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【2014春闘】
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宮原耕治氏 景気の回復傾向を受け、2014年春闘で経営側が賃上げに前向きの姿勢を示している。給与を底上げするベースアップ(ベア)がどこまで広がるかが焦点だが、労使間の考えには、温度差もある。経団連の宮原耕治副会長(日本郵船会長)と連合の古賀伸明会長に争点を聞いた。(早坂礼子、米沢文)
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■ベアの一律要求に疑問
□経団連副会長 宮原 耕治氏
--2014年春闘の方針は
「アベノミクスによる企業業績の改善分を研究開発や賃金上げにつないで好循環をつくり、次の年に回していくことで経済再生や消費の活性化ができる。中小企業や地方への景気回復はこれからだが、大企業が先行すれば時差はあっても必ず波及していく。賃上げには定期昇給、時間外手当、一時金・賞与、ベースアップ(ベア)も入る。どれを選ぶかは個別企業の労使協議で決めるべきだ」
--労働側は消費向上にはベアが不可欠としている
「特別ボーナスを出す証券会社があり、7カ月近い要求をする自動車会社の組合もある。将来に対する雇用や老後の不安を断ち切っていくために一時金のインパクトは侮れない。ベアでなければだめではない」
--労働側は一律1%以上のベアにもこだわっている
「地方も中小も業績の回復度合いがまちまちの中、一律要求はいかがなものか。ベアを実施すると時間外手当やボーナス、社会保険料に跳ね返り、将来の見通しが伴わないと上げられない。その判断ができるかどうかがベア実施の分かれ目だ」
--デフレの加速は賃上げの遅れからとの指摘がある
「連合は、個々の労使交渉で決まったことが集まってデフレを招いたと“合成の誤謬(ごびゅう)説”を唱えている。しかし、個々の決定には労組も加わっており、自己否定になると言いたい」
--企業の内部留保を賃上げの原資にとの期待もある
「内部留保は何でもため込んでいるイメージだが、多くは投資や設備に回ったものがバランスシート上に積み上がっているだけだ。現金を積み上げているのは、大企業より中小企業でリーマン・ショックのような不測の事態への備えが多い。実情を分かってもらえるよう発信していく」
--昨年末の政経労協議ではまず賃上げが合意された
「アベノミクス効果が経済成長につながるため、政労使が共通認識を持ち、最大限がんばろうと確認した。異例だが、意義のある会議だった」
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■月例賃金の引き上げを
□連合会長 古賀 伸明氏
--2014年春闘のポイントをどうみているか
「すべての組合が、月例賃金の引き上げにこだわっている。物価上昇・景気回復局面にある中で、4月から消費税率も上がる。物価や負担だけが上がり、国民所得が上がらなければ、社会の混乱は必至だ。デフレからの脱却と持続可能な安心社会を実現するため、経済成長と整合した賃金を決定していく必要があるとみている」
--あくまで月例賃金にこだわる理由は何か
「一時金は業種や業態によって格差があるうえ、最低賃金の基礎ベースにも入らない。非正規労働者は一時金の仕組み制度を持たないところもあり、月例賃金こそが強い社会性を持つといえる。国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費を回復することで『賃金デフレ』を起点とする悪循環から抜け出せるはずだ」
--組合側の要求が通った場合の波及効果は少なくなった
「確かに、業績好調な産業・企業での交渉結果が、他の交渉に波及することは少なくなった。とはいえ、賃金決定にあたって、世間相場や波及効果がまったくないということはない。われわれも(回答引き出しの)最大の今春闘のヤマ場を1日に集中して、そこに向けた相場形成をしていく」
--中小、非正規、地方の交渉の方針は
「業績や地域によって差があることは十分に承知している。しかし、国民所得が上がらなければ、働く者の生活だけではなく、社会全体が混乱する。その視点に立って、中小共闘、非正規共闘、地場共闘で徹底的に交渉していく」
--政府の賃上げに対する対応や政府と経済界、労働界の代表が話し合う政労使会議の受け止めは
「政府が労使交渉や労使自治に介入することは、許されないこと。賃金を含めた労働条件はあくまでも労使の自治、労使交渉で決めるべきだ」
「ただ、政労使会議で中小や非正規の問題が取り入れられたことは、率直に評価したい。これからどう実現していくか、政労使間でフォローしていくべきだろう」