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スマホ・自動車・家電の動向展望 思わず買いたくなる新商品はある?
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スマートフォン(高機能携帯電話)の普及が急速に進み、燃費のいいエコカーが相変わらずの人気を誇った昨年の新製品市場。この流れは平成25年も変わらないとみられるが、そうしたなかで思わず財布のヒモを緩めたくなる魅力的な新商品は登場するのか。生活に身近で消費者の関心も高いスマホ、自動車、家電の動向を展望してみた。
今年の携帯電話業界は、次世代の高速通信規格「LTE」の普及元年となりそうだ。すでにNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの大手3社がLTE対応のスマートフォンを投入。基地局開設も急ピッチで進み、今年3月には国内総人口の9割程度がLTE網でカバーされる。米アップルの「iPhone(アイフォーン)5」を中心に、LTE搭載のスマホの普及も大きく進みそうだ。
LTEは「ロング・ターム・エボリューション」の略称。現在主流の「3G(第3世代)」の最大10倍近い高速通信が可能で、「第3・9世代」とも呼ばれる。スマホ普及に伴い、携帯で映像や音楽を楽しむ利用者が増加。各社は大量のデータ通信でも「サクサクつながる」(孫正義ソフトバンク社長)LTEへの切り替えを急いでいる。
ドコモは昨年9月末時点で1万4千局だったLTE基地局を今年3月までに2万3千局に増設。ソフトバンクも3月に2万局とする計画だ。順調にいけば、LTEの人口カバー率は都市部を中心に3月にも9割近くに達する見通しだ。
LTEの利用可能エリア拡大に伴い、対応機種の普及も急速に進みそうだ。
平成22年に日本初のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」を始めたドコモは、昨年12月時点でLTE対応機種の契約数が計800万件を突破した。
ドコモを追うKDDI、ソフトバンクは昨年9月発売のアイフォーン5でLTEを導入。人気機種アイフォーンをてこに「サービスを垂直立ち上げし、一気に抜く」(田中孝司KDDI社長)構えだ。両社とも24年冬から25年春にかけて発売するアンドロイド搭載のスマホでも、全機種がLTE対応となる。
こうしたなかで、浮沈のカギを握りそうなのはやはりアイフォーンだ。MM総研によると、昨年4~9月の携帯電話端末の国内出荷台数(メーカー別)は、アイフォーンを扱う米アップルが計457万台で首位となり、2位富士通、3位シャープを大きく引き離した。特に「アイフォーン5の爆発的な勢いは当面続きそう」(MM総研の横田英明研究部長)だ。
現時点でドコモはアイフォーンを扱っておらず、KDDI、ソフトバンクに乗り換えるユーザーも増えている。ただドコモはアイフォーンについて、「金輪際扱わないわけではない」(加藤薫社長)としており、3社が同機種でLTE普及合戦を繰り広げる可能性もありそうだ。(渡部一実)
原付きバイク以上、軽自動車未満。近未来的なデザインが目を引く1~3人乗りの「超小型車」と呼ばれる新たな乗り物が今年、本格始動する。日産自動車が平成25年中の市販化を検討しているほか、ヤマハ発動機も今年後半から超小型車の生産に乗り出す見込み。近距離移動や観光の足としての用途が期待されるほか、高齢者や若者に向けて新たな需要喚起を促す狙いもあり、自動車大手からベンチャー企業まで、開発競争が激化している。
自動車市場は燃費のいいエコカー人気が続く。毎月の新車販売ランキングではハイブリッド車(HV)の「プリウス」「アクア」(いずれもトヨタ自動車)、軽自動車の「N BOX」(ホンダ)、「ワゴンR」(スズキ)などがズラリと並ぶ。この傾向は今年も変わらず、各社とも魅力的なエコカー投入が続くはずだ。
こうしたなかで、新ジャンルの車として期待されるのが超小型車だ。登録車や軽に比べて駐車スペースを取らず、取り回しやすいなどメリットも多い。国土交通省は今月、地方自治体が対象区域などを申請すれば公道での走行実験を認める認定制度を施行する方針で、超小型車の普及を後押しする。
自動車メーカーでは、日産自動車がすでに国交相認定を受けて横浜市内での公道走行実験を開始。2人乗り超小型電気自動車(EV)「ニューモビリティコンセプト(NMC)」を観光客らに無料で貸し出しており、「想像していたよりちゃんと走れて快適だった。エコのためにも早く普及させるべきだ」(都内の男性会社員)と利用者からの評判も上々だ。
異業種から参入するケースもある。「キャベジンコーワ」などの医薬品で知られる「興和」(名古屋市中区)子会社のEVメーカー「コボット」(福岡県宗像市)は、松山市の道後温泉エリアで行われている実証実験に1人乗り超小型EVを提供している。担当者は「このエリアは急な坂道が多く道も狭いので、小回りの利く超小型車が便利。2人乗りだとさらに需要が増えると思う」と期待する。
今年はホンダも自社開発の超小型EVを使って、さいたま市などで実証実験を行う予定のほか、過去に試作車を東京モーターショーでお披露目したスズキやダイハツ工業も実験の可能性を探っていく。
普及に向け、最大の課題は価格だ。「軽でもEVは200万~300万円することを考えれば80万~90万円は決して高くない」(EVベンチャー、タウンEVの杉本祥郎社長)との声もあるが、コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」の長島聡自動車戦略チーム代表は「50万円を切る価格でないと超小型車の魅力はない」と指摘する。
80万円を切る軽がある中で、どうユーザーを引きつけるか。価格以外の魅力をいかにアピールできるかが普及のカギとなる。(古川有希)
家電業界で今年注目を集めそうなのが、人気のスマートフォンと連携した白物家電だ。シャープは内蔵カメラで撮影した画像をスマホに転送できる掃除ロボットを発売。消し忘れても遠隔地からスマホで運転を止められるエアコンも登場している。掃除機やエアコンといった白物家電の国内市場が成熟するなか、需要を掘り起こそうと家電各社がスマホを使った新機能を競っている。
シャープの掃除ロボット「COCOROBO(ココロボ)」のウリの一つが、内蔵カメラで撮影した室内の画像をスマホに送信する機能だ。外出先からでもペットの様子などを確認できるため、若い女性などに人気という。
掃除とはまったく関係のない機能だが、スマホの普及が進み、「より面白みが出る」(広報担当者)として搭載した。
昨年12月には、スマホでココロボを遠隔操作できる専用アプリ(応用ソフト)の配信も開始した。スマホの画面上で室内の家具や家電の位置を表示し、外出先からでも指定した場所を掃除できる。赤外線通信を使って、エアコンや照明をココロボを介して遠隔操作するコントローラーも売り出した。
一方、パナソニックが発売したのはスマホと連携したオーブンレンジや炊飯器。専用サイトからレシピを検索し、「おサイフケータイ」機能が付いたスマホをレンジ本体に触れるだけで、料理にあった焼き加減などが設定できる。
炊飯器も同様に炊き方などを選べる。これまでは料理本などを見ながら煩雑な操作が必要な場合もあったが、スマホをかざすだけで簡単に設定できる。
同社はスマホと白物家電の連携を強化。昨年秋にはスマホ連携のエアコンや冷蔵庫、洗濯乾燥機も追加して発売した。エアコンは消し忘れた場合でも、スマホを使って遠隔地からスイッチを消せる。
また冷蔵庫本体にスマホをタッチすることで扉の開閉回数など運転状況を確認でき、省エネにつながるという。洗濯乾燥機にスマホをかざせば、衣類の量に応じた洗剤や柔軟剤の適量が表示される。
日本電機工業会と日本冷凍空調工業会によると、平成24年度の白物家電の国内出荷額は前年度比6・6%減の2兆592億円と、2年連続でマイナスとなる見込み。
エアコンや冷蔵庫で家電エコポイント制度の反動もあり、白物家電の国内出荷は頭打ちの状況だ。ただスマホ連携の白物家電が今後も増えるのは確実で、市場の浸透も進みそうだ。(大柳聡庸)