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トヨタを強くした修羅場の4年間 弱点克服、現地に根ざしたクルマづくり

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トヨタを強くした修羅場の4年間 弱点克服、現地に根ざしたクルマづくり

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米国生まれの「アバロン」。昨年4月、国際自動車ショーでの初披露に向け、慎重に搬入された=米ニューヨーク  6月14日。愛知県豊田市で開かれたトヨタ自動車の株主総会。社長の豊田章男は出席した株主に、静かにこう語りかけた。

 「就任以来、多くの困難に直面してきました。そこから学んだことは『持続的に成長する』ことが最も重要ということです。台数の拡大が成長ではないということを痛感しました」

 2008年秋のリーマン・ショック、米国での大規模なリコール(回収・無償修理)問題、そして東日本大震災。平成21年6月の就任以来、豊田にとってこの4年間はまさに修羅場の連続だった。

 リコール問題で豊田とともに米議会の公聴会に出席した北米本部長のジェームス・レンツは「顧客に耳を傾けること、迅速に行動すること、そしていかに透明性を高めるかを学んだ。その後の取り組みで顧客は戻ってきている」と手応えを実感している。

 米国主導で開発した新型セダン

 例えば、昨年4月に米国で発売した新型セダン「アバロン」は、米カリフォルニアのデザイン部門が担当するなど、車両の開発をすべて米国主導で進めた。この現地に根ざしたクルマづくりが受け入れられ、販売は好調に推移しており、今年1~8月の米国全体の販売台数は153万4千台と前年同期に比べ9・6%増加した。

 トヨタ車は品質、価格など合理的な条件ではすぐれているが、内装やスタイルが弱みといわれてきた。しかし、レンツは「それが章男社長によって克服されつつある」と強調する。豊田が「(この4年間は)平時では学べないことを多く学んだ時期だった」と話すように、苦難の連続が前例にこだわらない新たな試みを打ち出す背景となっているのは間違いない。

 北米本部長に初の「米国人」

 「トヨタに30年以上勤めているが、ここ3~4年の変化は大きい」。こう話すレンツ自身も、実はトヨタの歴史の中で初めて北米本部長に就いた米国人だ。修羅場がトヨタを変え、その効果が如実に表れ始めつつある。

 25年3月期連結業績では、本業のもうけを示す営業利益は1兆3208億円と前年度の3・7倍に達し、5年ぶりに1兆円の大台を突破。リコール問題で苦しんだ米国市場も急回復している。

 北米を中心とする先進国市場を担当する「第1トヨタ」を率いる副社長の小沢哲(さとし)は、同部門の役割がトヨタの“屋台骨”を果たすことにあると明言する。新興国市場は事業拡大に向けて大きな投資が必要で、それを支えるのが第1トヨタの使命という。

 1ドル=70円台の円高でも利益を出す

 そのためにも北米、欧州では現地での開発・調達を進め、地域に根ざした体制を目指している。それが持続的な成長の基盤になるというわけだ。

 「再びリーマン・ショックや1ドル=80円を切るような円高になっても利益を出せるようにしたい」。小沢の目標は明確だ。(敬称略)

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