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秘境へコーヒー豆買い付け 地域貢献はブランド力の根幹
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険しい山道を麻袋を担いだ農民が次々と集まってくる。インドネシア・スラウェシ島中部、トラジャ県の山岳地帯、標高約1600メートルに位置するペランギアン地区の集落の一角に、キーコーヒーの合弁会社トアルコ・ジャヤが、周辺の協力生産農家からコーヒー豆を買い付ける「集買所」がある。
「これが一番お金になる」
そう話すのは集落のダニエル・スロ村長。米や果物も作っているが、トアルコ・ジャヤに売るコーヒー豆が貴重な現金収入になっている。
同地区では85軒の協力生産農家が登録されており、週1回のペースで買い付けている。直営のパダマラン農場の周辺の山々には、こうした集買所がペランギアン含め3カ所ある。
一方、トラジャの中心市街地ランテパオのトアルコ・ジャヤオフィスには、仲買人からコーヒー豆を大量に買い付ける最大の集買所が隣接する。仲買人は現在、「実績のある人が約200人くらいおり、トアルコ・ジャヤがライセンスを与えている」(渡辺隆生産担当取締役)。「収穫のピーク時にはトラックが列をなして並ぶ」ほどだ。
トアルコ・ジャヤが輸出する「トアルコ トラジャ」ブランドのコーヒー豆は年間約500トン。このうちパダマラン農場で収穫されるのは年間約100トンだけ。残りの8割、約400トンは、集買所で協力生産農家や仲買人から買い付けている。
農家や仲買人は、果肉をはがし、乾燥させた脱穀前の豆を集買所に持ち込むが、トアルコ・ジャヤがそのまま買うわけではない。検査員が割れや変色など欠点豆をチェックするほか、ランテパオの集買所では焙煎して味をみる「カップテスト」も行う。「欠点豆が5%未満なら買い取るが、それ以上であれば、再度選別しチャレンジしてもらう」(同)。
買い取った豆はパダマラン農場に運び、同農場で収穫された豆と同様の工程で乾燥・脱穀後、一粒ごと手選別によるチェックを行う。カップテストを経て、合格した豆だけが輸出される。
農場の整備と同様、こうした集買のシステムを築くのも長い年月を要した。協力生産農家には、収穫の仕方や水洗、乾燥の方法を、「パダマラン農場をモデルにして指導した」(同)。地域社会にコーヒー栽培を広めるため、当初は持ち込まれた豆を100%買い取った。現在は「合格品を多く持ち込んだ仲買人に記念品を贈るなどし、品質を重視している」。
支援も惜しまなかった。最初にトラジャ地方の開拓に従事した大木久氏(元キーコーヒー会長)が1998年、農園を分断して流れる川にかける橋の費用を私費を投じて建設するなど、地域の生活を支えてきた。今年3月、大木氏が亡くなったことを現地の関係者に伝えると、「涙を流して悲しむ人もいた」(トアルコ・ジャヤの中野正崇副社長)という。
キーコーヒー全体のコーヒー取扱量のうち、トアルコ トラジャは1%に満たないわずかな量だ。だが、この秘境におけるコーヒー生産で、品質を高める取り組みや地域に貢献する姿勢が同社のブランド力の根幹となっている。
山間の集買所に四輪駆動車で買い付けに行くのは、「正直、コスト度外視だ」と渡辺取締役。「しかし、どうしてもこの活動を続ける必要がある」。今後もそれは変わらない。(池誠二郎)