「心の絆」ITで被災地支援 NECなど取り組み拡充
2013.3.11 08:15更新
東日本大震災の復興をIT(情報技術)で支援する大手企業の取り組みが拡充している。NECが宮城県の仮設住宅で地上デジタル放送を利用した“手作りテレビ番組”の制作を後押しするほか、富士通も子供たちの心のケアや仮設住宅の入居者の見守り支援に取り組んでいる。今後、重要性が増す「心の絆」をつなぐ活動をITで支えている。
宮城県亘理町の宮前仮設住宅では、約80世帯の住民らがテレビ番組に出演し、各家庭に配信される「宮前チャンネル」が話題を集めている。仮設住宅での暮らしは、住み慣れた土地を離れることで、住民の孤立化やコミュニケーション不足が懸念されており、テレビ放送を通して、“心をつなぐ”試みとして注目されている。
仮設住宅でのテレビ放送システムはNECが開発した。地上デジタルの空きチャンネルを活用し、既設の配信ケーブルと手のひらサイズの送信機などの簡易なシステムを活用し、電波を各住宅に届ける仕組みだ。
番組づくりは昨年3月から始まった。仮設住宅に常駐する臨時職員らが家庭用ビデオカメラを片手に、地域のお祭りや健康体操、料理番組などの住民らが主役のイベントを撮影し、番組を制作する。
また、行政からのお知らせも合わせて約2時間のプログラムを毎日午前9時~翌午前8時まで放送する。
仮設住宅の各家庭や集会所で流れる“手作り”テレビ番組は、住民らの心を結びつける輪となっている。仮設住宅に暮らす保田久美子さん(47)は「テレビ放送がいつも話題の中心になる」と話す。
NECでは亘理町での取り組みを実証テストとして約1年間実施する予定だった。しかし、町の後押しと住民らの要望により、仮設住宅での生活が続く限り継続する方針に切り替えた。他の被災地の仮設住宅をはじめ、高齢化の進む都市部の団地や過疎地域などへの導入を見込み、事業化を目指す。
NEC復興支援推進室の岡山高明エキスパートは「被災地を元気にする、新しい社会モデルを、日本や世界に発信したい」と意気込む。
一方、富士通は岩手県内公立学校を対象に、児童や生徒の体と心の健康状態をケアする「いわて子どものこころのサポートプログラム」について、データ管理、アンケートなどの集計を情報システム導入などで協力している。
2011年末から8年間調査を支援する。福島県いわき市が仮設住宅など入居者に行う見守り支援事業に、タブレット端末の提供やITシステム運用などでも今後数年間協力する。
また、日立製作所の子会社日立システムズが福島県郡山市に設置したコールセンターでは、15年度までに雇用者を300人に引き上げるなど、被災地の雇用活性化を手助けする。