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パナソニック、東京五輪は天の恵みか? 最上位スポンサーの意外な“憂鬱”

ニュースカテゴリ:企業の電機

パナソニック、東京五輪は天の恵みか? 最上位スポンサーの意外な“憂鬱”

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パナソニックがロンドン五輪に納入した放送用の3Dカメラ(同社提供)  2020(平成32)年夏季五輪の東京開催が決まったことで、国内では莫大(ばくだい)な経済効果が期待されている。とくに、家電大手のパナソニックは日本企業で唯一、五輪の「最上位(TOP)スポンサー」を長年にわたって務めてきた。関係者からは「AV(音響・映像)機器が不振の中、反転攻勢の“起爆剤”になる」(関係者)との声も上がるが、薄型テレビの需要が落ち込んだままで、巨額のスポンサー費用に見合う効果はあるのだろうか…。

 東京五輪の効果は他国開催の2倍

 「東京五輪が、テレビ買い替えのタイミングになると信じている」

 東京五輪が決まった翌日の16日。あるパナソニック社員は顔をほころばせた。

 テレビの買い替えは通常、購入してから10年程度といわれる。

 平成23年3月の家電エコポイント制度終了、同年7月の地上デジタル放送移行前の駆け込み需要時にテレビを購入した人が多く、東京五輪が開幕する32年前後には、買い替え需要が高まるとみられる。

 パナソニックは、1988年のカルガリー五輪以降、AV機器の分野で国際オリンピック委員会(IOC)と「最上位スポンサー」の契約を結んでいる。最上位スポンサーは1分野につき1社と定められており、五輪ロゴを使ったテレビCMを独占的に世界中で流せるほか、AV機器を主催者に納入する優先交渉権を持つ。

 12年のロンドン五輪では、放送用の3D(3次元)カメラなどをオリンピック放送機構に納入し、五輪史上初めて、3D映像が全世界に配信された。

 会場や周辺施設には、2500台以上のパナソニック製監視カメラも設置された。

 同社は、16年開催のリオデジャネイロ五輪まで、IOCとスポンサー契約を結んでいる。東京五輪でも、契約できるよう水面下の交渉に臨んでいるとみられ、パナソニック幹部は「日本国内で開催される五輪であれば、宣伝効果は、他国開催の2倍とみていい。まさに天の恵みだ」と期待を寄せる。

 「スポンサー効果」に疑問も

 期待は膨らむばかりだが、唯一の懸念は、最上位スポンサーを勝ち取るために必要な巨額の契約金だ。

 これまでの五輪1回分(夏季と冬季の合計)の契約金は、70~120億円程度ともいわれる。

 「パナソニックが業績不振の中、多額の契約金を支払ってまで最上位スポンサーになる意味があるのか」

 関西のあるメーカー幹部は疑問を投げかける。

 実際、過去の五輪スポンサー効果について、同社は「目に見えない宣伝効果」「知名度アップに貢献した」などと説明しているが、具体的に収益をどう押し上げたのかは不明という。

 とはいえ、過去の夏季五輪では、薄型テレビの市場拡大期と重なったアテネ(04年)、北京(08年)の両大会では、パナ製品も爆発的に売れた。

 ただ、ロンドン五輪(12年)では、10~30代を中心にスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末でのスポーツ観戦者が急増し、売れ行きは思うように伸びず、3Dテレビも期待外れだった。

 東京五輪は今から7年後。インターネット経由の観戦がさらに拡大すれば、テレビで五輪を観戦する“文化”そのものが崩れてしまう恐れもある。

 関西の大手家電量販店の男性社員は、冷めている。

 「東京五輪が、テレビの売り上げに直結するなんて思ってない」

 五輪が改革を遅らせる?

 「五輪を意識しすぎて、せっかくの改革が狂ってしまうのでは」。あるパナソニックOBはこう危惧する。

 津賀一宏社長は、自動車や住宅関連事業を「収益の柱」に成長させ、平成30年にそれぞれ2兆円規模の売上高を目指す。“脱家電路線”は明確だ。

 しかし、一方で同社はリオ五輪を見据え、10月上旬からフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」対応の液晶テレビを日米欧で順次発売する。

 東京五輪では、さらに高精細の「8K」放送が計画されており、パナソニックも8K対応の商品開発を視野に入れる。

 ただ、薄型テレビは高精細化してもすぐに低価格化が進み、パナソニックの収益を悪化させる恐れもある。

 前述のOBは「もし東京五輪がなければ、テレビ事業は大幅に縮小されるはずだった。舞い上がって、地道な改革の道筋を見失わなければいいが…」と苦言を呈する。

 東京五輪は、自国開催とあって、効果は大きいとみられるが、その分、投資金額も巨額になるのは間違いない。

 業績不振のパナソニックにとって、東京五輪は吉と出るか、凶と出るか…。

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