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シェールガス解禁へ高まる期待 電力業界恩恵も量と価格に課題
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天然ガスの価格 米国で開発が進む新型天然ガス「シェールガス」の日本向け輸出解禁への期待が高まっている。
日米首脳会談では安倍晋三首相の強い要請を受けオバマ米大統領も前向きな姿勢をみせ、早ければ今月中にも一部が解禁されるとの見方も出ている。実現すれば、火力発電の燃料費負担に悩む電力業界などに大きなメリットをもたらす。
ただ、現地の液化設備建設などに時間がかかるため、日本に入るのは早くても2017年から。輸出量にも限界があり、割安な価格で安定入手できる保証もないなど、米国で進む「革命」の恩恵を受けるには時間がかかりそうだ。
「同盟国としての日本の重要性は常に念頭に置いている」。オバマ大統領は2月22日の首脳会談で、天然ガス対日輸出の早期承認を求める安倍首相にこう明言した。米国は自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への天然ガス輸出を制限しているが、政治判断で対日輸出を許可する可能性がある。
シェールガスに期待がかかるのは、何よりそのコストだ。日本はガス需要の大半を液化天然ガス(LNG)の輸入に頼るが、現在は“ジャパンプレミアム”と呼ばれる原油と連動した割高な契約を強いられている。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、今年1月の日本のLNG輸入価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり約16ドル。
これに対し、シェールガスの生産本格化で大幅に価格が下がった米国内の取引価格は3.3ドル程度と、約5倍の開きがある。米国内で液化設備を設け、輸送コストを考慮しても10ドル程度まで調達コストを下げられる見通しだ。
日本政策投資銀行の試算によると、シェールガスの輸入が実現すれば日本のLNGの平均調達価格は2020年時点で、現状より6.8%下がるという。また、安価なLNGの入手手段を確保できれば、中東や東南アジアなど他の産ガス国との交渉でも有利なカードとなり、原油連動の契約自体が見直される可能性がある。そうなれば最大15.2%の価格引き下げにつながるとしている。
東日本大震災後、電力各社が原発に代替する火力発電を増強した結果、LNGの輸入量が急増。円安による輸入価格上昇も重なり、1月の貿易収支は1兆6294億円と過去最大の赤字となった。電力会社は燃料費の増加で経営を圧迫され、電気料金の値上げ申請も各地で相次いでいるだけに、安価なLNGへの期待は高まるばかりだ。
輸出許可に向けては、米エネルギー省(DOE)に現在、16件が申請されている。このうち日本企業が関わる案件は、(1)中部電力と大阪ガスが参加する「フリーポート」計画(テキサス州)(2)住友商事と東京ガスの「コープポイント」計画(メリーランド州)(3)三井物産と三菱商事の「キャメロン」計画(ルイジアナ州)-の3件。
東京電力は、キャメロンから年80万トン以上の購入とLNGタンクの増設を計画している。これらのプロジェクトが輸出解禁となれば、17年から年間計1470万トンを日本に輸入できる。これは11年度の日本のLNG総輸入量(8318万トン)の2割近い水準だ。
燃料費を圧縮できれば電力会社の収支は改善し、電気料金の抑制にもつながる。経済産業省は現在進めている関西電力や九州電力などの値上げ審査で、シェールガス調達を前提にした燃料費の圧縮を求める方針など、すでに米国の輸出解禁を見込んだ議論も進み始めている。
ただ、米国内では日本向けLNG輸出に慎重な声も強い。すでにシェールガスを使った化学製品の基礎原料となるエチレン設備の新設計画が相次ぐなど、米国の産業界も安価なガスを使って産業復権を目指す動きが出ている。それが輸出解禁によってガス需要が増大すれば米国内の価格が上昇し、これらの産業に打撃を与えかねないためだ。
オバマ政権も輸出に前のめりというわけではなく、輸出許可は最終的に数件にとどまる可能性もある。一部では「思ったほどの量が出ず、期待外れになるかもしれない」(エコノミスト)との悲観的な見方もある。国内のある商社幹部も、「輸出量には限界もあるだろう」と慎重だ。
シェールガス争奪戦が起きる可能性もある。割高なLNG調達契約を強いられているのは日本だけでなく、台湾や韓国なども同様だ。今後、これらの国・地域との取り合いになれば、価格の大幅な引き下げは難しいとの意見もある。
東京ガスの岡本毅社長は「シェールガスを含め、アフリカ・モザンビークのガス田など世界各地で動き出している新しい供給源を確保して、原油連動の価格決定を少しずつ見直していきたい」と、地道な努力が必要との考えを示す。
LNG輸入価格を引き下げるには、シェールガスだけに頼るのではなく、幅広い供給源を確保して資源国との交渉力を強化していく必要がありそうだ。(田辺裕晶)