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サーベラスVS西武HD 敵対的TOBに発展へ
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西武鉄道などを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)の株式再上場をめぐる、同社と筆頭株主である米投資会社サーベラスの対立が、敵対的TOB(株式公開買い付け)に発展する見通しとなった。
より大きな上場益を得たいサーベラスは経営への影響力を高めようと、議決権の3分の1超を確保するTOBを11日に提案。西武HD側は19日、財界人らの助言機関である有識者会議を開いてTOBに反対する意思を確認、26日までに正式表明する。
「西武HDは公共性が高い鉄道を持つ。業績は回復し、アベノミクスで株式市場は好転した。一日も早く(株式の再上場で)流動性を求めたい。西武HDはTOBに反対とはっきり言った。われわれもそう思う」
東京都内で19日に開かれた有識者会議で、メンバーの一人である古森重隆・富士フイルムホールディングス会長は語気を強めた。
西武HDは、前身の旧西武鉄道が有価証券の虚偽記載問題で平成16年12月に上場廃止となり、組織再編の過程で18年1月にサーベラスが1千億円超の資本増強を引き受けた。その後は共同で経営再建を進めてきたが、昨年12月をめどとした再上場を前に争いが表面化する。
焦点は株式の売り出し価格。市況に基づく一部証券会社の推計では、1株1千~1500円が相場というが、サーベラスの想定はその倍近い2千~2500円とされる。
価格差が大きいのは、サーベラスが西武HDに経営改善の余地があるとみるため。現在の持ち株比率32・4%を、TOBにより最大で約200億円を投じて4%買い増し、3分の1超とする考えだ。
サーベラス側の担当弁護士は「2~3年かけてもっと良い会社にする。現状ではガバナンス(企業統治)が心もとない」と米本部の意向を解説する。
関係者によると西武HDに複数のリストラ案を提案。だが西武HDには「全てが無理難題」(幹部)に映る。同社の25年3月期の連結業績予想は、本業のもうけを示す営業利益が最低でも前年同期比21・7%増の400億円となる見通し。有利子負債残高は、16年度の1兆3500億円から、24年度は約8千億円台に縮小した。
中核の鉄道事業は、主力の西武新宿線、同池袋線が、同秩父線などの不採算路線を補って好調という。プリンスホテルは25年3月期に黒字化を見込む。球団を擁する西武ライオンズは昨年3月期に黒字化した。球団の主催試合の年間入場者数は、一時は100万人台に落ち込んだが、現在は150万人前後に回復している。
4月下旬を期限とするTOBの成立はほぼ確実。ただ保有株比率が3分の1を超えても、ただちに経営陣を交代させる力はなく、ヤマ場は6月の株主総会で取締役選任を求める、委任状争奪戦(プロキシーファイト)となりそうだ。
サーベラスは新任取締役候補として、元金融庁長官の五味広文氏や日本郵政公社(現日本郵政)の総裁をつとめた生田正治氏ら3人を提案、さらに追加する用意もあるという。株主総会で過半数の賛成を得て承認されれば、西武HDは提案されたリストラ案の検討を迫られかねない。
今回の対立は、公共性の高い鉄道路線を守ろうとする西武HDと、米国流に経営の効率化と透明性を求めるサーベラスとの「日米対決」でもある。ただサーベラスの目的は、あくまで上場益を得ることで「本気で経営権を握る気はない」(市場筋)との見方が強い。
総会後は、両者で再上場の時期と売り出し価格の「落としどころ」を探る展開になりそうだ。その結果「例えば不採算路線を廃止するなどのリストラもありうる」(証券アナリスト)とみられている。