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「JINS PC」大ヒットの理由 “度なし”が決め手に
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「JINSPC」は発売から約1年半で200万本を売る大ヒット商品になった=東京都渋谷区のJINS原宿店 パソコンやテレビ、スマートフォン(高機能携帯電話)の青色光「ブルーライト」から目を守り、疲労感を和らげる-。低価格の眼鏡チェーン「JINS(じんず)」を展開するジェイアイエヌが開発し、累計2百万本を売る大ヒット商品になった「JINS PC」は、ふだん眼鏡をかけない人にも需要を広げた新ジャンルの「機能性アイウエア」だ。
「原因はブルーライトではないか」。JINS PCの開発は、創業者の田中仁社長が、自らの目の疲れを相談した大学病院の医師の診断がきっかけだった。
田中社長は、1日にパソコンやスマホに向かう時間が長い。疲れ目の原因がブルーライトならば、その光を遮る眼鏡をつくれば負担を軽減できるはず。こうした仮説の下、平成22年夏に開発は始まった。
マーケティング室リーダーの池川志帆さんは「ブルーライトとは何かの研究から始めた」と、手探りの開発だったことを明かす。
ブルーライトは朝の陽光に含まれる波長と同じで、目に見える光線の中では最もエネルギーが強く、身体を目覚めさせる効果があるとされ、「光そのものが悪いわけではない」(池川さん)。
ただ、パソコンやテレビ、スマホなどの液晶画面を通じて発せられるブルーライトはブラウン管の約4倍あり、長時間接するため、目への負担は小さくない。
同社が最初に取り組んだのは、レンズ開発だ。ブルーライトを遮るのに手っ取り早いのは、濃い色のサングラスだが、「職場など室内空間でサングラスをかけるのは違和感があり、文字も見にくくなる」(同)
そこで、ブルーライトを最大50%カットする性能を持ちながらも、なるべく色の薄いレンズを試行錯誤しながら開発した。実験は、日本マイクロソフトの協力を得て、実際のオフィスでの仕事を通じて行った。
同社マーケティング室によれば、実験の結果、ブルーライトをカットする眼鏡をかけた人は、「目の疲れが抑えられる顕著な結果が出た」(中島英(え)摩(ま)さん)という。共同で実験に参加した眼科医らも、目の乾きや痛み、肩こりなどの改善効果を確認し、商品化へとアクセルを踏み込んだ。
次の課題は、ふだん眼鏡をかけない人でも苦にならない商品にすることだった。
同社のヒット商品で超軽量の「Air frame(エア・フレーム)」をベースに、重さをレンズ込みで約13グラムに抑えた。耳の部分を自由に曲げられる素材にし、かけ心地を自分で調整できるようにするなど細部にもこだわった。
より軽量のものにするため、縁なしタイプも試したが、デザイン面で評判が悪く、採用を断念。JINSで最も人気あるフレームデザインにカラフルな16種類の色を用意し、ファッション性を高めた。
販売戦略も練りに練った。眼鏡を買うときは、店で時間をかけてレンズとフレームを選び、さらに加工のために何日かして来店しなければいけない。だが、それでは、「眼鏡を利用しない人は来店してくれない」(池川さん)。
そこで、最初は、眼鏡をかけない人にターゲットを絞り込み、度なしのパッケージ商品に限定した。価格を3990円に統一し、手に取ってそのままレジで買える気軽さを売りにした。
発売は、開発開始から約1年後の23年9月末。インターネットのブログを書いているIT業界のブロガーに情報発信してもらうと、ネット上で一気に評判が広がった。半年後には月間販売が数万本規模に達し、現在は120種ものパッケージ商品加え、度付きレンズや子供用も品ぞろえ。今年4月には累計販売が2百万本になり、大手企業が福利厚生で一括購入するケースも出てきた。
同社は、「JINS PCのヒットが大きな要因のひとつ」(中島さん)になり、25年8月期の業績予想を2度も上方修正した。
日本人で疲れ目に悩む人は、2千万人との試算もある。2百万本のヒットも、開拓できた市場としては「まだ10分の1程度」(池川さん)。成功を励みに、同社は新たな機能性アイウエアの開発に挑む。(池誠二郎)