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2014年のヒット商品候補を探る 消費者ニーズにどう応えた?
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2013年も、多くのヒット商品が生まれた。家電部門で最もブレークしたのは「自動掃除機ルンバ」。共働きや育児で忙しい30~40代が主な購買層だが、「コンセントの抜き差しで何度もしゃがみこむ必要がない」と高齢者にも評判が良い。油を使わず揚げ物が調理できる調理家電の「ノンフライヤー」は、消費者の健康ニーズに呼応し、使いやすさと調理の仕上がりの良さが受け、販売台数は目標の4倍、20万台に達した。食品では「セブンゴールド 金の食パン」が4月の発売から4カ月間で販売個数1500万個を突破するなど、大手の普及品に比べ価格が高めでも勢いは止まらない。多様化する消費者ニーズに応える新商品。やや早いが、2014年のヒット候補を探った。
子供から高齢者まで多様な需要に応じるため、メーカーは新商品開発に余念がない。
たとえばベビーカー。従来のA型、B型以外にも多機能型、2人乗り用、3輪バギー、海外ブランドものもあり、豊富なカラーバリエーションがそろっている。オプションもレインカバーや荷物掛けフック、ボトルホルダー、膝掛け止めのクリップなどが用意されている。
矢野経済研究所によると、高額輸入品、高機能、高価格品に人気が集まる傾向があり、多機能化が進み、デザイン性も重視されているという。確かに街を歩いていると、おしゃれなベビーカーが目につく。
この冬、最も熱いのは飲料業界かもしれない。新たな発想の飲料として注目を浴びているのが、今月5日に発売されたマイボトルドリンク「drop」。こだわりのおいしさを時間がたっても専用のマイボトルで楽しめるとして、サントリー食品インターナショナルとサーモスが共同開発した。
サントリーオリジナルの12種類の「専用ポーション入りの濃縮飲料」を、サーモスの真空断熱技術を採用した保温・保冷の専用マイボトルで楽しめる。
東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の「セブン・イレブン」約5000店舗と「セブンネットショッピング」によるインターネット販売で購入が可能だ。価格は「dropポーション」が1個90円(消費税込み)、「drop専用ボトル」は1980円(同)。
開発の背景について、サントリー食品事業本部ブランド戦略部の井上真利子さんは、次のように説明する。
「飲料の形態は、瓶から缶、ペットボトルへと変化してきました。ペットボトルになったとき、長時間持ち歩けるようになりましたが、冷たいドリンクは温かくなってしまい、温かい物は冷えてしまうという点がありました。やがて保温・保冷のできるマイボトルを持ち歩き、お茶やコーヒーを楽しめるようになってきました。一方、温度や濃さにこだわり、お茶やコーヒー以外のものも飲みたいという消費者の声も聞かれるようになったのです」
この流れを受け、サントリーは2010年から開発プロジェクトを組んで、容器をサーモスに依頼。3年かけてdropを完成させた。
「2時間温度が保たれるので冷たい物は冷たく、温かい物は温かく飲むことができます。専用容器で温度、濃さともに自分らしい味を作ることも可能になります」(井上さん)。
「drop」には、専用ボトルと専用ポーションが用意されている。専用ポーションには、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、緑茶以外に従来のマイボトルではなかなか準備しづらかったオレンジ、アセロラ、梅などもある。全12種類、どれもホットでもコールドでも入れることができ、しっかりと溶けるようになっている。
「ペットボトル飲料は外側から見たとき何を飲んでいるかわかります。でも、dropはわからないのでボトルからの香り立ちや味にこだわりました。お茶やコーヒーだけでなくもっと違ったものを毎日選べるようにと考えたら、12種類になりました」(井上さん)。
専用密閉ポーション入りの濃縮飲料は、専用ボトルで飲む直前に開封するため、素材の味わいを損なわないのが売りだ。
飲み方は専用ボトルの中にポーションをセットし、ボトルの取っ手となっているハンドルでポーションをつぶす仕組み。つぶすときも、空になったポーションを取り出すときも、周囲に液体が飛び散らない。手やテーブルを汚すこともない。
ポーションの形が決まった理由には「ちょっとしたきっかけがありました」と井上さんは語る。
「包材開発チームのメンバーに、こんにゃくゼリーの好きな男性がいました。彼がこんにゃくゼリーを大量に食べているうちに、そのケースの形がいいということに気が付き、これをヒントに開発しました」。2万回以上つぶす実験を繰り返し、現在の形に落ちついた。
発売から間もないものの、女性の間で評判がいいという。そこで、小さい子供がいて一人でゆったりとした時間は持てない主婦たちに実際に使ってもらい、感想を聞いた。
「一息入れようとコーヒーをいれると、子供が泣き出したり、いたずらを始めるので、世話をしているうちにさめてしまいます。今まで電子レンジで温め直して飲んでいましたが、このdropはその必要がありません」
「カシスコーヒーの香りがいい。おしゃれな喫茶店に行った気分になれます。また、キャラメルコーヒーもカフェで飲んでいるみたいな味です」
「入れたのを忘れて、1時間くらいして帰って飲んだのですが、ふたをしていなかったのに温かく、びっくりしました」
「熱いお茶をいれたときなど今まで子供が触らないように気を使っていましたが、ふたをしておけば子供が触ってもやけどしないし、安心です」
「子供がオレンジを絞って飲んだのですが、テーブルや服に飛び散ることがないので助かります」
寄せられた意見から、利便性を先取りした製品の特徴がうかがえる。
現在、店舗販売は1都3県の先行販売だが、将来的には他県にも広げる方針だ。ポーションの種類も増やし、2015年には売り上げ1000万ケース(1ケース24個入り)を目指す。