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日本、リニア技術売り込み攻勢 米の高速鉄道整備計画

2013.3.15 08:15更新

超電導リニアの新型車両L0系(先頭車)

 米国で高速鉄道計画が注目を集めている。オバマ政権がインフラ整備と雇用創出を兼ねた重要政策として、全米に路線網を張り巡らせる計画だ。日本側も、2月に訪米した安倍晋三首相が超電導リニアモーターカーの技術協力を大統領に直接提案するなど、売り込みを強めている。

 「大統領にアピールできた。このために汗をかいてきたかいがあった」

 ワシントン駐在のJR東海関係者は笑顔をみせる。JR東海は米国のコンサルティング会社と組み、米政府関係者にリニアの将来性や日本の技術力を訴えてきた。その集大成が2月22日の日米首脳会談。

 「日本のリニア技術を導入し、日米協力の象徴としたい」とトップセールスをかけた安倍首相に、オバマ大統領も関心を示したという。具体的な建設計画は未定だが、早くも首都ワシントンとメリーランド州の大都市ボルティモアを結ぶ64キロがリニア建設区間の最有力候補として浮上している。

 オバマ政権は2011年2月に、インフラ整備や地球温暖化対策として、高速鉄道整備に6年間で530億ドル(約5兆円)を投じると発表。バイデン副大統領は「渋滞を減らし、雇用創出にも役立つ」と強調。

 新たな鉄道建設のほか、既存路線の高速化も進める方針だ。現在、具体化している整備計画は全米で12路線、最高時速90マイル(約145キロ)超の主要路線は7路線となっている。

 最も進行しているのが、西海岸カリフォルニア州のプロジェクトだ。サンディエゴからサンフランシスコなどを結ぶ区間の一部について、連邦鉄道局は昨年9月に着工を認可し、13年中に建設が始まる。

 ワシントンとボストンを結ぶ現時点で全米唯一の高速鉄道「アセラ」も、全車両の入れ替えを検討中だ。関係者によると、三菱重工業などの日本企業も入札に参加するとみられている。

 ただ、米国の高速鉄道計画は必ずしも順風満帆ではない。JR東海など日本の企業連合が新幹線を売り込んでいたフロリダ州の高速鉄道計画は、野党共和党系のスコット知事が「納税者をリスクにさらせない」と反対し、いったん頓挫した。米国では連邦政府や多くの州政府が財政難に直面しており、事業費がかさむ高速鉄道は重荷となる。

 米国で起きているシェールガスの開発ブームも自動車業界を活気づかせるが、鉄道事業者には恩恵が乏しい。

 オバマ大統領は「米国の移動手段を革新的に変える」と、高速鉄道を今後も推進する構えだが、先行きには不透明感も漂う。(ワシントン 柿内公輔)

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