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【ITビジネス最前線】フェイスブックでニッチな人材発掘

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【ITビジネス最前線】フェイスブックでニッチな人材発掘

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 ■アイデンティファイド 超強力データベース構築へ

 フェイスブックはデータに飢えている。あなたのデータが喉から手が出るほど欲しい。フェイスブックにログインする度に、「もう少し情報をちょうだい」と要求されているのが分かる。実に巧みで、差し出がましいことはしないが、フェイスブックは、だんだんとあなたのすべてを知り尽くしていき、「Identified(アイデンティファイド)」のような会社を通じて個人情報をお金に換えようと狙っている。

 アイデンティファイドは、強力な人材発掘ツールを提供する。他ではなかなか探すのが難しい候補者を、候補者がソーシャルネットワークのプロフィル上で共有する情報を基に探し出す。シリコンバレーの人材獲得は「リンクトイン」によって動いている。なぜアイデンティファイドのような会社が必要だというのか。

 ◆看護師、療法士に照準

 最も頭のきれるエンジニアたちはリンクトインのプロフィルなど気にかけていないが、いつも機会がそこここに待ち構えていて、決して需要が絶えることがない。しかし、これ以上に世間に知られていない市場が、テクノロジー業界の外にある。たとえば、警察官の経験がある人や看護師、療法士などの人材がそうだ。

 頻繁に転・就職活動をしない人やIT(情報・技術)に無縁の業界の人は、リンクトインのプロフィル作りがそれほど自分の役に立つとは思えない。そこで、アイデンティファイドは、ソーシャルネットワークから直接情報を掘り起こすのが解決策だと考えた。

 今のところ、アイデンティファイドは1つの市場に集中してビジネスに取り組む。医療・介護の従事者が対象だ。アイデンティファイドの開発した「SYMAN(サイマン)」という検索技術は、ソーシャルメディアからの情報を頼りに、ER(救急救命)看護師と訪問看護師をはっきり区別して認識できる。

 サイマンが完成してからも、数多くの人材から正確に最適な候補者を探し出せるよう、精緻レベルを調整するのに4カ月を費やした。

 医療の世界で、このモデルが通用することを証明したアイデンティファイドは、次にこの人材検索プラットホームを、小売りや消費財メーカーで働く人たちにも拡大していこうと考えている。

 アイデンティファイドは、新しい市場に参入する度に、正確な予測と検索ができるように多くの時間をアルゴリズムの「訓練」に費やす。最初はいつも手動のプロセスから始まる。正確性を担保するには、サイマンを鍛え上げるときに、コンピューターの推測が正しいかどうか二重にチェックする人間が必要だからだ。

 これまで探し出すのが難しかった看護師・介護士を検索できるようにシステムを調整するには4カ月かかったが、今後その他の市場に備えて調整するには、恐らく1カ月ぐらいで済むというのがアイデンティファイドの見方だ。

 私は、膨大な量のデータから有益なものを作り上げていくという事業が好きだ。人材検索も素晴らしいビジネスチャンスのように見える。しかし、それは表面上の話で、フェイスブックのデータを基にアプリケーションを組み立てる場合はかなり注意が必要だ。これまでもフェイスブックは、自らのデータに依拠して成功したアプリケーションの機能をそっくりそのまま複製した過去があるからだ。

 規模を拡大してアイデンティファイドが成功を収めた場合、フェイスブックのユーザーは職歴を頻繁に更新するようになる。フェイスブックで勤務先を最新にしておくことが一般的な潮流になれば、フェイスブックはリンクトインと直接対決する意欲がわいてくるに違いない。将来的にフェイスブックが同様のサービスを行えば、アイデンティファイドのようなソーシャル採用プラットホームの必要性はなくなる。

 この危険にさらされているのはアイデンティファイドだけではない。日本でもフェイスブックの個人情報やコネを利用してソーシャルリクルーティング事業を展開するスタートアップが注目を集めている。アメリカ以外の国でソーシャルデータを基に仕事探しや人材獲得のビジネスを組み立てる方が、短期的には成功のチャンスがずっと大きい。フェイスブックの他にもツイッター、ミクシィといったネットワークから得たデータを相互に関連付けて候補者の複合的なプロフィルを作成するなど、今以上に付加価値を追求していくしかない。

 たとえば、「TalentBin(タレント・ビン)」は、少なくとも8つの情報源から集めたデータを使って採用担当者が隠れた人材を見つけ出せるように支援するツールだ。

 リンクトインのプロフィルは作っていないが、技術的な議論が繰り広げられるオンライン掲示板に積極的に貢献しているようなエンジニアを探し出すのに最適だ。

 アイデンティファイドにとって鍵となるのは、テクノロジー以外の業界でソーシャルリクルーティングを始めたという、その立ち位置だろう。

 これにはプラスとマイナスの面がある。

 有利な点は、競合他社から一線を画してニッチな市場を囲い込むことができるところだ。一方で、テクノロジーに疎い人たちは、素晴らしい業績や今どんな仕事をしているかについて多くの情報をソーシャルネットワークで共有せず、身の回りの友人との間にとどめておく傾向がある。

 採用担当者がエンジニアやデザイナーなど技術的なポジションの候補者を探す場は数えきれないほどあるのに、看護師や介護士を探すとなると、オンラインにデータを掘り起こせる場所が少ない。こうしたニッチな市場は出身校や業界内部のコネにかなりの部分を頼らざるを得ない。

 ◆困難な情報源開拓

 ソーシャルネットワークでは共有されず、オンラインにも存在しない情報源へのアクセスを開拓していくと、そこにアイデンティファイドの道が見えてくるかもしれない。学業成績や、業界内の登録証明書データベースといった情報を組み合わせるのだ。

 アイデンティファイドがオンラインで得た情報とオフラインで得た情報を照合することができればどうだろう。たとえば、シアトルで訪問看護師の資格を取ったXさんがフェイスブック上のXさんと同一人物であることが特定できるようになれば、アイデンティファイドは採用担当者にとって価値の高い超強力なデータベースを構築できるに違いない。

 文:イジョビ・ヌウェア

 訳:堀まどか

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【プロフィル】Ejovi Nuwere

 イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者のひとり。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。

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