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日本のゲーム業界、インドネシアに熱視線 低コストと市場に魅力
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ジャカルタの高級モール内にあるゲームセンター。ゲーム機は日本から輸入したものとみられ、画面表示は日本語のままだ=上野太郎撮影 日本のゲーム業界がインドネシアに熱い視線を注いでいる。国民の平均年齢が約28歳と若く、国民の所得は増加傾向にあり、市場としての魅力はもちろん、開発拠点として着目する企業も現れた。
ゲーム制作・開発大手のスクウェア・エニックスは、東ジャワ州スラバヤでオンラインゲームやモバイルゲームの開発・運用を行う事業を開始した。5月初めにITコンサルティングやウェブシステム構築の五反田電子商事(東京都品川区)と合弁会社のスクウェア・エニックス・スマイルワークスを設立。社員30人で、当面は日本から注文を受けた開発・運用を請け負い、将来的には東南アジアや日本市場に向けたインドネシア発のゲーム開発を目指す。
ジャカルタを中心とする首都圏では近年、賃金が高騰し、人材の確保も困難になっている中、IT学部を持つ名門のスラバヤ工科大学がありながら、地元に就職の受け皿がないスラバヤを進出先に選んだ。
合弁会社のCEO(最高経営責任者)で五反田電子のCOO(最高執行責任者)を兼務する金丸洋明氏は「ジャカルタと比べ、物価が安く、洪水や渋滞もない」と話す。「インドネシアでは、ファイナルファンタジー(スクウェア・エニックスの人気ゲーム)のコスプレも多いなど、日本のキャラクターの絵をそのまま受け入れてくれる土壌がある」として、コスト面だけでなく、指向性の共通点があることも大きなポイントだと指摘した。
スクウェア・エニックスはこれまで米国や欧州、中国に進出しているが、東南アジアは初めて。日本では、ソーシャルゲームの急拡大や少子化などを背景に、ゲーム開発の人材確保が困難になっており、金丸CEOは「キャラクターの絵を描く人材も、日本では奪い合いの状況。コストも2倍に跳ね上がっている」と現況を説明する。
5月にジャカルタで開かれた日本とインドネシアのゲーム・IT業界のビジネスマッチングイベントには日本のゲーム関連企業など約10社が出展。制作・開発企業は将来の市場としての潜在可能性も見据え、東南アジアへの進出機会を模索している。
人口規模が域内最大で日本のゲームも浸透しているインドネシアでの事業体制を確立し、域内での事業拡大の足掛かりとする方針だ。
東京ゲームショウには昨年、インドネシア企業2社が初出展した。パンゲストゥ観光・創造経済相が来場するなど、インドネシア側の動きも活発化している。代表者が講演した開発会社のアガテ・スタジオの幹部は「インドネシアでも非常に良質なクリエーターをたくさん輩出しているとの評価を受けた」と好感触を得たようだ。
国営アンタラ通信などによると、東京での記者会見で同相は、インドネシアでは日本のゲームを楽しむファンが2000万人以上いることなどを説明。「インドネシア企業が出展したことをきっかけに、将来的には人材交流なども活発化させ、日本からゲーム産業について学んでいきたい」と期待を示した。(インドネシア邦字紙「じゃかるた新聞」編集長 上野太郎)