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高浜原発の愛称知ってる? アトム、ウラン…社内でも浸透ビミョー
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関西電力の高浜発電所の(右手前から)1号機(アトムくん)、2号機(ウランちゃん)、3号機(みらいくん)、4号機(あかりちゃん)=福井県高浜町(宇野貴文撮影) 関西電力が国内で唯一稼働中の大飯原発3、4号機(福井県)に続き、再稼働を目指す高浜原発3、4号機(同)。原子力規制委員会が原発の新規制基準の条文案を示し、基準に適合するかが関西で注目されている。
ところで、高浜原発1~4号機にはそれぞれ「アトムくん」「ウランちゃん」「みらいくん」「あかりちゃん」という愛称がある。安直なネーミングのせいか、一般にはおろか社内にすら浸透していないようだ。原発への逆風も依然強く、高浜2基の再稼働の行方も不透明。愛称の通り「明るい未来」は関電に到来するのか。
高浜原発は1号機(82万6千キロワット)が昭和49年11月、2号機(同)が50年11月、3号機(87万キロワット)が60年1月、4号機(同)が同年6月に、順次運転を開始した。この4基に愛称がつけられたのは平成7年9月のこと。
関電の担当者は「ずいぶん前なので詳しい由来などはわかりませんが、地元の人たちに親しみを持ってもらうため、発電所の所員や協力会社から愛称を募集して、つけられたようです」。関電が福井県で抱える大飯や美浜発電所でも、こうした愛称はなく、全国的にも珍しいという。
だが、このネーミング、なにやら安直さが漂う。1号機の「アトムくん」は原子、2号機の「ウランちゃん」は核燃料が由来であることは明白で、手塚治虫氏の名作「鉄腕アトム」を意識しているのも容易に想像がつく。
3号機の「みらいくん」、4号機の「あかりちゃん」は、明るいイメージを託したのはわかるが、インパクトに欠ける。
4基の愛称は関電のホームページで紹介されているが、一般に浸透しているのかといえば、はなはだ疑問だ。高浜原発の広報担当者ですら「知らなかった」という始末。原子力事業本部の勤務経験が長い社員も「愛称があるとは聞いていましたが、現場で使ったことはないですね」と語る。
愛称はさておき、プラントをきちんと識別することは、発電所ではきわめて重要だ。
高浜原発の敷地内では、1号機と2号機、3号機と4号機がそれぞれ隣接し、「経験の浅い作業員が、自分がどのプラントにいるのかわからなくなったり、プラントを間違えて機器を操作して事故を引き起こしては大変」(担当者)だからだ。
このため、関電は1号機は白、2号機は黄、3号機は青、4号機はピンクと、プラントごとに機器、ドア、壁、床面などを色分け。作業員は自分がどのプラントにいるかが一目でわかるようになっている。こうしたプラントの色分けは大飯、美浜原発でも導入されている。
東京電力福島第1原発事故を踏まえ、関電は原発の安全対策に中長期で2855億円超を投じる計画で、各原発で防潮堤や、重大事故時の現場拠点となる免震事務棟の設置などを急いでいる。
大規模投資をかけた対策に着手する一方、現場では色で見分けるという、アナログながら基本的な安全に細かく気配りしているのだ。
関電は大飯原発の2基と同様に津波リスクが低いとされ、新規制基準案で火災対策に必要とされる難燃性ケーブルを備えた高浜原発3、4号機で、次の再稼働を目指す。しかし、現実は決して明るいものではない。
原発の安全を審査する規制委事務局の原子力規制庁は、人材不足で審査作業に最大3チームしか割けず、審査日数も規制委の田中俊一委員長が「申請を受けてから、原発1基に半年から1年」との見方を示している。
関電は5月から家庭向けの電気料金を平均9・75%値上げする。ただし、この値上げは高浜の2基の再稼働が前提。基準不適合で、高浜原発が再稼働できず、大飯原発が9月の定期検査で停止した後に止まったままともなれば、冬の電力不足、料金の再値上げといった実態も起こりうる。
「効率的な審査をお願いしたい」と規制委への意見を述べた関電の八木誠社長。その内心は「みらいくん」と「あかりちゃん」が明かりをともしてくれることを熱望しているに違いない。(宇野貴文)