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「LED照明」急速普及で競争激化 勝負のカギは“高付加価値”

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「LED照明」急速普及で競争激化 勝負のカギは“高付加価値”

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 省電力と長寿命に優れた発光ダイオード(LED)照明が急速に普及し、市場が様変わりしている。市場成長のきっかけは東日本大震災後の電力不足懸念だが、現在は省エネ能力のみならず、インテリアとしてのデザインや照明の調整機能などを求める顧客が増えているためだ。省エネ・デザイン・性能をテーマに、メーカー側は開発競争を繰り広げている。

 照明=LEDの時代

 「こんなデザインの商品は、量販店で見たことがない」。複合ビル群のグランフロント大阪(大阪市北区)に開設されたLED照明のショールームで、家族連れの顧客は目を丸くした。外側のカバーに和紙を採用したランプ、ガス燈のようなデザインなど、展示された機器は“個性”にあふれている。

 ショールームは照明器具メーカーのコイズミ照明(同市中央区)が11月にオープン。展示する商品は商業施設や飲食店向けから住宅用まで約500機種に及び、家電量販店で通常販売されない個性的なデザインの商品群もある。また、このショールームにはちょっとした仕掛けがある。多様な色の床材に合わせたLED照明が設置され、自分の部屋にマッチする商品を探すことができるのだ。

 コイズミ照明担当者は「一般のユーザーにとって、照明器具とはLEDを指すほど普及してきた。デザインなどの付加価値が差別化のカギでしょう」と指摘する。

 見栄えや高級感も

 かつては高額なため、省エネ性と価格とのバランスが主に注目されたLED照明だが、住宅分野での普及で光の質や見栄えが求められるようになった。

 新築住宅向けを求めるユーザーは近年、埋め込み式で天井がフラットになる「ダウンライト」や、隠れた光源の光を天井や壁にバウンドさせる間接照明を求めるケースが多いという。照明器具の出っ張りがない天井やソフトな光が醸し出す、高級感や落ち着いた雰囲気が人気の秘密だ。こうした機種はリビングや寝室などでの需要が高い。

 埋め込み型はホテルなどで使用されてきたが「家庭向けでも需要があり、もはや商業用との区別はない」と、あるメーカーの担当者。コイズミ照明は8月、埋め込む穴の直径をコンパクト化しつつ明るいLED照明を商業施設向けなどに発売する一方、家庭向けでは来春までに埋め込み型を含む約500機種を投入する考えだ。

 色や明るさの調整能力で競う

 LED照明は調光や調色が可能だ。暑い夏場は白っぽい涼しげな光に、寒い冬場は暖かさを感じるオレンジ色の光にすることができる。LEDが持つ“光の演出力”をめぐり、メーカーはしのぎを削る。

 東芝ライテックは今年3月、家電と連携機能を持たせた4機種を投入。家の電力使用状況に合わせて明かりを自動調節したり、パソコンなどで使用状況を確認したりできる。シャープは桜色の光を楽しめる「さくら色LEDシーリングライト」の製品ラインアップを拡充した。

 明るさに合わせて光の色が変化する「シンクロ調色」を開発したパナソニックも強気だ。平成27年度までに住宅用照明製品の全てをLED照明に切り替える計画で、シンクロ調光タイプを3割超にする方針。

 調査会社の富士経済によると、LED照明の国内市場は24年の計590億円から、27年に659億円に膨らむ見通し。LEDの性能を引き出し、照明の付加価値を高める競争は激しさを増しそうだ。(板東和正)

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