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【和歌山発 元気印】スペースデザインアオイ

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【和歌山発 元気印】スペースデザインアオイ

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 ■手作りからくり時計で夢の空間演出

 駅前や百貨店を明るく彩り、1時間おきに軽やかな音色に合わせて人形たちがひょっこりと姿を現す。スペースデザインアオイは、そんな「からくり時計」で、街を歩く人たちの目を楽しませている。

 ◆全過程を自社製作

 どんなデザインや仕掛けにするのか。佐々木一也社長はまず、周囲の景色を見回して何か足りないものがないかを探す。そのうえでひと手間を加える。イメージ作りから設計、製作まで全過程を自社でこなす“モノ作り”へのこだわりで、夢の空間を演出する。

 佐々木社長は1977年、大学卒業後に精密機械の製造会社に入社。船や飛行機など駆動部の部品を作る毎日だったが、いつしか「(モノ作りの)初めから終わりまでを全部やりたい」と思うようになった。

 精密機器から店舗デザインの会社に転身し、企画担当として科学館や博物館などの建設に携わった。85年ごろは折しも、百貨店などのショーウインドーに集客を目的とした「仕掛けもの」の展示が広がり始めた時期。からくり時計と出合ったのもそのころだった。

 転機は95年に訪れた。阪神・淡路大震災によって物流が寸断され、社会は混乱。生きるか死ぬかの境遇に陥った人たちを前に、からくり時計や店舗デザインなどを前面に出すことはできなかった。

 熊本県人吉市のJR人吉駅前のからくり時計の計画もあったが、その矢先に会社が倒産。佐々木社長は「スペースデザインアオイ」の前身となる組織を立ち上げ、人吉のからくり時計の受注にこぎつけた。週に一度は現地に足を運び、イメージイラストの作製から、設計、製作、人形の衣装まですべてを担った。高さ約7.5メートル、お城から殿様が姿を現すユニークな時計が見事に完成した。

 栃木県ではシャボン玉が飛び出すなど多彩な演出の「とちぎわんぱく公園からくり時計」が人気となり、石川県では「キリコ」と呼ばれるご神灯の中で海ぼうず、鬼、幽霊の3体が太鼓をたたく「御陣乗(ごじんじょ)太鼓からくり時計」が県知事賞を受賞した。

 からくり時計にとどまらず、地元・和歌山ではクジラがガソリンスタンドの天井を貫くという、ダイナミックなデザインのモニュメントを考案。捕鯨文化の和歌山ならではの「鯨油」とガソリンを結びつけるという“小技”が光る。

 ◆年1つのペース

 からくり時計を作る際は、駅舎の完成予想図などを参考に地元の特産品や伝統芸能を織り交ぜ、風景に足りない要素を盛り込む。年に1つのペースで作る作品は20を超えた。

 人形の腕に着衣が巻き込まれないか、音楽と人形の動きが合っているか。「からくりは勝手に動く部分があってはいけない」と佐々木社長。設計通りの動きを見せて初めて成功だ。

 九州新幹線が全線開業した2011年3月、停車駅のJR筑後船小屋駅(福岡県筑後市)前に国の天然記念物・大楠の木をモチーフにしたからくり時計が完成した。大きな葉の陰から、名物の船小屋温泉につかる夏目漱石などが現れるデザインに。「生い茂り伸びていく木と同じように、町が成長していってほしい」との願いが込められている。

 「文字盤があるとからくり時計だとわかってしまう。文字盤を消して、見る人を『あっ』と驚かせるようなからくりを作りたい」と夢を膨らませながら、「『からくり時計屋さん』にはなりたくない。ストライクゾーンを狭めず、さまざまなモノ作りに挑戦し続けたいんです」と語った。(地主明世)

                   ◇

【会社概要】スペースデザインアオイ

 ▽本社=和歌山市黒田279-4

 ▽設立=1998年10月

 ▽資本金=1000万円

 ▽従業員=4人

 ▽事業内容=からくり時計の企画・製作、屋内外の展示装飾、音響・映像企画制作、店舗デザイン・設計・施工など

                 □ ■ □

 ≪インタビュー≫

 □佐々木一也社長

 ■単純なもので人を喜ばせたい

 --からくり時計作りを始めたきっかけは

 「25年ほど前、大手時計メーカーから依頼を受け、渡された図面に従って職人としてからくり時計を作ったことが最初。わずか3分程度の間に、完結した舞台を作る『すごさ』に憧れた。まさか、自分にできるとは思わなかったが」

 --製作する上での苦労は

 「作業中は特に苦労を感じることはないが、『人が楽しいと思うもの、喜ぶものを作る』というのは大変難しい。からくりというのは後戻りができない。一カ所もミスが許されない。最後に動かすまで正確に作られているかわからないという怖さがある」

 --からくり時計以外にどんなものを

 「博物館の『人間の脳』の模型、動物園の擬岩工事も手がけた。動物園では、そこで暮らすツキノワグマの気持ちになって、本物の岩壁を型取りしたシリコーンゴムに色づけし、隙間にモルタルを流し込んで本物のように仕上げた」

 --これから挑戦してみたいことは

 「障害を持った方々と協力し、彼らのアイデアを生かしたモノ作りをやってみたい。これまで培ってきた技術と彼らの感性を合わせて何か作ってみたいと思い始めている」

 --今後への抱負を

 「今は、からくりでも複雑な機械システムを使う。昔の人はもっと単純なもので人を喜ばすことができた。目の前にある材料だけで人を喜ばすことができればと思っている。当初は、見る人より自分がモノ作りを楽しんで、結果をあまり考えていなかった。そこから技術を追求する段階を経て、今は見た人を楽しませることを常に考えるようになった。『単純なもので人を喜ばせる』という原点に戻ることも大切だと思う」

                   ◇

【プロフィル】佐々木一也

 ささき・かずや 金沢工業大学卒業後、1977年に精密機器製造会社に入社。モノ作りにひかれて大阪府の店舗デザイン会社へ転身。98年、郷里の和歌山市に「スペースデザインアオイ」を設立し、現職。59歳。和歌山県出身。

                 □ ■ □

 ≪イチ押し!≫

 ■観光客に人気 熊本・人吉駅前の殿様

 JR人吉駅前に設置したからくり時計は、人吉城をイメージ。太鼓の音とともに「民謡六調子」のメロディーに合わせて「臼太鼓踊り」が披露される。からくりの殿様が町家で球磨焼酎を飲み、人吉温泉で気持ち良さそうに汗を流す様子などが楽しめ、観光客や地元の子供たちにも人気だ。

 からくりの作動時間は、11月から2月までは午前9時から午後5時まで(3月から10月は同6時まで)の1時間ごと。「SL人吉」の到着時間に合わせ、金曜から月曜までの週4日間は、午後0時15分にも作動する。

 からくり時計はもともと駅の正面にあったが、駅を降りた観光客らが安全に四方から楽しめるよう、3年ほど前に道路側から駅舎東側の広場に移動。部品も新調するなどして完成当時の様子がよみがえった。

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