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「ガラケー男子」なぜモテる? 割高スマホに見切り…回帰するユーザーも
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料金や操作の簡単さから根強い支持者が残る「ガラケー」。スマホ隆盛の中でも一定の存在感を発揮し、“ガラケー男子”はモテ期に入っているという 携帯電話といえば、「iPhone」を筆頭にスマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)が当たり前になった感もある。ところが最近、ガラケー(ガラパゴス携帯)と呼ばれる従来型の携帯電話が見直されているという。
シンプルな操作性や、料金の安さを求めてスマホから回帰するユーザーもおり、携帯大手3社も新機種を投入するなど“ガラケー派”は軽視できない存在だ。さらには、「ガラケー男子」なる言葉も登場。「流行に流されない硬派な感じ」「メールが丁寧」などとモテているそうだ。店頭の隅に追いやられ、“絶滅”も危惧されていたガラケーが、にわかに脚光を浴びている。(大宮健司)
大阪市浪速区の電気街「でんでんタウン」にある携帯電話ショップの店内には、携帯各社の最新のスマホが存在を競うように陳列されていた。店長の男性によると、携帯電話の売り上げの9割以上はスマホだ。「若者はLINEをやるためにほとんどがスマホを選ぶ」という。
一方で、「ガラケーも以前に比べると増えた」とも。一時はスマホの勢いに押されてほとんど売れない時期もあったが、ここ最近、需要回復の兆しがあるという。
ガラケー契約者のほとんどはスマホの複雑な操作を敬遠する高齢者だが、「料金が高い」「電池が持たない」といった理由でスマホを見限り、ガラケーに戻るユーザーも増えだしているという。
朝日新聞や講談社、小学館などの辞書から言葉が検索できる「コトバンク」。現代用語も検索できるこのサービスに、「ガラケー」とともに「ガラケー男子」という言葉が収録されている。
意味は「従来型の携帯電話を使っている男性を指す。スマホ利用者との違いが取り沙汰され、雑誌で『ガラケー男子はもてる』といった特集が組まれるなど、彼らの特徴に関心が寄せられている」とある。
どう「もてる」のか。雑誌などでは「ガラケー男子はスマホユーザーより相手を見て話す」「ガラケー男子のメールは丁寧」など、コミュニケーションに関わる評価が目立つ。大阪市西区の女性会社員(28)は「ガラケー男子は流行に流されない硬派な感じがするから大事にしてくれそう」と好感が持てるという。
そして、ガラケーにとっては追い風となる“反スマホ”的な方針を掲げる企業も現れた。
岐阜県関市の機械部品メーカー「岩田製作所」は、25年7月からスマホを使わない社員に月5千円を支給する「デジタルフリー奨励金制度」を始めた。社員90人のうち20人が制度を利用しているほか、休憩時間のスマホ自粛も呼びかけているという。
同社の岩田伸総務部長は「スマホは社員同士のコミュニケーションや、仕事の集中力を阻害する要因になっていた。制度を始めてから社員同士が意見交換する機会が増え、会社の活性化につながっている」と話す。
スマホ人気に火が付いたのは平成20年。ソフトバンクモバイルがiPhoneを発売したのがきっかけだ。22年にはKDDI(au)とNTTドコモもスマホを主力として一斉に投入し始め、この時期から“スマホ・バブル”が始まった。
IT専門の調査会社「MM総研」(東京都港区)によると、25年12月末のスマホ契約数は約5328万件。9月末に初めて5千万件を超えた。ガラケーは約6658万でまだスマホを上回っているが、26年度後半にはスマホがガラケーを逆転する見込みだという。
また、電子情報技術産業協会(JEITA)と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)によると、昨年11月の移動電話(携帯電話・PHS)の国内出荷台数は254万6千台。うちスマホは144万4千台で、全体の56・7%、冬商品モデルの出荷が始まった10月には60・2%を占めた。
だが、スマホの勢いの陰りを示す数字もある。25年度上期(4~9月)のスマホ出荷台数は前年同期比14・5%減(約1216万台)と大きく停滞した。携帯電話事情に詳しい青森公立大経営経済学部の木暮祐一准教授(モバイル社会論)は「移行のピーク時期にスマホへ変更した人たちが、2年契約の更新時期を迎えた。スマホに不満を持ちながら使っていたユーザーがガラケーに戻ったり、ガラケーを使い続けているのでは」と分析する。
スマホに対するユーザーの最大の不満は「料金の高さ」だ。MM総研の調査によると、スマホではなくガラケーを「購入したい」と回答した人のうち、48・3%が「月額利用料金が高い」ことを理由に挙げた。スマホの1人当たりの平均月料金が6826円に対し、ガラケーは3746円で、スマホは月額3千円近く高額になるという。
料金を押し上げているのは「パケット定額」というデータ通信の定額料金だ。ソフトバンクモバイル、KDDI、NTTドコモの大手3社では、いずれも5千円台が一般的。それに基本使用料や通話料などが付加される。
各社はさまざまな割引キャンペーンを実施しているが、MM総研取締役研究部長の横田英明氏は「パケット料金の負担がハードルになって、ガラケーからの買い替え需要が思うように進んでいない」と指摘する。
こうした事態の打開に向け、ソフトバンクモバイルは1月24日、スマホ向けに通話とパケット通信料金をセットで定額にする新料金プランを発表。ネット使用量などによって、最安で月額5980円から3段階で定額料金が選べるため、利用状況に見合わない割高な料金を敬遠する利用者の取り込みを狙う。
携帯電話でインターネットを使うユーザーにも、節約のためにガラケーを持つ人たちが増えているという。どういうことなのか?
木暮准教授によると、スマホを早期から使いこなすユーザーの中には、電話用にガラケー、それにプラスする形でデータ通信専用にスマホなどを持つ人も増えているそうだ。
こうした人たちは、「仮想移動体通信事業者(MVNO)」と呼ばれる既存の通信網を借りて月千円未満の格安で通信サービスを提供する業者と契約し、「SIMカード」と呼ばれる通信用チップを中古ショップなどで購入したスマホ端末に差して使用している。
横田氏はこれらの通信業者を航空業界のLCC(ロー・コスト・キャリア)にちなんで「携帯LCC」と表現する。「コストパフォーマンス重視のユーザーの有力な選択肢の一つとなる可能性がある」という。
木暮准教授も「携帯でインターネットを閲覧しない『ライト層』と、複数端末を使いこなして通信料金を節約する『ヘビー層』を中心に、ガラケー需要が増えるかもしれない」と予測している。
しかし、販売の現場は複雑だ。ある販売業者の営業担当者は「スマホを売らないと利益が減ってしまう。付加価値を理解してもらってスマホを買ってもらいたいのが本音」と打ち明けている。