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夢の自動運転車、期待と迷いが交錯 開発競争加速も法整備に課題

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夢の自動運転車、期待と迷いが交錯 開発競争加速も法整備に課題

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自動運転車をめぐる各社の動き  SFの世界の「夢の技術」とされてきた自動運転車の実用化が現実味を帯びてきた。日産自動車が8月27日、行き先を設定するだけでドライバーが運転をしなくても目的地までたどり着ける自動運転車の開発を発表。世界の自動車メーカーもこぞって参入を表明し、開発競争は過熱しそうだ。ただ、法律の整備など残された課題も多く、実用化は一筋縄ではいきそうもない。

 位置づけ不透明

 「(現行の)道路運送車両法は、自動運転は想定していなかった。現制度における位置づけを理解しておいた方がよい」。

 先月28日の国土交通省の有識者検討会で、委員の一人はこう述べた。

 検討会では、高速道路での運転をIT(情報技術)で側面支援する「オートパイロットシステム」(自動運転システム)実現に向け、2030年代までの計画の中間案がまとめられた。車と道路がコミュニケーションを取りながら自動走行を実現させる案で「世界初となる画期的な内容」(国交省道路局)だが、同時に法整備に課題があることも浮き彫りとなった。

 これまでにも検討会では「機械と人、どちらに責任を負わせるかが問題」「動物の飛び出しなど突発事象に対応できない。ドライバーと同レベルの安全性でよいのか」などと、普及に向けた課題を口にする声が相次いだ。

 車の事故は車の不具合が原因でない限り、自動車各社に責任はなく、主にドライバーの問題とされてきた。ただ、自動運転の場合、責任は自動車メーカーや、システムを開発したソフトウエアメーカーが負うことも想定される。

 自動運転車の実現に向けた最大のテーマともいえ、自動運転車の開発で先行する米国では、米グーグルが17年の実用化を目指していることもあって、運転免許証や自動車保険の在り方についても議論がすでに始まっている。

 一方で、「夢の車」ともいわれる自動運転車の実用化は、自動車各社や警察庁の“悲願”でもある「事故激減」の可能性を秘める。多くの事故が、ドライバーの判断ミスや不注意などの人為ミスが原因となっているためだ。

 米で実証実験活発

 世界を見渡せば、この夢の車への開発競争は勢いを増すばかりで、米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーター、独アウディ、独ダイムラーなどもこぞって参入を表明。特にITと軍事技術で先行する米国で実証実験を始める動きが活発になっている。

 米国で市街地走行の実験に成功した日産の自動運転車は、21個のセンサーと5台のカメラで最大200メートル先まで全方位を監視。人や車のほか、車線や標識も読み取りながら運転手の操作なしで走行ができる。アンディ・パーマー副社長は「車の安全性を革新的なところまで持っていく」と自信をみせた。

 また、自動運転車は渋滞緩和や高齢者らの運転支援につながることも期待されるなど、「課題は多いが、その分のメリットも多い」(自動車メーカー大手幹部)というのが業界の共通した見方になりつつある。

 ただ、国内では自動運転車に対するユーザーの関心はまだまだ薄い。デロイトトーマツコンサルティングの周磊(しゅうらい)シニアマネジャーは「メーカーの技術力、インフラ整備に加え、消費者のニーズの高まりも必要だ」と話す。運転に自信がない高齢者、新しい価値の「移動手段」として若者を取り込むことが、普及の鍵を握りそうだ。

 メーカー悩ます「自己否定」のジレンマ

 自動車メーカーにも迷いがある。

 ある国内メーカー幹部は「技術ができたからといって商品化するわけではない。運転する楽しさを競い商品化している自動車メーカーにとって自動運転車は自己否定になる」と打ち明ける。

 事実、日産を除く国内大手は、自動運転車に対する関心は高いとはいえない。トヨタ自動車は、今年1月に試作車を発表したが、今のところ市販化の計画はない。1台数千万円とみられる高い製造コストの削減も大きな課題だ。

 政府が成長戦略で自動運転技術の開発を掲げたことを受け、経済産業省が来年度予算案の概算要求に予算10億円を盛り込むなど、国が自動運転車の開発を後押しする構えをみせているが、先行きは予断を許さない。

 衝突防止システムや、ブレーキ誤発進機能などの安全技術は、自動運転車にも応用できるもので、この分野での技術力は、日米欧で拮抗(きっこう)している。

 こうした技術力の維持や向上につなげるためにも、「自動運転車にもっと力を入れるべきだ」との声は根強い。(飯田耕司、古川有希)

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