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【ビジネスアイコラム】ヤマトVS郵政「信書」決着なるか
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ヤマト運輸と総務省(旧郵政省)の長きにわたる対立が転機を迎えている。「信書」の送達を郵便に独占させることを定めた郵便法第5条の撤廃を、宅急便の創始者であるヤマト運輸元会長の小倉昌男氏(故人)が求めて以来のことだ。
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」というのが信書の定義である。だから、宅配で送る荷物に便箋(びんせん)一枚でメッセージを入れても、それが信書と判断されれば刑罰の対象となりうる。郵便法では、日本郵便以外の事業者が「信書」を送達した場合には、3年以下の懲役か300万円以下の罰金と定められている。恐るべき「官尊民卑」の背景にあるのは、民間業者には「信書の秘密」の保護が期待できない、という決め付けだ。
この構図は今も変わらない。郵政民営化に伴い、2003年には新たに「信書便」制度が設けられ、建前上は民間開放が実現した。ただし、全国に10万本以上のポストを設置することを義務づけるなどの高いハードルが設けられ、参入の実現例はない。
昨年4月にヤマト運輸は政府の規制改革会議の場で、あらためて信書定義の撤廃や、次善の策としての定義明確化などを訴えた。同会議での議論の結果、総務省はあらためて信書に関する規制のありかたについて検討しなおすことになった。今年3月中にその結論が出る。
この流れを受け、昨年12月にヤマト運輸は歴史的な方向転換に踏み切った。小倉氏以来の方針を取り下げ、外形基準による信書定義導入へと主張を切り替えたのだ。同社は米国や英国、ドイツなどの例を挙げ、何が信書に当たるのかを、サイズや料金などで定めることを提案した。
大転換の背景には、主要事業の一つであるメール便の成長鈍化がある。1997年に全国展開を開始したメール便は、書類などを郵便より安く送れる手段として定着している。
しかし、メール便で信書を運んだとして、告発される事例が頻発。このリスクを避けるため、ヤマト運輸では2011年9月以降は顧客に荷物の内容が信書に当たらないことを確認したうえサインを求めている。
こうした手続き厳格化が響き、ヤマト運輸のメール便は11年度以降マイナス傾向を続けている。今年度も12月までの累計で対前年比1.1%減少だ。日本郵便が展開するメール便サービスの「ゆうメール」はそういった手続きをしておらず、この間に着々とシェアを上げている。この不公平な競争条件を変えないことには、メール便の将来は開けない。小倉氏以来の主張を撤回することにOBからの反発もあるなかでの、苦渋の決断だ。
ヤマトの投げ込んだボールをどう打ち返すか、総務省は熟考中だ。「ゆうメール」の成長のウラには、より単価の高い郵便からの流出という側面もある。「信書」定義明確化で確実に保護される領域ができるのは決して悪い話ではない。「大人の決着」が成立する可能性は小さくないはずだ。(「週刊東洋経済」副編集長 西村豪太)