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【クラウドWatch】農業ICTで作業「見える化」

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【クラウドWatch】農業ICTで作業「見える化」

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宮崎県の新福青果事例。キャベツ収量・売り上げを30%アップ  ■富士通、「Akisai」導入160社

 富士通は22日、食・農クラウド「Akisai」に関する説明会を開催した。事業戦略、実績のほか、実例としてイオンアグリ創造株式会社の事例などを紹介した。農業ICTはどこまで進んでいるのか。

 Akisaiは、2012年10月に提供が開始された農業ICTのクラウドサービス。「豊かな食の未来へICTで貢献」をコンセプトに、生産現場でICTを活用。流通・地域・消費者をバリューチェーンで結び、露地栽培・施設栽培・畜産における“企業的農業経営”を支援する。

 具体的には、モバイル端末やセンサーからのデータを収集・分析・利活用することで、これまで農業熟練者の経験と勘に支えられてきた作業を「見える化」し、組織マネジメントを実現する。サービス体系としては、ビッグデータを基に「経営」「生産」「販売」を効率化する各種メニューが用意される。

 対象は、大規模化を目指す企業的経営を目指す農業生産者、や、農業への進出などを志向する食品加工・卸・小売り・外食など食関連企業だ。

 ◆キャベツ収量3割増

 これまで1000社超の問い合わせ・引き合いがあり、160社が利用中(有償利用92社、トライアル・実証利用68社)という。

 宮崎県の新福青果では、収量向上、安定供給、リソース最適化を目指した栽培計画を立案するためにAkisaiを活用。適期作業を徹底することで、キャベツの収量・売り上げともに前年比3割増を達成した。

 滋賀県のフクハラファームでは、稲作の田植え作業の工程別分析に活用。作業プロセスを改善することで総作業時間を削減した。具体的に、補植(田植機で植えそこなったところを人手で植える作業)の時間を2278時間(11年)から1772時間(13年)に短縮した。「特に従業員の考え方が変わったのが進歩」(フクハラファーム)という言葉が印象的だ。

 糖度12度以上の「味一みかん」をブランド展開する和歌山県の早和果樹園では、収穫を増やすために樹木一本ごとにIDを付与し、センサーやスマートフォン(高機能携帯電話)で情報を収集、そのデータから各種アドバイスを行うシステムを構築した。これを基に適切な作業を効率的に行うことで、収穫される全ミカンにおける「味一みかん」の比率を24%から53%に向上。3年間で3倍にすることを目標に取り組んでいる。

 イオンアグリ創造は「経営分析」「会計管理」「農作業管理」にAkisaiを活用している。同社はイオングループ店舗に新鮮な野菜を提供するため、09年7月に設立。全国12カ所の直営農場「イオン農場」(合計約140ヘクタール)を運営しており、その情報を結ぶために導入した。

 「経営・生産・品質の3つの見える化」を目指し、トライアルを開始したのが10年7月。12年10月に直営8農場で正式運用を開始し、13年度からは経営分析機能の本格的運用や委託先への展開も開始した。将来的に3000農家へ展開する計画だ。今後はイオングループのバリューチェーンへの展開やグローバル展開も見据える。

 「災害などのリスクヘッジや流通コストの削減のため、直営農場を全国に展開した。その情報を共有するためには、どうしてもICTが必要となる。直営農場を拡大にするにつれ、ITによる個々の農場単位の管理に加え、本社機能としての一元管理を実現し、収益管理するのにAkisaiを役立てている。また、直営農場の生産データ(農法・従業員数・作業データ・天候・病虫害など)と店舗情報(POSデータ・消費需要・店舗周辺機構情報など)、および会計データを使って最適化分析を実施している」(イオンアグリ創造 代表取締役社長の福永康明氏)という。

 この事例でも「作物別個別原価計算」の仕組みを独自に開発し、作物別の10アール(100平方メートル)当たりの製造原価を明確化し、作物生産コストの削減や価格競争力の強化を図っている。現状ではまだグループへの供給力は微々たるものというが、こうした取り組みを通じ、「新鮮な野菜をイオングループ店舗などへ安定供給し、イオン農場のブランド化を達成させる」(福永氏)考えだ。

 ◆売り上げ目標150億円

 広がりを見せる農業ICT。富士通もAkisaiの機能を順次強化するなどして、さらなるニーズに対応する。

 昨年12月には、Akisaiの新ラインアップとして「農業生産管理SaaS/栽培歴の最適化」などを発表した。農業生産管理SaaSは、日々の生産活動から生まれるデータを収集し、経営・生産・品質などの軸でさまざまなデータ分析を行い農業経営に活用するもので、「もうかる農業の実現」をコンセプトとする。

 富士通はこうした機能を、全国の農業法人や農家と実証実験を行った上で、製品化。また、Akisai活用の場、および顧客へのプレゼンの場として、13年7月から沼津に自社農場「沼津Akisai農場」を開設し、サービス開発を加速させている。こうした取り組みを通じて、Akisaiについて15年度までに2万事業者への導入、累計150億円の売り上げを目指している。(インプレスウオッチ)

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