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【視点】産経新聞経済本部編集委員・早坂礼子 トップの条件
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■精神的な“若さ”が不可欠
年の瀬になって著名企業トップの交代発表が相次いだ。
武田薬品工業の長谷川閑史社長は11月末、自身の後任にライバルの英製薬大手からヘッドハンティングした40代の外国人を充てると発表した。
新興国での競争が激化している世界の製薬市場で勝ち抜くためには「経験豊富で陣頭指揮ができる人でないと務まらない」と説明したうえで「グローバル企業の経営に必要なのはスタミナ(体力)だ。世界中を飛び回ってそれぞれの部門の地域パフォーマンス(実態)をチェックし、アドバイスを与えて指示を出すためにはスタミナが要る」としている。
国際協力銀行(JBIC)の奥田碩氏は12月26日に初代総裁を退いた。同行は昨年4月に日本政策金融公庫の国際部門が独立して発足した政府系金融機関で海外との折衝が不可欠だが、会見で奥田氏は「生活習慣病の持病があるし、年齢的にも長期間職務にとどまることは体力的にきつい」と述べ、退任理由に高齢による体力不安を挙げた。
29日に81歳の誕生日を迎えた奥田氏は「80になったときに自分でも驚いて、早く辞めないと大変なことになると思った」と明かす。会見で「トップの年齢は若い方がいい」とも述べ「日本の経済界は年齢が高い。若返りが遅れている」と指摘。「一世代上の人が犠牲になって(一線を)退き、組織の若返りを図らないと国際的にやっていけない」と強調した。
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図らずも武田とJBICの交代劇のキーワードは“体力”だった。世界を相手に飛び回るには体力で勝る若いトップがふさわしい。一般論で言えばその通りだろう。だが、若さとは肉体的な年齢だけを指す言葉ではない。1840年生まれの米国の実業家、サミュエル・ウルマンは80歳のときに自費出版した詩集で「YOUTH」という有名な作品を残している。
「若さとは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ。70歳になろうと16歳であろうと、人間の心には不屈の闘志や、来るべきものに対する子供のような好奇心や、人生の喜び及び勝負を求める気持ちが存在するはずだ。人は希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる」
日本の高齢化には歯止めがかからない。政府の統計によれば65歳以上の人が総人口に占める割合は今年で4人に1人だ。今後は働く高齢者がもっと増え、私たちは体力の衰えを経験に裏打ちされた知力で補っていくことになる。過去の実績だけにあぐらをかく人物は願い下げだが、リーダーだって進取の気概に富み、全体に目配りできる人なら高齢でもいいのではないか。
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今年11月に日本商工会議所の第19代会頭に就任した三村明夫氏は73歳だ。今春、岡村正前会頭に後を託されたとき「唯一の引っかかりは年齢だった」と言う。日商会頭の任期は2期6年が原則で「6年後に79歳になった自分がどうなっているか」と悩み、当初は1期3年で退くつもりだった。だが「人生の最後に日本の再生に寄与できる機会が与えられたことは男冥利(みょうり)に尽きるじゃないか」と考え直した。
経済同友会の代表幹事も務める前述の長谷川氏は望ましいリーダーの人物像について「楽観的で陽気な人がいい。トップがしんねりむっつり考えていると組織が沈んでしまう。リーダーはエナジー・ギバー(エネルギーを供給する人)であるべきだ」と話す。
経団連の米倉弘昌会長は「今年は安倍晋三政権のアベノミクスで、国際的に日本が注目を浴び、五輪の開催決定で加速した」と総括し、2013年の漢字を「明」と表現した。2014年は6月上旬に経団連会長も代わる。長いデフレのトンネルから抜け出しつつある日本経済をさらに明るい光の中に導くエナジー・ギバーが選ばれてほしい。