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ドコモ参戦でiPhone戦略探り合い 先行2社、セット割などで守り固める

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ドコモ参戦でiPhone戦略探り合い 先行2社、セット割などで守り固める

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国内携帯大手3社のiPhone販売戦略  米アップルは10日(現地時間)、スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」の新モデル「5s」と廉価版「5c」を発表した。5sは、高い処理能力が売り物で、価格は199ドル(約2万円)から。5cの投入は、伸び悩む新興国市場などの販売強化が狙いで、価格を2年契約で99ドルからと抑えた。日米など9カ国で20日に発売する。日本ではソフトバンクモバイルとKDDI(au)に加え、新たにNTTドコモに供給する。

 守り固める先行2社

 「お客さまはドコモの高品質なネットワーク上でアイフォーンの素晴らしい世界をお楽しみいただけると確信している」

 ドコモの加藤薫社長は声明でこうコメント。5sと5cを20日に発売すると正式発表した。5cのみ13日から予約受け付けを始める。ソフトバンク、KDDIを含む3社は、端末価格や通信料金などを同日までに発表する見通しだが、機能や価格の異なる2つのモデルを抱え、販売戦略作りは難航しているようだ。

 国内携帯電話大手3社がそろってアイフォーンを扱うことになり、これまでのような「ドコモ対アイフォーン陣営(ソフトバンクとKDDI)」という構図は崩れることになるからだ。

 それほどドコモは苦戦した。同じ電話番号で他の携帯電話事業者に変更できる番号持ち運び制度(MNP)による3社の転入出数は、ソフトバンクがアイフォーンを発売した2008年7月以来の合計で241万件、KDDIは同様に11年10月から176万件の転入超過。一方、ドコモは08年7月以来、373万件の転出超過を余儀なくされた。MNP制度が導入された06年10月からでは543万人の顧客が2社に流れた。

 MNPでの転出が止まらないとはいえ、シェア47%と依然首位のドコモがアイフォーンを扱うことになり、先行2社は戦々恐々。対抗策の検討に余念がないが、MNPで獲得した顧客が再びドコモに戻らないよう「守りを固める」(KDDI幹部)ことが最優先となりそうだ。

 ソフトバンクは割引期間(KDDIは2年間)や月間データ通信量7ギガバイトという制限がないアイフォーン用パケット料金の割安感を前面に押し出してドコモに対抗したい考えだ。MNPの獲得合戦も激化が予想されることから、MNP利用者向けキャッシュバックキャンペーンを積み増す可能性もある。

 KDDIは固定通信と携帯のセット割引「スマートバリュー」を強化しそうだ。グループ一体営業が禁止されているドコモでは提供できないサービスで、KDDIの最大の強みとなる。CATV各社など販路拡大やメニューの拡充もありそうだ。

 新型価格は不透明

 ソフトバンク、KDDIともアイフォーン利用者を囲い込むため、新モデルへの変更を条件に旧モデルを買い取る下取り制度を実施している。アイフォーン4S(記憶容量64ギガバイト)の下取り価格は、両社とも1万8000円だが、上積みしてMNPによる転入者の再転出を防ぎたい考えだ。

 ソフトバンクは、昨年の「5」販売時に4Sの下取り価格を2万円に引き上げた経緯もあり、再び2万円前後になる可能性が高い。

 ただ新モデルの価格設定は不透明だ。5の後継機種にあたる5sは、現行の5で実施している「実質0円」での販売は難しそうだ。月々の通信料金から端末価格を割り引く実質0円販売は、廉価版の5cで実施される可能性が高い。「他社の動向にもよるが、5sの価格設定は難しい」(ソフトバンク幹部)。

 競争力左右する独自サービス

 三つどもえの競争のなかで、端末価格や通信料金は同水準に収斂(しゅうれん)することが予想される。競争力を左右するのは、通信速度やつながりやすさ、独自サービス、周辺機器の差になりそうだ。

 高速データ通信サービス「LTE」は、各社とも既存の3GサービスからLTEへの移行に苦労している。

 限られた周波数のなかでLTEへの移行促進と毎秒100メガビット水準の高速化競争が優劣を分けることになりそうだ。

 アップルは端末から、基本ソフト、アプリ(実行ソフト)、サービス基盤までアイフォーンで垂直統合ビジネスを展開。通信事業者の独自サービスを基本的に排除してきた。

 しかし、最近はKDDIの音楽配信サービスのようにアプリを介した独自サービスの提供も認めるようになってきた。

 ドコモもショップサイト「dマーケット」など独自サービス資産をアイフォーン上でどこまで提供できるか注目される。(芳賀由明、ワシントン 柿内公輔)

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