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【ビジネスアイコラム】EVの将来性 日産は明示を
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日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」が、1月にも累計販売台数10万台に到達する見通しだ。
実現できれば、2010年12月の発売から3年2カ月で10万台となる(2月にずれ込んでも3年3カ月である)。ハイブリッド車(HV)のトヨタ自動車「プリウス」が10万台に達するまで、1997年の発売から2002年8月まで4年9カ月を要した。
これと比べ普及速度は速い。だが、日産から声高なアピールはない。日産は11年6月に発表した中期経営計画で、16年度までに仏ルノーと合わせEVを累計150万台販売すると、ぶち上げた。ただ、目標値と現実の隔たりはあまりに大きく、昨年末には20年度に達成時期を延期。それでも必達は難しいかもしれない。
さて、プリウスよりも速く到達する10万台のうち、半分の5万台はこの1年間で販売された。特に米国の販売実績は大きい。サンフランシスコ、ロサンゼルスといった西海岸やアトランタで販売が好調。
航続距離を伸ばし値段を下げた新モデル投入もあったが、米国でのEVへの優遇策は大きい。特に補助金は国だけではなく、州によっても受けられる。また、カリフォルニア州などでは、道路に優先車線があり、ガソリン車やHVでは2人以上乗車しないと走行できないが、EVは1人運転が許されるのだ。
もっとも、こうした優遇策の背景には、カリフォルニア州の「ZEV(ゼロエミッションビークル=EVや燃料電池車などの無公害車)規制」に代表される環境規制強化の動きがある。ZEV規制とは、大手自動車メーカーを対象に販売台数の一定割合をZEVにするよう義務化する州法。
1990年に制定されたが、自動車業界からの圧力などで一時はなし崩し的に緩和されていた。だが、これが強化される方向にある。販売割合が引き上げられるだけでなく、対象メーカーも増える。現在は販売台数から日米の大手6社が対象だが、17年以降はマツダやフォルクスワーゲン、現代なども対象になる。同様の規制は他の州にも広がり始めている。
優遇策からリーフに限らず、米EVベンチャーのテスラ・モーターズが12年夏に売り出した高級EV「タイプS」も、販売好調。だが、タイプSは累計販売が2万台に満たなかった13年秋に、3件の火災事故を北米で相次ぎ起こした。これに対し、10万台に手が届くリーフ、さらに三菱自動車のEV「i-MiEV」を含めた日本製EVの火災事故はこれまでゼロだ。
カリフォルニアは地球温暖化の進行から砂漠化する危機にひんしている。また、盆地の北京は慢性的な大気汚染に悩まされている。ZEVを必要とする都市や地域は地球上に数多い。
10万台を販売数量としてとらえるなら、150万台への一里塚にすぎない。だが、安全を前提とする日本型ものづくりととらえるなら、EVという新しい技術におけるメルクマールである。世界的に環境規制が厳しさを増すなか、日産は経営トップが数量の大風呂敷を広げるだけではなく、EVが目指す方向性や将来の役割をもっと明確に示す段階に来ているといえよう。(経済ジャーナリスト 永井隆)