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「い・ろ・は・す」ヒットの裏側 見えるエコ、ボトルも知恵も“絞る”

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「い・ろ・は・す」ヒットの裏側 見えるエコ、ボトルも知恵も“絞る”

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「い・ろ・は・す」の開発に携わったプロジェクトチーム。左から順に、松岡建之さん、福江晋二さん、小林麻美さん  南アルプス、富士山…。「採水地をアピールした商品は各社が販売していた。後発が同じことをやっても勝ち目がないのは分かっていた」。日本コカ・コーラのマーケティング本部バイスプレジデントの福江晋二さんは、ミネラルウオーター開発に着手した当時を振り返る。

 発売1年前の平成20年5月、研究開発、製造、営業部門などから約30人を集め、チームを立ち上げた。ヒットにつながる商品開発の糸口を探ろうと、市場分析を行ったたところ、ある興味深い調査結果が出た。それは、「ミネラルウオーターをよく飲む人に、環境活動への興味を持っている人が多い」ということだった。

 「これは使える」(福江さん)。「環境」をキーワードにした同社のミネラルウオーター開発が動き出した。

 俎上に上ったのが、研究開発部門が研究を続けてきた軽量ボトル。「この技術を活用すれば、ライバル商品よりも資源を節約できる」。さらに、「簡単に潰せる軽量ボトル」にすることで利便性が増し、ゴミの量も減らせる。

 軽量ボトルは、高い強度との両立が最大の課題だった。

 出荷後の物流過程や購入後の持ち運びに耐えられる強度に目は行きがちだが、同社によると、ボトルは製造工程で高速で運ばれるので、高い耐久性が求められるという。このため、当初は、「工場側に『簡単に潰せる超軽量のボトルは生産できるわけない』と反発された」(技術・サプライチェーン本部の松岡建之マネジャー)という。

 そこで考え出されたのが、五角形や六角形のくぼみを組み合わせる「多角形リブ構造」だった。

 長年のボトル軽量化の取り組みで培われた技術で、横から強い力を加えても中の水が飛び出さず、縦方向の力にも耐えられるのが特長だ。工場の生産ラインで耐久実験を繰り返し、従来は20・5グラムあった555ミリリットルのボトルの重さを12グラムまで軽くすることに成功。軽量化によって、薄さも実現し、「紙くずのようにつぶせるボトルが完成した」(松岡さん)。

 開発がスタートして約半年後、全国の清涼飲料の卸業者を集めた発表会を開き、新商品のミネラルウオーターを披露した。

 発表会前日の夜、開発リーダーの福江さんは、ボトルをタオルのように“絞る”潰し方を何度も練習した。発表会の壇上で、空のペットボトルを手で軽く絞ってみせると、会場からは大きな歓声が上がった。期待以上の反応だった。

 「絞るという行為で、“エコ”を視覚化することに成功した。ようやく自信が持てた」。福江さんはヒットを実感した。

 商品名は、物事の始まりを表す日本古来の言葉「いろは」と、環境にいいことを意味する「LOHAS(ロハス)」を合わせ、「い・ろ・は・す」にした。「後発なので圧倒的に印象に残る名前にしたかった」と、マーケティング本部の小林麻美マネジャーは話す。

 「ボトルを絞る」ことは、視覚だけでなく、聴覚、触覚にも訴える大きなインパクトを消費者に与えた。それを裏付けるように、販売数は21年5月の発売後、わずか3カ月で1億本を突破した。

 飲料業界では、出足では爆発的に売れても、その後に売れ行きが失速してしまうケースが多い。だが、「い・ろ・は・す」の販売ペースは落ちなかった。

 600ミリリットル以下のミネラルウオーター市場でのシェアは20年の5%から、24年には約50%に急拡大し、トップブランドの座を勝ち取った。

 22年7月には、愛媛県産の温州みかんエキスを添加した「い・ろ・は・す みかん」を発売。今年5月には、「みかん」に1555ミリリットルボトルを加えた。大きくしても、「絞れるボトル」は変わらない。

 競合商品の追随もあり、超軽量ボトルの目新しさは徐々に薄れつつある。ただ、開発リーダーの福江さんは「常に一歩先を進みたい」として、今も、次々と新たなアイデアに取り組んでいる。(西村利也)

 い・ろ・は・す(ILOHAS) 「手で簡単に絞れる(つぶせる)軽量ボトル」という新たな価値で、発売から3年半で約20億本を売り上げた。植物由来の素材を一部使った「プラントボトル」や、温州みかんエキス入りの「みかん」などの投入もあり、小型ペットボトル市場のシェアは5割を超える。

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