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【ステップアップ】福祉機器ベンチャー JINRIKI
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子供でも足場の悪い砂浜で車いすを動かすことができる ■車いすの緊急避難をスムーズに
福祉機器ベンチャーのJINRIKI(じんりき)は、車いすに取り付けて人力車のように引っ張ることができる補助装置を開発し、販売している。従来、押して移動することが困難だった坂道や砂利道、雪道などでも、小さな力でスムーズに介助することができる。
既存の車いすに人力車のようなコの字形の金属製のバーを取り付け、移動するときには前輪を浮かせて引っ張る。てこの原理を応用するので、従来の12%程度の力で楽に移動することができる。
中村正善社長は、長野県の上高地に観光に来た車いす利用者がバスターミナルから300メートルしか移動できない姿を目の当たりにした。これが開発のきっかけとなった。
「13歳で亡くなった弟は身体障害者で車いすに乗っていた。よく押していたが、移動が大変だったことを思い出した。なんとかしたいと思った」
このころからバーで引っ張ればいいのではないかというアイデアが頭の中にあった。しかしモノづくりの経験は全くなく、実行に移すことはなかった。
そんな中で、2011年に東日本大震災が起きた。車いすの人が津波から逃げ遅れそうになる映像に衝撃を受けた。日本中が復興支援に奔走する中、「車いすの人を災害発生時に守れるように、アイデアを形にしよう」と思い立った。
震災から1カ月後、勤めていた会社を辞め、開発に取り組み始めた。最初に着手したのは、バーを使って引っ張るという商品が既にあるかどうか、特許などを詳細に調べることだった。
類似した商品がないことを確認し、8カ月後にやっと試作品の制作を手がける。ホームセンターでビニールハウスのアルミの枠を買ってきて、手で曲げて車いすにボルトで締めただけの、簡単な装置だった。
雪の降る真冬の山中で実際に引っ張ったところ、動かすことができた。階段を上がることもできた。
「うれしくて開発仲間と思わず『おー』と叫び声を上げた。いけると確信した」
商品開発を進め13年3月に販売を開始する。以降、自治体や介護関連会社などと契約が成立したほか、旅行関連会社、自動車関連会社などとも導入に向けて話が進んでいる。
「利用者から『登山に挑戦した』『海に行った』と声が寄せられ、『ありがとう』と感謝される。こんなにうれしいことはない」と中村社長は声を弾ませる。
これまで累計3000台を販売、14年には月産1万台を目指す。固定式は3万9800円(税別)、着脱式が2万9800円(税別)。(佐竹一秀)
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【会社概要】JINRIKI
▽本社=長野県箕輪町中箕輪1536
▽設立=2012年8月
▽資本金=3500万円
▽従業員数=13人
▽事業内容=福祉用具の開発・設計・製造・販売、防災災害用品の開発・設計・製造・販売