとブラジルに現地法人を設ける。

 ただ、各社が成長エンジンと位置づける海外市場も不安を抱える。海外の受注額は10月に前年同月比3.8%減の667億円となり、好調の目安とされる700億円を2カ月ぶりに下回った。欧州債務危機の余波がタイやインドなどに及び、東南アジアが2桁を超える減少となったためだ。中国の受注は安定しているが、反日感情の高まりで先行き不透明感が拭えないなど、日本の業界は「内憂外患」に陥りかねない気配も漂う。

 加えて、新興国の需要をめぐる各国の競争は激しく、ライバルのドイツでは産官学連携の技術開発を政府が資金面でバックアップし、中国政府も工作機械に関する大学の研究を支援。日本工作機械工業会の横山会長は「日本の技術水準は世界的に優れているものの、中長期的には懸念を覚える」と話す。

 世界経済の減速が一段と鮮明になり、各社の業績が鈍化すれば「成長に向けた投資が縮み、安値攻勢を仕掛ける中国や韓国メーカーの台頭を許しかねない」(業界関係者)。各社とも国内生産は維持する方針だが、臨機応変の対応を今後迫られる可能性もある。難しい経営のかじ取りの中、攻めの投資を可能にする成長戦略を打ち出せるかが、勝ち残りの鍵を握りそうだ。(今井裕治)

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