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銅の受給逼迫、一貫生産で打開 PPCのチリ鉱山開発プロジェクト

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銅の受給逼迫、一貫生産で打開 PPCのチリ鉱山開発プロジェクト

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世界の銅地金受給  中国など新興国の経済発展に伴い世界的に銅の需要が増加を続けている。製錬各社は増産で対応しているものの、需給逼迫(ひっぱく)状況は解消されない。在庫は低水準で推移し、価格も高値で安定する。製錬各社は市場への安定供給責任を果たすため、銅鉱石の製錬にとどまらず資源開発にまで乗り出している。JX日鉱日石金属と三井金属鉱業の共同出資会社で日本最大手のパンパシフィック・カッパー(PPC、東京都千代田区)はチリのカセロネス鉱山に出資し資源確保にも取り組み、銅地金生産までの一貫メーカーへ変貌しようとしている。

 新興国発展で需要増

 「銅のファンダメンタルズ(基礎的条件)は悪くない。エレクトロニクスがあるところに必ず銅が使われるからだ」

 PPCの西山佳宏取締役常務執行役員はこう指摘する。

 電導率の高い銅は、電化が止まらない限り、あらゆる製品に使われる。分かりやすい例が自動車だ。ガソリン車は1トン当たり10キロ程度の銅が使われるが、ハイブリッド車(HV)になると20~30キロに増え、電気自動車(EV)では100キロ程度になるという。

 地球環境対応から原単位が薄くなったり細くなったりしても、それ以上に、銅が使われる製品が増えているということだ。

 経済発展とともに中国など新興国で銅需要が伸び、それに伴って価格も上昇してきた。10年前には1トン当たり2000ドル前後だったが、最近は7000ドル前後で推移している。

 PPCの大井滋取締役常務執行役員は「本来ならそんなに高くなれば、銅が使われなくなることも考えられる。しかし、新興国のキャッチアップで、消費はグングン伸びている。少々値段が上がっても、それに代わるものがなかなか出てこないからだ」と説明する。

 崩れる還元制度

 代替品が現れないから銅の奪い合いは続く。特に中国。伸び率こそ鈍化するものの、2013年には世界の銅地金消費量(2059万トン)のうち、4割超に当たる880万トンを消費する。東南アジアの消費量はまだ100万トンに満たないが、15年にかけての伸び率は12%を超える。大きなマーケットになることは間違いなく、銅の安定調達先の確保が課題となる。

 こうした状況は変わりそうになく、今年以降も世界の銅需要は年率3~4%で拡大、生産も4~5%の伸びが見込まれる。13年以降は生産が消費を上回るものの、在庫は低水準のまま推移するとPPCは予測する。世界のエネルギー関連のコンサルタント企業などの予測もほぼ一致する。

 銅の消費大国・中国は、生産でも世界の製錬各社の注目を集める。13~15年に108万トンの増産が見込まれているからだ。世界でも群を抜いた増産規模となるが、それでも消費に追いつかないのが実情だ。

 銅消費の増加は、鉱山と製錬所の関係にも大きな影響を与える。鉱山から採掘された銅鉱石は、製錬所で精製されないとその価値を発揮しない。「その意味で、鉱山と製錬所はかつて運命共同体だった」(大井氏)。このため、銅の価格上昇分のうちの一定程度は製錬所に還元されていた。

 しかし、06年から「プライスパーティシペーション」と呼ばれる還元分がなくなってしまった。中国やインドの需要は今世紀に入ってから増加の一途をたどる。それまで日本の製錬所が鉱山と相対していたが、中国やインドが鉱山側に都合のいい価格で取引量を増やしたことで、還元制度が崩れてしまった。

 悲願「日の丸鉱山」安定確保に貢献

 こんな現状を打開するため、PPCは来年、南米チリ北部のアルゼンチンとの国境付近にあるカセロネス鉱山を正式に開山する。「これこそが、われわれにとっては希望の星」と西山氏は強調する。

 PPCに出資する日鉱日石金属は1905年に操業を開始。当時は国内に鉱山を持ち、銅の生産から製錬までを一貫して手がけていた。60~70年代にかけては海外でも鉱山を持っていたが、その後は製錬所としての立場にとどまっていた。

 それだけにカセロネス鉱山にかける期待は大きい。PPCのほか、三井物産も出資しているが、純粋な“日の丸鉱山”であることに変わりない。90年代から他のチリ鉱山に少額出資してきたが、メジャー出資をするカセロネス鉱山は「悲願と言ってもいい」(大井氏)存在。生産から製錬までを一気通貫で行えば、鉱山側からの還元がないことを気にする必要もなくなってくる。

 2015年には年間15万トン超の生産を見込む。130万トン超に上る日本の銅精鉱の総輸入量の1割超に相当し、日本の銅資源の安定確保にも大きく貢献することになる。

 世界の銅需要が新興国を中心に大きく増える中、銅鉱山からの一貫生産でPPCがその存在感を増すことができるか。他の製錬会社からの注目度も高い。(兼松康)

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