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コマツ、ICT建機で差別化 米キャタピラーと主導権争い

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コマツ、ICT建機で差別化 米キャタピラーと主導権争い

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コマツとキャタピラーの業績  建設機械メーカーのコマツが自動化で作業の精度と効率を高める「ICT(情報通信技術)建機」の展開を加速している。世界で初めてブルドーザーのブレード(排土板)を全自動で制御する機能を搭載した製品のラインアップを拡大。ガイド機能を持つ油圧ショベルも今年度後半に販売する。

 建機メーカーは海外で新興国の景気減速で苦戦。国内でも今後、東日本大震災の復興需要が激減するとみられる。ライバルの米キャタピラーも自動制御のブルドーザーやショベルを投入しており、成長が期待される新分野をめぐって競争が激しくなっている。

 9月下旬、静岡県伊豆市の山間部にあるコマツの体験・研修施設「コマツテクノセンタ」で行われたデモンストレーション。中型のICTブルドーザー「D61PXi-23」はブレードを地面に降ろした後、直線30メートルほどの距離を軽快に進んでいく。その間、ブレードは上下に動き、表面の土を削って平らにしていくが、運転席に座るオペレーターの右手はブレードの操作レバーには全く触れていない。

 「自動化」から進化

 D61PXi-23は、全地球衛星ナビゲーションシステム(GNSS)などを使って車体の位置や姿勢、ブレードの角度などを把握。土砂がブレードにたまり車体がスリップするのを避けるためブレードを動かす機能を搭載するなど、従来の「自動化建機」から大きく進化させた。

 建機マーケティング本部の山本義実主査は「作業の負荷に応じて自動でブレードを制御し、粗(あら)掘削から整地仕上げまでシームレスで行える」と胸を張る。

 これまでブルドーザーを運転し、ブレードをうまく操作するにはオペレーターの熟練した技術が必要だった。さらに、施工では人間が現場に入って、削った場所を図面通りか何度も確認しながら作業を進めていた。

 これに対し、D61PXi-23は、3次元設計データに基づいて施工。自動でブレードが動いて土を削り、図面通りの滑らかな表面に仕上げてくれる。この結果、作業効率は従来と比べて4割以上改善。燃料や人件費などのコスト削減につながるうえ、現場に人が立ち入る機会が減ることで安全性も向上する。

 コマツは4月に発表した中期経営計画で2015年度の売上高を2兆1000億~2兆5000億円(12年度は1兆8849億円)、営業利益率を18~20%(同11.2%)に引き上げる目標を掲げた。12年度の売上高が658億ドル(約6兆4400億円)、営業利益率が13.0%と、大きく先行するキャタピラーを追いかける。

 柱になるのが、ICTによって施工を効率化・高精度化する「ICT施工(情報化施工)」。システムなどをトータルで提供することで、従来の建機販売ビジネスからの転換を目指している。ICT事業本部の佐川清和グループ・マネジャーは「施工現場を1つの生産工場と位置付け、効率化していきたい」と意気込む。

 新興国メーカーと差別化でき、価格競争とも一線を画すことができる。国内では国土交通省が情報化施工の普及を後押ししていることも追い風になっている。

 コマツは、D61PXi-23をICT建機の第1弾と位置付け、3次元設計データの活用が進む北米で6月に発売。8月末までの出荷台数が142台に上るなど好調で、日本と欧州への導入を決めた。同時に、ラインアップも広げ、9月からは小型の9~10トンクラスのICTブルドーザーの北米向け生産を開始。油圧ショベルは欧州を手始めに投入する計画だ。

 新興国で需要拡大も

 一方、米キャタピラーは2010年、GNSSや3次元設計データを使いブルドーザーのブレードを自動制御する情報化施工システムを日本市場に投入。昨年6月にはモニターに設計面とバケットの刃先との距離を表示し精度の高い施工を行えるようにする油圧ショベルを発売した。

 建機市場は現在、景気減速や資源価格の下落を背景に、中国や東南アジアなどで販売が低迷。コマツも足元の今年4~6月には、鉱山で使われる大型建機の需要が落ち込み、東南アジアでの建機販売台数が前年同期より約2割減少した。

 国内でも今後、販売を下支えしてきた復興需要が期待できなくなる。日本建設機械工業会の予測でも、14年度の建機出荷額は前年度比2%減の1兆9710億円と、2年ぶりに前年割れとなる見通しだ。

 ICT建機は、従来機より割高で、通信インフラや3次元設計データが必要になるため現時点では、欧米や日本など先進国での販売が中心だ。ただ、将来的には「新興国でも需要は出てくる」(コマツ)見込みで、主導権争いは激しくなりそうだ。(田村龍彦)

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