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自然派貫くサラヤ 本当に優しい商品づくりとは何か

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

自然派貫くサラヤ 本当に優しい商品づくりとは何か

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ウガンダの子供たちに、簡易手洗い設備でせっけんを使用した手洗いを教える更谷社長=今年2月(同社提供)  公共施設やオフィスの洗面所にある緑色の薬用せっけん液、台所用ヤシノミ洗剤で知られる衛生・健康関連メーカー、サラヤ(大阪市東住吉区)。「人間と自然との共生」を創業理念として、植物由来の原料から商品開発、ほとんどの商品パッケージに「自然派のサラヤ」と銘打つ。植物原料をめぐる環境問題にも直面したが、創業者の更家章太氏(現顧問)から受け継いだ理念をかたくなに守り、「消費者と環境に本当に優しい商品づくりとは何か」を常に問い続けている。

 不買運動の危機

 “難問”は平成16年、突然に持ち上がった。

 「アブラヤシ(ヤシノミ洗剤の原材料)農園の拡大が、アジアのゾウの生存を脅かしている」。あるテレビ局がこんなドキュメンタリー番組を企画し、サラヤ首脳の出演を求めたのだ。

 「地球に優しいと信じていた商品の原材料が生まれるところで、こんなことが起こっていようとは…」

 章太氏の長男で2代目の更家悠介社長は、当時の衝撃を著書「世界で一番小さな象が教えてくれたこと」でこう振り返っている。

 迷ったが、最終的に出演し、自らの不明をわびた。

 ヤシノミ洗剤は、石油系の合成洗剤より分解されやすく、環境への影響も少ないことから、同社は「手肌と地球に優しい」というキャッチフレーズをつけて販売してきた。しかし、「地球に優しい」という視点が、原料調達まで及ばず、テレビ番組では、その矛盾を指摘されたのだ。

 「ゾウがかわいそう」「原料を変えるべきだ」-。

 テレビ番組を見た視聴者からは抗議が殺到し、不買運動にもつながりかねない消費者の誤解と反発に見舞われた。

 企業責任を果たすには…

 サラヤには、微生物に分解されやすく、環境に与える影響が小さい洗剤として長年、ヤシノミ洗剤を販売してきた自負があった。

 このため、環境破壊の実態を把握しようと、テレビ番組で取り上げられたボルネオ島の熱帯雨林の調査に乗り出した。

 その結果、乱開発の実態が明らかになるとともに、アブラヤシから採取するパーム油は、現地農家の貴重な収入源であり、世界の食用油脂の安定供給を図る上で不可欠な食材であることも分かった。

 同社は「一企業がパーム油を使わないだけでは、この問題は解決できない」と判断し、ヤシノミ洗剤シリーズ売上高の1%をボルネオの熱帯雨林保全活動のため環境保護団体「ボルネオ保全トラスト」に寄付するようになった。

 また、ボルネオ調査を通じて、非政府組織(NGO)や農園経営者、企業経営者らでつくる非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)の存在も知った。

 RSPOは、世界自然保護基金(WWF)などが参画して16年に発足し、サラヤも同年に加盟した。認証パーム油を使った洗濯用せっけん「ハッピーエレファント洗たくパウダー」も昨年発売した。

 新ビジネスも

 サラヤは22年、アフリカ東部・ウガンダで国連児童基金(ユニセフ)が展開する手洗い普及活動「100万人の手洗いプロジェクト」の支援に乗り出した。

 戦後の日本で、公共施設用の液体せっけんとポンプ容器を開発し、赤痢などの感染症対策に努めた同社。ウガンダでは、5歳未満の子供たちの死亡率が1割弱にも達することから、ユニセフの活動を27年まで支援する。

 だが、同社は社会貢献だけではなく、低所得者層向けに低価格の商品を販売する「BOPビジネス」も視野に入れる。

 プロジェクトを担当する代島裕世(だいしま・ひろつぐ)マーケティング本部長は、現地を訪れるなかで有望なビジネスの芽を見つけた。

 ウガンダの病院や保健所にはアルコール手指消毒剤がないにもかかわらず、街ではアルコール度数が40度もある蒸留酒が売られていた。

 代島さんは「アルコールを40度に蒸留する技術があれば、消毒用アルコールの70~80度なんてすぐにできる」と説明する。

 昨年1月からは、国際協力機構(JICA)の援助を得て、貧困層が利用する2つの公立病院で手指消毒剤を無償配布。妊産婦の出産前後の感染症である産褥(さんじょく)熱を未然に防ぐなどの成果も出てきた。

 同社は、インドの砂糖製造企業と協業し、7月からサトウキビを原料としたアルコール手指消毒剤を現地生産する予定だ。

 「人間と自然との共生」にこだわった同社のものづくりは今、苦難を乗り越えて新ビジネスをも生み出そうとしている。(石川有紀)

◇会社データ◇

本社=大阪市東住吉区湯里2-2-8

創業=昭和27年

事業内容=家庭用・業務用洗剤、消毒剤、うがい薬、健康食品などの製造販売

資本金=4500万円

売上高=236億円(平成24年10月期)

従業員数=1515人(24年10月末現在)

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