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問われる東海道新幹線の老朽化対策 安全の信頼度高めた「N700A」
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JR東海の新型新幹線「N700A」 2014年10月で開業から「満50歳」を迎える東海道新幹線。JR東海は来年2月に最新型車両「N700A」を導入し、世界が評価する新幹線の安全性・快適性にさらに磨きをかける。
一方で、国内旅客輸送の大動脈を半世紀にわたって担ってきたインフラは、今や老化現象に向き合う必要にも迫られている。同社は2018年度以降の10年間で大規模改修に取り組む検討に着手しており、地震や津波など災害リスクへの備えも急ぐ。
「東京スカイツリーの開業や(復元された)東京駅の駅舎など、東京の観光価値が上がった。名古屋、大阪からの利用客が多い」
山田佳臣社長がこう笑顔で話すように今年の新幹線需要は好調だ。足元の東海道新幹線の利用状況は今年11月まで15カ月連続で前年同月実績を上回っている。
東海道新幹線は現在1日平均333本を運行しており、約39万1000人の乗客を運ぶ。輸送量は1964年開業時の1.4倍に増えた。
旅客需要の回復を受けてJR東海は、13年3月期に過去最高の連結最終利益1870億円を見込んでおり、改めて収益を支える屋台骨としての存在感の大きさを示した。
新幹線の高い収益力をより強固にするための具体策となるのが、来年2月8日午前7時に東京駅、新大阪駅からそれぞれ1番列車が走る最新型車両「N700A」の導入だ。「N700系」の改良車種で約660億円を投資。12年度に6編成、13年度に7編成をそれぞれ投入し、99年デビューの「700系」車両と順次入れ替えていく。
N700Aは「N700系導入後に当社で培った技術・ノウハウを詰め込んだ」(葛西敬之会長)といい、「A」にはN700系より「Advanced(進歩した)」という意味合いを込めた。中国でも開発が進む高速鉄道分野で、日本の技術優位性を世界に示す狙いもある。
「見た目は(N700系と)あまり変わらないが、中身は現時点で最高」(坂上啓・車両課長)という新型車両で、大きな変更点になるのがブレーキ性能だ。
N700系に比べて、ブレーキをかけてから停車するまでの距離を1~2割短くできるという。
また、台車の振動を分析して異常を検知し、故障を未然に防ぐ仕組みも盛り込んだ。省エネ機能や乗り心地はもちろん、山田社長は「安全の信頼度をさらに高めた」と胸をはる。
開業以来、乗車中の死傷事故が「ゼロ」という抜群の安全性は新幹線の代名詞。JR東海が目指す海外の高速鉄道計画への技術輸出の大きな武器でもあり、N700Aの投入で進化を続ける高い安全技術を世界にアピールし、米国などでの受注につなげる戦略を描く。
だが、その世界に誇る安全性には経年劣化、老朽化のリスクが忍び寄る。64年の東京オリンピックの開催に合わせて開業した東海道新幹線は、五輪直前の5年間に集中的に建設が進められたことから、線路などの基盤インフラの更新ニーズも集中的に生じると予想されている。
このため、同社では18年度からの10カ年で、すべての鋼橋をはじめ、コンクリート橋、トンネルなどを対象に大規模改修を実施する計画を検討中だ。
ただ、大規模改修に踏み切れば運行ダイヤに支障が出ることは避けられない。旅客輸送への影響を最小限に抑え、収益を維持しながら、いかに迅速に改修を終えられるか。屋台骨の老朽化対策の巧拙が、今後の経営の浮沈を左右することになる。(西川博明)