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NEC、多段式高効率冷却技術 ICT機器の排熱吸収し電力削減

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NEC、多段式高効率冷却技術 ICT機器の排熱吸収し電力削減

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 NECは、データセンターなどに設置されるラックに搭載されているICT(情報通信技術)機器の排熱を効率よく取り除く「多段式高効率冷却技術」を開発した。この新技術をデータセンターに適用することで、データセンターの空調電力を最大50%削減することが可能となる。

 多段式高効率冷却技術は、NECが従来開発してきたICT機器内に搭載して効率的な冷却を実現する相変化冷却技術を、複数のICT機器を搭載するラックに応用した。相変化冷却技術は、冷媒が液体から気体に変化する際に熱エネルギーが移動する性質を利用して冷却する技術で、エネルギー変化量が大きく高効率な冷却が可能になる。

 省スペース運用につながる

 新技術により機器から排出される熱を、拡散する前に回収するとともに、直接屋外へ輸送できるため、サーバールーム内の空調負荷を大幅に削減できる。ラック当たり12キロワットの消費電力の場合、送風電力と冷凍機電力を合計した空調電力を最大50%削減することが可能になる。NECの施設で実験した結果、10台のサーバーを搭載したラック背面から発せられる熱量のうち、約50%を屋外へ熱輸送することを実証した。

 この技術をデータセンターに適用すると、空調の負荷を増大させずに、ラックへ実装するICT機器を大幅に増やすことが可能になる。

 これにより、フロア面積はそのままで、データセンターの処理能力を大幅に向上することができ、省スペースなデータセンター運用につながるという。

 この技術の特徴はまず、受熱部の多段配置により、機器の排熱を漏らさず回収することだ。ラックの最上段から最下段まで、ICT機器が発する排気熱を効率よく吸収して冷媒を気体に変える多段式の吸熱技術を新規に開発。サーバーラック背面に配置した受熱部を多段化することで、ラックに設置されたそれぞれの機器の排熱量に応じた冷却を実現している。

 環境にやさしい冷媒採用

 次に、多段式に適した冷媒の分配・循環により、低コストと高信頼性を確保していることだ。多段化されたラックの各段の吸熱部に発熱量に応じて冷媒を分配し、効率よく循環させる技術を開発。独自の流路設計により、自然循環のみで各段への適正な冷媒供給を実現し、低コストと高信頼性を確保した。

 さらに、環境負荷の低い冷媒を採用している点も見逃せない。オゾン化破壊係数(ODP)が0で、地球温暖化係数(GWP)が従来品(HFC)の2分の1以下の環境にやさしい冷媒を採用。高効率な冷却と低環境負荷を両立した。

 NECは「環境経営行動計画」に基づき、低炭素社会の実現に向けて、製品のエネルギー効率の改善や、業界で初めて40度の環境でも動作を保証するサーバーなどの耐環境機器の製品化・ラインアップを拡充。業界で先駆けた省エネへの取り組みを進めている。

 NECは、新設を計画している「NEC神奈川データセンター」に新技術を採用し、消費電力の大幅な削減を目指す。新冷却については、数年後を目標に、販売も視野に入れている。

 新技術は、2008年度から12年度にNECが参画した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト」の研究成果の一部を活用した。(小島清利)

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