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【ビジネスアイコラム】五輪を自動運転技術のショーケースに
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11月下旬の東京モーターショーを控え、次世代のクルマに関する報道がにわかに活発になってきた。なかでも脚光を浴びているのが自動運転である。早ければ2020年頃には、高速道路の一部など限定された路線での自動運転が実現しそうだ。
自動運転というとSFめいた響きがあるが、日本では、高齢化対策という極めてリアルな課題を背負っている。
衝突回避支援システムのような、自動運転の一要素である安全運転支援技術の普及の仕方にも、そのことが表れている。
欧米では、こうした新技術は高級車から順番に装備されていくのが普通だ。だが、日本では、軽自動車にも大々的に導入されている。軽の愛用者にはお年寄りや女性など運転に不安を持つドライバーが多く、そうした技術を切実に求めているからだ。
この10年で、日本では交通事故による死者の数はほぼ半減した。一方で、運転中の交通事故死者数に占める65歳以上の高齢者の割合は大幅に増えた。高速道路における逆走事案の7割を高齢者が占めるといった問題も浮上している。自動運転の実現は、こうした事態の打開策として期待されている。
長い目でみれば、自動運転の必要性はさらに増す。これから未曽有の高齢化を迎える日本にとって、交通体系の再整備は大きな課題だ。JR北海道の一連の不祥事は、過疎地の鉄道路線維持の難しさを再認識させた。
鉄道やバスといった公共交通機関にとって、地方の不採算路線は大きな重荷だ。いちだんと人口減少が加速すれば、廃線を選ばざるを得ないケースは増えるだろう。
公共交通機関が頼りにならないとして、お年寄りなど交通弱者の移動手段をどう確保するか。そこで候補になりうるのが、電気自動車(EV)に自動運転技術をからめた新しい交通体系の構築だ。
ちょっとした買い物でも自動車に頼らざるを得ない地方では、ガソリンスタンド(GS)の減少が大きな問題になっている。1994年に全国に6万カ所あったGSは、今春には3.6万カ所まで減った。地域によっては、最寄りのGSに行くのに往復1時間クルマを走らせないといけないような場所も出ている。
一方、日本では人間が住んでいる場所には電気はほとんど来ている。航続距離の短さが普及のネックとなっているEVだが、近場の移動手段としては活用の方法がいろいろ考えられそうだ。基礎自治体でEVを共有し、お年寄りの通院などの足を自動運転で提供することができれば、大規模で高コストな公共交通機関を維持する必要性は低くなる。
高齢化社会における新しい交通体系の像を日本が提供できれば、後を追う国にとっては大きな参考になるはずだ。それは巨大なビジネスチャンスでもある。
2020年には東京に五輪がやってくる。その舞台となる東京湾岸地域を新たな交通体系のショーケースにすれば、絶好のアピール機会となる。国をあげて取り組むに値するのではないか。(「週刊東洋経済」副編集長 西村豪太)